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韓国の世論は元・前大統領の恩赦はNO! 財閥サムスンの総帥には恩赦を!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
裁判所に出廷する李在鎔サムスン電子副会長(撮影:傍聴人)

 韓国財閥No.1のサムスンの実質的オーナー・李在鎔サムスン電子副会長が朴槿恵前大統領への贈賄罪で懲役2年6か月の実刑判決を受け、ソウル拘置所に再収監されて4日経ったが、韓国経済を牽引してきた世界的ブランド企業であるサムスンの実質的トップの拘束、収監は韓国経済、社会に大きな動揺と波紋を広げている

(参考資料:サムソンのトップは逮捕されない! その3つの理由)

 サムスンは社員19万人を擁し、世界各地に65の生産法人と130の販売法人を展開し、売上高が300兆ウォンで、韓国のGDPでは22%、輸出額では全体の24%を占め、資産が韓国国富の3分の1に迫る大企業である。韓国経済に影響を及ぼさないわけがない。

 早くも判決が出た翌日(19日)には青瓦台のHP国民請願掲示板に29歳の青年による「大統領様、李在鎔副会長の特別赦免を要請します」との請願が、さらに21日にも「李在鎔サムスン総帥の赦免、釈放を請願します」との請願が相次いで掲示された。

 前者の請願には「韓国の1等企業であるサムスンがリーダーの不在で経営が少しでも停滞すれば、2年、5年後には韓国は途轍もない経済危機に見舞われかねない。経済を救ってもらいたい」との心情が綴られていた。この請願への賛同者は22日午後1時現在5万人を突破し、51296人に達している。

 後者の請願には「今、韓国は類例のない経済難に喘いでいる。多くの人が職を失い、商工人もまた廃業に瀕しており、国民経済は大変な状況にある。IMF危機のような経済危機が再来するのではとの心配の中で我々は暮している。このような時に韓国経済の軸となっているサムスングループの総帥を拘束することが果たして正しい選択と言えるのだろうか」と裁判所の判決に疑問を提示していた。そのうえで「BTS(アイドルグループ)が韓流に寄与したとして国会でBTS兵役法(入隊が30歳まで延期可能となる法)を作ってまで便宜を図ったのにサムスンはグローバル企業としてBTS以上に国威向上に寄与している。今は、経済を心配する時である」と恩赦権を有する文在寅大統領に李副会長の即時赦免を求めていた。この請願は始まったばかりで、22日午後1時現在の賛同者は2418人となっている。

 李在鎔副会長の恩赦を求める声は経済界でも高まっており、日本の経団連にあたる全国経済人連合会(全経連)は「サムスンが韓国経済で占める比重、グローバル企業としての位相を考えると、今回の判決によるサムスンの経営活動の委縮は一企業を越え、韓国経済全般に悪影響を及ぼす恐れがある」との談話を発表している。

 全経連に続き韓国経営者総協会も韓国貿易協会も▲「コロナ」の渦中に韓国を代表するグローバル企業の経営空白は経済、産業全般に悪影響を及ぼす▲国際市場におけるサムスンのブランドにも悪い影響を及ぼすと、それぞれ収監を危惧する談話を出している。

 世論も李在鎔氏には総じて同情的で、世論調査会社「リアルメータ―」が行った調査(19日)では執行猶予の付かない懲役2年6か月の実刑について半数に近い46%が「厳しすぎる」と回答していた。(「軽い」は24.9%)

 この調査では恩赦に関する設問はなかったが、ちなみに現在収賄罪で収監されている李明博元大統領(懲役17年)と朴槿恵前大統領(懲役22年)の恩赦には世論調査会社「韓国ギャロップ」が行った世論調査(5-7日)では「賛成」37%に対して「反対」が54%と、国民の半数以上が時期尚早として反対していた

(参考資料:同情論が起きない朴槿恵前大統領の「判決」恩赦されなければ2039年まで独房生活!)

 韓国は1948年の建国以来、これまで延べ96回にわたって特赦を実施している。朴前大統領は2013年2月に政権に就いてから3度の「恩赦」を実施し、延べ655万人を赦免している。恩赦は大統領就任式(2月25日)や独立運動記念日(3月1日)、解放記念日(8月15日)などの慶祝日に合わせて行われるが、釈迦の誕生日(4月8日)やクリスマス(12月25日)にも実施される場合もある。

 「3.1」には間に合わないが、李在鎔氏は2017年2月から保釈された2018年2月までの1年間収監されていたので、後8か月すれば、刑量の3分の2にあたる20か月服役したことになるので仮釈放が可能となる。早ければ「8.15(解放記念日)」には恩赦される見通しである

(参考資料:「コロナ感染者」減少で文大統領の支持率が上昇 菅総理を逆転!)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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