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日本に敗れた北朝鮮の男女サッカー監督は好対照! 女子監督は日本をリスペクト

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
サッカー男子のシン・ヨンナム監督(左)と女子のリ・ユイル監督(朝鮮中央通信から)

 アジア大会での日本と北朝鮮のサッカー対決は男女ともいずれも日本に軍配が上がった。

 男子が日本に1ー2と惜敗したことから「男子の敵は女子が討つ」とばかり、北朝鮮の女子は金メダルを目指し、日本との決勝戦に臨んだが、1ー4と惨敗した。北朝鮮の選手、監督、役員、そして応援団の落胆は想像するに余りある。

 準々決勝で日本に負けた後、記者会見で北朝鮮の男子の監督は試合そのものについては「今日は、組織的にうまくいかなかった」と認めながらも直接的な敗因については日本に決勝点のPKを与えた主審のせいにするなど往生際の悪さを見せていた。

 こうしたことから女子監督の試合後のコメントが注目されたが、男子のシン・ヨンナム監督とは異なり極めて冷静で真っ当なコメントをしたのが印象的だった。

 周知のように男子のシン・ヨンナム監督は背後からのタックルを含むラフプレーのみならず、試合が終わっても選手らが主審を取り囲み執拗に抗議したことについて「2、3人の選手たちが少し興奮してそういう場面になったのは確かだが、誤ったPKの判定に興奮したためだ。サッカーの試合には対立はつきものだ。私たちの行動は許容されるものだと思う」と強弁し、逆にウズベキスタンの主審のジャッジについて「主審が公正でないならば、それはサッカーに対する侮辱だ!」と言い放ち、不評を買っていた。

(参考資料:北朝鮮男子サッカーへの「処罰」は? 過去は2年間の出場資格停止から平壌開催権の剥奪まで)

 英国紙「The Sun」(電子版)はシン監督のコメントについて「北朝鮮の指揮官は準々決勝で敗れた選手たちが主審に八つ当たりするような怒りに満ちた反応を見せたにもかかわらず、それを擁護した」と非難し、韓国メディア「Sportsnews」も「何より選手たちの誤った行動を叱るべき監督までこのような行動を擁護したという点に憤りを感じる」と強く非難していた。

 こうした経緯もあって女子のリ・ユイル監督の敗戦後のコメントが俄然注目されたが、リ監督は敗因について率直に分析したうえで驚いたことに日本の女子を褒め称えていた。男子の監督とは異なり、日本をリスペクトし、スポーツマンシップを発揮していた。同じ北朝鮮の監督ながら、実に好対照だ。

 北朝鮮がベスト8に進出した1966年のロンドンW杯のゴールキーパーだったリ・チャンミョン選手の息子でもあるリ監督は敗因として「ディフェンスに問題があった。またゴールキーパーの動きに一定の欠点があった」点などを挙げながらも今大会で2点を得点しているゼッケン11番のFWのアン・ミョンソン選手が前半14分で負傷退場したことについても「負傷したが、それほど酷くはない」と、主力選手の負傷退場を決して敗因の理由に上げることはしなかった。

 何よりも印象的なのは「今回アジア大会に出場し、アジアの女子サッカーが世界的レベルに発展していることを体感した」と語り、特に日本について「日本選手は伝統的な試合運営方式を生かしながらとても上手に戦っていた」と称えたことだ。

 リ監督はまた、「今後重要な競技で再び対戦する機会、相まみれる機会が来ると思うが、両チームとももっと素晴らしいプレーを見せることができることを望んでいる」と語り、日本にエールを送っていたことも好感が持てた。

 リ監督は北朝鮮の1部サッカー連盟戦(2021ー22年)で優勝した「我が故郷女子サッカーチーム」の監督で、2022年最優秀監督に選出されている。

 北朝鮮は今大会に陸上、サッカー、バスケットボール、バレーボル、水泳、柔道、レスリング、射撃、体操、卓球、アーチェリー、重量挙げ、ボクシング、空手、ソフトテニス、ドラゴンボールの16競技に185人の選手が出場しているが、10月6日現在、金11個、銀18個、銅10個で総合7位である。(前回のジャカルタ大会は金12個、銀12個、銅13個で10位)

 なお、日本との直接対決の結果は以下のとおりである。

サッカー

男子準決勝 1対2で敗北

女子決勝  1対4で敗北

▲卓球

男子団体予選 0対3で敗北

男子シングルス(ラウンド64)(リ・ジョンシク対吉村真晴)1対4で敗北

女子シングルス(ラウンド16)(ビョン・ソンギョン対平野美宇)4対2で勝利

▲ボクシング

男子63.5kg級(1回戦)(チェ・チョルマン対秋山佑汰)4対1で勝利

▲柔道

女子70kg決勝(ムン・ソンフィ対田中志歩)敗北(合わせ一本負け)

▲レスリング

男子グレコローマン60kg級準々決勝(リ・セウン対鈴木絢大) 1対4で敗北

男子フリースタイル57kg決勝(ハン・チョンソン対長谷川敏裕)3対7で敗北

女子フリースタイル50Kg決勝(キム・ソンヒャン対吉元玲美那)4対5で敗北

女子フリースタイル57Kg決勝(チョン・インスン対櫻井つぐみ)6対7で敗北

女子フリースタイル62kg決勝(ムン・ヒョンギョン対尾崎野乃香)フォール勝ち

▲ソフトテニス

男子シングルス予選Cグループ(リ・ヒョンヘ対上松俊貴)4対2で勝利

女子シングルス予選Hグループ(リ・ジンミ対尾上胡桃) 4対3で勝利

(参考資料:北朝鮮選手は「スポーツ強国建設」前哨戦の「戦士」「突撃隊」! ラフプレーの原因は「体育綱領」にあり!)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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