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また「潜伏」? 金正恩委員長はどこに?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
平壌郊外の「32号館」と称される金委員長の「別荘」(藤本健二撮影)

 5月1日のメーデーの日に20日ぶりに公の場に出てきたと思ったら、また、「潜伏」してしまった。北朝鮮の金正恩委員長のことだ。

 動静が途絶えてから今日(16日)で15日目。金委員長の消息が2週間以上も伝えらえないことはよくあることだが、5月の公式活動が1日の順川肥料工場視察の1回だけとは過去8年で最も少なかった昨年と比べても明らかに少なすぎる。昨年は5月上旬に軍事訓練の視察が2回(4日と9日)それに経済視察が1回(4日)あった。

(参考資料:いつまで続く「金正恩消息不明」 8年間で5度目の長期不在で最長は40日間)

 一体、どこで何をしているのだろうか?巷間言われているように新型コロナウイルスの感染を恐れて、地方の別荘に引き篭もっているのだろうか? 別荘ならば、その場所は米韓情報当局が睨んでいる日本海に面した元山なのだろうか?

 金委員長には父親(金正日総書記)から「相続」した「招待所」と呼ばれる豪華別荘が各地にある。北東部には元山招待所の他に「72号館」と称される咸興招待所と永興招待所がある。中朝国境に近い最北部の白頭山にも、また朝鮮5大山のうちの一つ,妙香山にも保養のための別荘がある。この他にも北北西の昌城にも南南西の信川にもある。

 首都・平壌市内の大同江沿いにもあるし、また平壌に近い江東にもある。江東の招待所は通称「32号館」と呼ばれている。

 金正恩政権(2012年~)になって金委員長の招待所に招かれたことのある外国人はおそらく元NBAのスター選手のデニス・ロッドマンぐらいだろう。

 そのロッドマンは5月初旬に元ヘビー級チャンピョン、マイク・タイソンが運営しているインターネット放送番組「Hot Boxing」に出演し、2013年に初めて北朝鮮に招かれた当時の状況について語っていた。

 「ニューヨークポスト」(5月13日付)によれば、金委員長の好きな選手はロッドマンではなく、マイケル・ジョーダンで、ロッドマンは「自分はマイケル・ジョーダンの代わりに呼ばれた」ことを明かしていた。初めて訪朝した際に金委員長自身から「マイケルジョーダンを呼びたかったのだが、来てくれなかったので代わり貴方を招待した」と言われたそうだ。

 また、北朝鮮については何も知らないロッドマンに対して金委員長が「我が国が好きか?」と聞いてきたので「好きだ」と答えたら、金委員長は「今夜、私の家で夕食を共にしよう。カラオケもあるし、ポーカーもあるし、美女もいるぞ」と言って、パーティを開いてくれたとのことだ。美女と言っても、どうやらポチョンボ電子楽団か、モランボン楽団の女性バンドのようでロッドマンのためTVショー「ダレス」の主題曲など米国や西側で流行っている曲を演奏してもてなしてくれたそうだ。

 ロッドマンはこの年の9月にも再訪朝したが、この時は金委員長の別荘に招待されていた。そのことは帰国後に本人自らがイギリスの日刊紙とのインタビューで口にしていた。

 「7日間の日程のほとんどを金正恩の島で飲酒パーティとジェットスキー、乗馬などを楽しんで過ごした。テキーラでも何でも、何かを注文すれば必ず最高級のものが出てきた。連れて行ってもらった島は全てが彼一人のものだったというから半端じゃない。ハワイやスペインのイビサ島以上にすごかった。長さ60メートルの大型ヨットと数十台のジェットスキー、馬小屋に馬が一杯いて、足りないものはなかった。すべての施設は7つ星級で、世界最高の富豪も金正恩の生活を見れば、驚くだろう」と語っていた。

 乗馬ならば、「江東招待所」にも1600メートルの馬場があるが、ジェットスキーや大型ヨットで遊んだならば、また季節的にも避暑地の元山招待所に招かれたのであろう。

 今回、偵察衛星で大型ヨットの係留や何者かが乗馬する場面がキャッチされていることから金委員長がコロナを避けるため4月から元山に滞在しているとの見方が有力だが、単にコロナ回避のためならば気温の低い、日本海側よりも温暖の地を選ぶのではないだろうか?

 そう考えると、平壌東部郊外(平安南道)に広大な敷地を有する江東招待所の可能性も考えられる。ここは、噴水や池が点在し、池には橋が架かり滝も造られている。馬場のほかに5レーンのボーリング場、ビリヤード、ローラスケート、射撃場などの娯楽施設も完備されている。順川肥料工場も同じ平安南道にあることから移動するうえでも江原道の元山に比べればはるかに楽だ。

 要は、どこにいるのではなく、何をしているのか、それが問題だ。完治してない足の治療に専念しているのか?それとも他にどこか具合が悪いところがあるのか?それともお忍びで視察を続けているのか?あるいは膠着状態にある米朝関係を動かすため何か秘策を練っているのか?推察しようもない。

(参考資料:映像から見て取れた「金正恩消息不明」の原因!

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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