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米韓合同軍事演習終了で北朝鮮のミサイル発射は止まるのか!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
米韓合同演習の上陸訓練に投入された艦船(韓国海軍配信)

 「自由の盾」と名付けられた最大規模の米韓合同軍事演習が今日23日に終了する。

(参考資料:米韓vs北朝鮮の「春の陣」 金正恩政権下の「春の米韓合同軍事演習の顛末」

 米韓連合軍は11日間にわたる演習期間中に空中強襲訓練や渡河訓練、北朝鮮指導部を除去する特殊作戦訓練、「双竜訓練」と称される上陸訓練など朝鮮半島有事に備え20余の訓練を実施した。

(参考資料:見極めがつかない韓国と北朝鮮の特殊部隊! 有事の際は南北共に「斬首作戦」実行)

 この間、韓国の上空にはF-35Åなど戦闘機が昼夜問わず飛び、戦闘地域や敵の後方基地に浸透し、攻撃する空中強襲訓練では空軍輸送機C-130やヘリなど30数機が投入された。米国が保有する戦略爆撃機では最も速く、930km離れた場所から北朝鮮の核心施設を精密打撃ができ、地下施設を貫通する空対地巡航ミサイル24基などが搭載されている戦略爆撃機B-1B2機もグアムから飛来し、米韓の空軍演習に加わった。

 合同軍事演習の1週前(3月6日)から始まり17日まで続いていた京畿道漣川での渡河訓練では南北を流れる180メートル幅の臨津江(イムジンガン)に米第2師団と韓国工兵旅団による浮橋を架ける訓練も行われた。

 沖縄駐屯の海兵隊も参加して20日から慶尚北道の浦項沖で本格的に始まった上陸訓練には「小型航空母艦」と称される米軍の上陸強襲艦「マキン・アイランド号」(4万2千トン級)が初めて参加した。また、師団級規模で行われたこの上陸訓練には韓国の大型輸艦(LPH)「独島艦」(1万4500トン級)など艦船30数隻とF-35系列の戦闘機及び陸軍AH-60アパッチなど上陸機動ヘリが70数機、それに上陸突撃装甲車が50数台が投入された。

 合同演習終了前日(22日)には米韓の海兵隊に英国の海兵隊も加わり、米韓英3カ国合同訓練が実施された。この訓練は空中と海上から浸透し、目標を偵察し、連合軍の攻撃を誘導し、相手を叩く訓練である。米韓からは海兵隊に所属する特殊捜索隊が参加した。地上でも軍事境界線に近い江原道の固城と束草など嶺東地域で韓国陸軍第8軍団主導の大規模の地空海合同機動訓練が実施された。訓練は自走砲など130台が投入され、1艦隊司令部と18戦闘飛行団が参加して行われた。

 北朝鮮はこれまで米韓合同軍事演習中に米韓に対抗するため短距離ミサイルを発射することはあったが、今年は回数が多く、それも多様なミサイルを発射し、米韓を威嚇していた。

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記は米韓合同軍事演習開始2日前の3月11日に党軍事委員会拡大会議を招集し、「米国と南朝鮮(韓国)の戦争挑発策動が刻一刻重大な危険ラインへ突っ走っている現在の情勢に対処して国の戦争抑止力をより効果的に行使し、威力的に攻勢的に活用するための重大な実践的措置を取る」と公言したが、実際にそのとおり、ミサイルの連射で米韓の軍事演習に対抗していた。

 この期間中に発射されたミサイルは計4回である。

 14日 短距離ミサイル(飛距離620km)2発

 16日 大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発

 19日 弾道ミサイル(飛距離800km)1発発射

 22日 巡航ミサイル数発

 特に平安北道・東倉里から19日に発射された弾道ミサイルは北朝鮮の発表では「敵の主要対象に対する核打撃を模擬した発射訓練だった。

 「800キロ射程に設定された朝鮮東海(日本海)上の目標上空800mで正確に空中爆発した」と発表された。また、噴射の排炎がV字形態に放出されていることから移動式発射台からではなく、地下施設(サイロ)から発射された可能性が指摘されている

 飛行距離800kmならば、韓国全土が標的になり、発射地点によっては日本の一部も含まれる。仮に10kt威力の核爆弾がソウルの800m上空で爆発した場合、即時死亡者は4万4千人、負傷者は30万人に達すると推定されている。

 米韓合同軍事演習の前夜(12日)に発射された潜水艦発射(戦略)巡航ミサイル2発を含めると、10日間で延べ5回、計10発近く発射したことになる。

 従来ならば、米韓合同軍事演習が終了となれば、北朝鮮のミサイル発射も鳴りを潜めるのだが、米韓の上陸訓練が4月3日まで延長して行われることから北朝鮮のミサイル発射は今後も続くことが予想される。

(参考資料:米韓合同軍事演習に対抗する北朝鮮の「重大措置」は何か?)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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