韓国の総選挙で「親日」のレッテルを貼られた政治家の当落

左派・市民団体による「親日議員」落選運動ポスター(出所:落選運動本部)

 新型コロナウイルス感染が蔓延している最中に行われた韓国の国会議員選挙(総選挙)は与党「共に民主党」が全議席(300議席)の5分の3にあたる180議席を獲得し、圧勝したことと28年ぶりの高投票率(66.2%)だったことが内外の関心を呼んだが、日本にとって見逃せないのは、左派・進歩系の市民団体から「親日」のレッテルを貼られ、落選運動の対象となった議員の当落である。

(参考資料:韓国の総選挙は「日韓戦」?「中韓戦」? 「親中」の与党対「親日」の野党の場外戦へ!

 朴槿恵前政権崩壊の引き金となった「光化門ろうそくデモ」や日本の輸出厳格化措置に反発した日本製品ボイコット運動などを展開した700の市民・社会団体から成る全国組織「安倍糾弾市民行動」が4月9日に記者会見を開き、公表した「落選させるべき候補者」は8人。全員が最大野党の保守系「未来統合党」(統合党)の候補者であった。その結果は以下のとおりである。

 ◇黄教安(党首)

 朴槿恵前政権下の総理在任中に「必要な時には日本の自衛隊の入国を許可する」と発言したことや昨年7月に「反日感情を刺激するのは国益にプラスにならない」と発言したことが問題視された。次期大統領候補同士の一騎打ちとなったが、与党の李洛淵前総理に大差を付けられ敗北した。

 ◇沈在哲(院内総務)  

 「反日」を批判した書籍「反日種族主義」について「この本を読んで武装した戦士になる」と発言したことが市民団体の反発を招いて、「親日」のレッテルを貼られた。6回連続当選を目指したが、与党の新人女性候補に大差を付けられ惨敗した。

 ◇羅卿ウォン(前院内総務)

 朴槿恵前政権が安倍政権との間で2015年12月に交わされた慰安婦合意について「外交的には良くできた協商だった」と発言したことや、昨年3月に「解放後の反民特別委員会により国民が甚だしく分裂を余儀なくされた」との発言が攻撃の対象となった。同じ判事出身の与党の新人候補との「女性同士の戦い」となったが、8371票差で敗れ、5選を果たせなかった。

 ◇全希卿(代弁人)  

 「日本貿易報復措置、輸出7か月連続マイナス、経済崩壊は文政権が招いた」(2019年7月2日)「既存の歴史教科書は反民特別委員会の活動を意図的に李承晩大統領が妨害したと記述していることは間違っている」と発言していた。与党の候補に8597票差で落選し、議席を維持できなかった。

 ◇金鎮台

 反日を批判する著書「反日種族主義」の出版記念会の祝辞で国立墓地親日派の墓の移転を糾弾し、「この国は共産化したのか?これは人民裁判だ」と発言した保守言論人の発言を擁護したことが問題となった。選挙期間中に「セウォル号」の遺族らを「世間の憐れむ同情を、刺身で食らい、蒸して食らい、それでも足りず骨までしゃぶり、本当に卑しく食らい尽くす」と、卑下する発言し、党内からも批判を浴びていた。3選を目指したが、与党の候補に9634の差で惜敗した。

 ◇車明進  

 「日本製品不買運動は退廃的だ。一部大衆の低級な反日種族主義の感情に溺れた文在日の薄っぺらの上述を非難すべきである」と発言(2019年7月28日)したことが標的とされた。与党の対立候補にダブルスコア―の差を付けられ、敗北した。

 ◇河泰慶 

 日本と領土を争っている問題で「独島(竹島)は国際的に公認された紛争地域である」と発言し、また「殖民地近代化論は事実である」と述べたことで叩かれた。最近では「日帝占領時代のほとんどの人は親日派だ」と言って物議をかもしていた。文政権で初代の科学技術通信部長官を務めた与党候補に得票率で22%(3万票)の差を付けて楽勝し、3選を果たした。

 ◇尹相現「無所属」(前「統合党」議員)  

 「反日のレッテルを貼るのは後進国の政治である。文政権は日本と遣り合うことで親日対反日、愛国対米国の構図にして内部闘争を引き起こそうとしている」と昨年7月に発言したことが落選運動の対象となった。青瓦台行政官から転出の与党新人女性候補との大接戦の末、171票の僅差で辛勝し、4選を果たした。

 ▲与党及び進歩系議員に対する落選運動

 一方、・左派・進歩勢力による「親日候補落選運動」に対抗して18の右翼・保守団体から成る「選挙革命国民連帯」も「共に民主党」候補者らを対象に落選運動を展開したが、対象にされた候補者の当落結果は以下のとおりである。

 「当選者

 孫永吉・元仁川市長(5選)

 安敏錫・元文在寅大統領候補選挙対策職能本部長(3選)

 禹相虎・前党院内総務(再選)

 洪翼杓・前党首席代弁人(3選)

 朴釘・元文在寅大統領候補中央選挙対策委員会総括本部長(再選)

 朴柱民・党最高委員(再選)

 徐瑛教・前党院内首席副代表(再選)

 薛勳・党最高委員(再選)

 朴洪根・前党院内首席代表(3選)

 金太年・前党政策委員会議長(4選)

 朴キョン美・元党代弁人(再選)

 沈相ジョ・「正義党」党首(再選)

「落選者」

 崔宰誠・党日本経済侵略対策特別委員会委員長(5選失敗)※元MBCニュースのアンカーの「統合党」候補が当選

 李貞味・「正義党」前党首(再選失敗)※「共に民主党」候補が当選 

 秋惠仙・「正義党」前言論改革市民連帯事務総長(再選失敗)※「共に民主党」候補が当選

 金鍾大・元盧武鉉大統領秘書室行政官(再選失敗)※「共に民主党」候補が当選 

 朴智元・「民生党」議員(元文化観光部長官)(5選失敗)※「共に民主党」候補が当選

 鄭東泳・「民生党」議員(元第17代大統領候補(6選失敗)※「共に民主党」候補が当選

(参考資料:与党「共に民主党」の圧勝に終わった韓国総選挙を総括する

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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