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カウントダウンに入った北朝鮮第8回党大会の4つの注目点 また軍事パレード?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
2016年5月に開催された労働党第7回大会(労働新聞から)

 朝鮮労働党第8回大会開催がカウントダウンに入ったようだ。すでに全国から約230人の党中央委員及び中央委員候補を含む代表者らが平壌に集結しており、12月30日には参加資格の党代表証が配布された。こうした動きから党大会が一両日中に開かれるのではとの観測が流れている。

 党大会の1月開催は初めてである。韓国の国家情報院や統一部では昨年10月10日の軍事パレードも前代未聞の真夜中に決行されていただけにアッと驚く今日の元日、もしくは正月三が日の開催もあり得るとみて身構えている。

 前回の第7回大会(2016年5月6日)以来4年8か月ぶりの開催となる第8回大会の注目ポイントは次の4つに絞られる。

1.「金正恩名代」の金与正の新ポストは?

 金正恩委員長の実妹である金与正氏は党幹部ではあるが、政治局常務委員(5人)でも政治局員(10人)でもなく、政治局候補委員(18人)である。党序列では金正恩党委員長から数えて18位前後にランクされている。

 実務では党第一副部長の肩書だが、所管は不明である。宣伝先導部担当との見方もあれば、組織指導部を管轄しているとの見方もある。また、一昨年から対米、対韓関係で発言力を増していることから内外政策の司令塔である「金正恩秘書室」を統括している可能性も指摘されている。

 どちらにせよ、トランプ大統領に対して、あるいは文在寅大統領に対して与正氏の名前で談話を発表していることから金委員長の「名代」あるいは「代行」のような役割を担っていることは間違いない。従って、「名代」に、実質「No.2」に相応しい肩書(政治局常務委員もしくは政治局員)、あるいは部長に昇格するかが金委員長の後継問題絡みで注目の的となっている。

2.「経済発展5か年戦略」は成功?失敗?

 北朝鮮は第7回大会で打ち出した「国家経済発展5か年戦略」を総括し、第8回大会で新たな5か年経済計画を提示するとみられているが、「国家経済発展5か年戦略」が成功裏に終わったのか、それとも失敗に終わったのかの検証が興味深い。

 「国家経済発展5か年戦略」の中身は電力、石炭、金属、化学、農業、水産部門の増産や人民生活向上のため軽工業の発展、鉄道や道路など交通網の改善などであるが、どれもが抽象的で、具体的な指標は何一つ明らかにされていなかった。

 注目すべきは10月10日の労働党創立75周年までの完成を目指していたものの間に合わずさらに80日間延長して取り組んでいた▲年間120万人の観光客を収容できる元山と葛麻海岸観光リゾート開発プロジェクト▲三池淵郡文化都市開発プロジェクト▲13万4000キロワットの発電能力の漁郎川水力発電所建設▲平壌総合病院建設の「4大国家プロジェクト」の成否である。

 特に平壌総合病院建設は「コロナ過」の昨年3月17日に着工式が行われ、金委員長が10月10日まで完成させるよう指示を出していた「労働党創立75周年記念事業」の目玉プロジェクトである。

3.対米・対韓メッセージは発信されるか?

 北朝鮮は米大統領選挙結果について沈黙したままだ。バイデン次期大統領から「ヒトラーのような独裁者」と罵倒され、「悪党」呼ばわりされても音なしの構えだ。一昨年5月にバイデン氏が「我々は金正恩のような独裁者や暴君を抱擁する国民ではない」と発言した際には「狂った犬は一刻も早く棒で叩き殺さなければならない」とか「IQの低い馬鹿」と罵った時と比べると好対照だ。

 バイデン政権が1月20日に正式に発足するまで何の反応もしないのか、あるいは「我々の最高尊厳を冒涜するのは誰であっても許さない。きっちり責任を取らせる」とこれまでのように反発し、強硬な対応に出るのか、それとも米朝関係改善に向けて融和姿勢を示すのか、すべては大会での金委員長の演説にかかっている。

 対韓関係も昨年6月の南北共同連絡事務所爆破や9月の韓国人公務員射殺事件以後、北朝鮮は鳴りを潜めているが、射殺事件の際には珍しく遺憾の意を表明した金委員長が2018年の新年辞の時と同様に韓国に対話を呼びかけるかに韓国の関心が集まっている。

 特に、任期が来年5月までの文大統領にとっては時間が残されていないだけに気が気ではないはずだ。ちなみに前回の2016年は、3か月前に開城工業団地の操業が全面中断するなど南北関係が険悪化していたが、党大会直後に最高権力機関の国防委員会の名で南北軍事会談の開催を呼び掛けていた。

4.軍事パレードはあるのか?

 北朝鮮は昨年10月10日に労働党創建75周年を記念して大規模の軍事パレードを行い、金委員長が予告していた新たな戦略兵器(新型SLBMと大陸間弾道ミサイル)を登場させていた。この時からまだ3か月近くしか経っていないが、再度軍事パレードを行う動きがある。過去にも軍事パレードを1年に2度行ったことがあるので決して異例なことではない。

 例えば、2013年には7月に朝鮮戦争勝利60周年関連で、その2か月後の9月には建国65周年に際して軍事パレードが行われていた。前者は陸海空の正規軍によるパレードだったが、後者は正規軍ではなく、労農赤衛隊を中心とした予備役ら非正規軍による閲兵式だった。

 また、2018年にも2月に朝鮮人民軍健軍70周年、9月に建国70周年の軍事パレードがあった。この時も前者のパレードでは中距離弾道ミサイル「北極星2」、準ICBMの「火星12」、ICBM級の「火星14」、そして最後に米本土攻撃可能なICBM「火星15」が登場していたが、後者のパレードでは首脳会談に応じたトランプ大統領への配慮もあってミサイルは登場させなかった。

 過去のケースからすると、今回も軍事パレードを強行したとしても非正規軍による閲兵式及び群衆パレードの可能性が高い。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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