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韓国総選挙:落選危機の与野党大物議員のリスト!元首相から前外相まで

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
韓国の国会(JPニュースから)

 韓国の第22代国会議員選挙(総選挙)は明日(10日)が投開票日である。

 与野党が全300議席(選挙区254議席、比例46議席)を巡り凄まじい選挙戦を演じているが、最大の争点は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の与党「国民の力」と野党第1党「共に民主党」のどちらが過半数を制するのか、あるいは第1党になるのか、この1点にあるようだ。

(参考資料:韓国の総選挙 与党の「アカ攻撃」VS野党の「親日攻撃」 伊藤博文から李舜臣まで選挙利用)

 それと同時に注目したいのが大物政治家らの当落である。各メディアの一連の世論調査では、信じ難いことに与野党合わせて10人近い大物が選挙区で苦戦を強いられているようだ。主なリストは以下のとおりである。

▲「国民の力」朴振(パク・チン)前外相(ソウル西大門区乙)

 朴振候補(67歳)は尹政権下で初代外相を務め、日韓関係修復に努めたことで知られているベテラン政治家である。第16代から第19代まで連続4回当選し、前回(第21代)も当選している。貫禄もあり、知名度もあるが、選挙区を保守地盤の強い江南区乙から進歩層の多い西大門乙に移したことが不利な要因となっている。また、対立候補が金大中(キム・デジュン)元大統領の盟友、金相賢(キム・サンヒョン)元議員の子息で、地元出身の民主党の2回生議員、金映豪(キム・ヨンホ)候補(56歳)であることも苦戦の一因となっている。

▲「国民の力」の権寧世(クォン・ヨンセ)前統一部長官(ソウル龍山区)

 権寧世候補(65歳)は第16代から18代まで3期連続当選し、その後2度落選したものの前回、カムバックを果たした与党の重鎮議員である。大統領選挙では選挙対策本部長として尹大統領の当選に貢献した。だが、選挙は決して強くなく、前回も民主党の姜太雄(カン・テウン)候補(60歳)とは0.6ポイント(890票)の辛勝だった。今回も同じ組み合わせとなったが、龍山に大統領室があることから民主党が政権審判をアピールする場として龍山で選挙初日に総決起集会を開いていることもあって姜候補のリベンジを予想する向きが多い。

▲「国民の力」の羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)元院内代表(ソウル銅雀区乙)

 前回同じ女性判事出身の民主党の新人候補との戦いで敗れ、5選を果たせなかったものの羅卿瑗候補(60歳)は「与党のマドンナ」と称されているほど実力も人気も飛び抜けている。民主党は尹政権に逆らい、辞任に追い込まれた柳三榮(リュ・サムヨン)元釜山警察庁幹部(59歳)を「政権審判」のシンボルとして擁立。李在明(イ・ジェミョン)代表は「尹政権を誕生させた責任がある」として羅候補を追い落とすため6度も現地に入り、柳候補を応援している。支持率では羅候補が若干優位に立っているが、柳候補に激しく追い上げられている。

▲「国民の力」の元喜龍(ウォン・ヒヨン)前国土交通部長官(仁川市桂陽区乙)

 検事出身の元喜龍候補(60歳)は国会議員を3期務めた後、済州道知事を2014年から2021年までの間、2期務めた。尹政権誕生の立役者の一人で、国土交通部長官に任命されるなど尹大統領の信任が厚い、与党幹部の一人である。今回は、民主党の李代表に挑戦するという理由で縁もゆかりもない仁川市から出馬した。仮に勝てば、次期大統領最有力候補に躍り出るのは間違いないが、これまでの各種世論調査では李代表に5ポイントから10ポイント以上引き離されている。

▲「国民の力」の安哲秀(アン・チョルス)前大統領候補(城南市盆唐区甲)

 安哲秀候補(62歳)は過去に新党「国民の党」を結成し、大統領選挙にも出馬した「一国一城の主」である。前回の大統領選挙では土壇場で降り、尹大統領に一本化し、尹大統領当選に大きく寄与した。次期大統領選挙への足場として今回、再選を期しているが、対立候補の民主党の李光宰(リ・グァンジェ)候補(59歳)は盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領秘書室国情状況室長や江原道知事、国会事務総長など歴任した民主党の「切り札」である。京畿道最大の激戦区となっている。

▲「民主党」の洪翼杓(ホン・イッピョ)院内総務(ソウル草束乙)

 当選回数3回の洪翼杓候補(56歳)は民主党No.2の院内代表である。これまでの選挙は地元の城東区だったが、今回は自ら保守層の地盤と言われている草束乙から出馬した。ここでは民主党は1992年以後、一度も勝ったことがない。政権交代に勢いを付けるために「落下傘候補」となったが、相手の「国民の力」の申東煜(シン・ドンウ)候補(56歳)は「TV朝鮮」夜の9時のニュースアンカーで知名度は抜群。世論調査では僅差ながら申候補にリードを許している。

▲「新たな未来」の李洛淵(イ・ナギョン)代表(光州市・光山区)

 李洛淵候補(74歳)は文在寅(ムン・ジェイン)政権の初代首相で、民主党代表にも選ばれた、言わば「民主党の顔」である。李代表と大統領選候補を競って敗れた李候補は結局、民主党と袂を分かれ新党「新たな未来」を創設し、出馬したが、世論調査では再選を目指す元光山区長の「民主党」の閔馨培(ミン・ミョンベ)議員(63歳)に20ポイント以上も引き離されている。仮に落選となれば、政治生命を絶たれることになる。

▲「改革新党」の李俊錫(イ・ジュンソク)代表(京畿道華城市乙)

 李俊錫候補(39歳)は「国民の力」の元代表である。尹大統領当選の最大の立役者で次期大統領の椅子に最も近いニューリーダであった。ところが、歯に衣を着せぬ発言で尹大統領から睨まれ、党を追い出されため新党を結成し、今回の選挙では台風の目になるものとみられていた。しかし、後から新党「祖国革新党」を結成し、選挙戦に参入した曺国(チョ・グック)氏に話題を攫われてしまい、サムソン企業出身の「国民の力」の候補とヒュンデグループ出身の民主党候補と三つ巴を演じている。支持率では2番手に付けているが、首位を走る民主党の孔泳云(コン・ヨンウン)候補(59歳)に5~6ポイントの差を付けられている。

▲「新たな未来」の洪永杓(ホン・ヨンピョ)選対委員長

 民主党の院内代表に選ばれたこともある「文在寅派」のボスであった洪永杓候補(67歳)は公認を得られなかったことから民主党を離党し、「新たな未来」から出馬したが、支持率では民主党の新人、元国家情報院第1次長の朴善源(パク・ソンウォン)候補(53歳)の後塵を拝している。与党からは弁護士の李賢雄(イ・ヒョンウン)が出馬している。

(参考資料:韓国総選挙の行方 与党が過半数を取れば、尹政権は安泰、負ければレームダック! 首都圏の勝敗が左右する)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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