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MotoGPでKTMが大躍進、その強さの秘密とは!【前編】

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
▲画像出典元:motogp.com

2020年のMotoGP第4戦チェコGPでついにKTM(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)のブラッド・ビンダーが表彰台の頂点に立った。これはKTMにとってMotoGPクラスにおける初優勝であり、最高峰クラス参戦4年目にして悲願の快挙達成となった。今季大躍進を遂げたKTMの強さの秘訣を探ってみたい。

「レースで勝つ」を目的とする会社

まずはKTMというメーカーの企業ポリシーが大きいだろう。KTM関係筋に話を聞いたところ、「経営トップがMotoGPで勝つという強い意志を持って取り組んでいること。そこが他メーカーとの一番大きな違い」と言う。

KTMの有名なスローガン、「Ready to Race」が表しているように、最高峰レースへの挑戦とそこでの勝利に強いこだわりと情熱を注いできたメーカーである。会社としては小規模でありながら、世界のオフロード界を席巻し、ダカールラリー18連覇を成し遂げた原動力である。

こだわりの鉄フレームが進化熟成

画像出典:KTM JAPAN
画像出典:KTM JAPAN

ハード面ではKTMのファクトリーマシン、RC16の進化熟成が進んだことも大きい。今シーズンのRC16は他の強豪ライバルに対してトップスピードも負けてないし、マシンがよく曲がっているように見える。ライダーたちのコメントを見ても、皆口を揃えて「乗りやすくなった」と言っている。

どこが変わったのか。まず見た目だが、2019年と2020年のマシンを画像で見比べてみても、KTM独自の鋼管トレリスフレームの形状がだいぶ異なっているのが分かる。旧型はまさにパイプ状だが、新型はパイプに一部プレートを組み合わせたような形状になり、スイングアームもフルカーボン製に。

▲RC16 2019年型 画像出典:KTM JAPAN
▲RC16 2019年型 画像出典:KTM JAPAN
▲RC16 2020年型 画像出典: KTM JAPAN
▲RC16 2020年型 画像出典: KTM JAPAN

カウルデザインも変更され、空力デバイスの形状が大幅にモディファイされている。特にフレームに関してはMotoGPクラスで唯一の鉄フレームにこだわり続けている。それにも理由があって、ダカールラリーをはじめとする幾多の最高峰のダートレースで得た勝利の方程式をMotoGPでも再現しようとしているのだ。

マシン戦闘力アップの陰にあの人あり

もちろん、こうした劇的な進化は「たまたま上手くいった」というわけではない。最終的なマシンの方向性を決めるのは実際に乗りこなすライダーであって、その最も重要なポストにダニ・ペドロサがいることがKTM躍進のキモになっていることに疑いの余地はないと思う。

画像出典元:motogp.com
画像出典元:motogp.com

2018年シーズンをもってMotoGP現役を引退したペドロサは、2019年からKTMのテストライダーとしてRC16の開発に全力投球してきた。彼が在籍したレプソル・ホンダ時代の13年間に吸収した最先端の知見とノウハウがRC16にも注がれていると思って間違いないはずだ。

その証拠に先のチェコGPでも、ビンダーは第3集団からベースアップしつつ追い上げながら、今季絶好調のクアルタラロやモルビデリ(共にヤマハ)を実力でかわして、最後は突き放して見せた。

また、同じKTMファクトリーの同僚、ポル・エスパルガロも一時は3番手につけるなど、ザルコ(アビンティア)との接触さえなければ表彰台を狙える走りだったことからも、RC16の速さは本物だ。

後編に続く。

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◆ MotoGPでKTMが大躍進、その強さの秘密とは!【後編】

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

画像出典元:motogp.com

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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