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文大統領の支持率は上がった?下がった? 真逆の韓国の世論調査結果

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
文在寅大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

韓国を代表する二つの世論調査会社が文在寅大統領の支持率をめぐり真逆の調査結果を発表したことで、韓国の世論調査の信用度が改めて問われる事態となった。

一昨日(17日)に発表された世論調査会社「リアルメーター」の調査では、文在寅大統領の支持率は前週(10月第二週)に比べ4.1ポイント上がって45.5%となり、2週連続の下落から上昇に転じていた。また、不支持率は4.5ポイント下落の51.6%だった。

ところが、昨日(18日)公表されたもう一つの世論調査会社「韓国ギャラップ」の調査では、前週に比べ4ポイント下落の39%。大統領就任(2017年5月)後初めて30%台に落ち込んだ。不支持率は逆に2ポイント上昇の53%と、9月第3週と同じ就任後最高値となった。

「リアルメーター」の調査はチョ・グク法相が辞任を表明した10月14日から16日の間に約1500人の有権者を対象に行われており、一方の「韓国ギャラップ」は15日から17日に掛けて約1千人を対象に実施されている。調査開始日と終了日がたった一日ずれただけで正反対の結果が出たことになる。

なぜ、かくも異なる結果が出るのか、どちらの結果がより正しく、「民意」を反映しているのか、正直判別がつきにくい。そこで、チョ・グック氏が法相に内定した8月以降の文大統領の支持率だけをピックアップし、「韓国ギャラップ」の調査をベースに以下、調査結果を比較してみた。

▲「韓国ギャラップ」※()内は「リアルメーター」

 8月

 第一週「支持」48%(50.4%) 「不支持」41%(44.4%)

 第二週「支持」47%(49.4%) 「不支持」43%(46.3%)

 第四週「支持」45%(46.5%) 「不支持」49%(50.2%)

 ※「韓国ギャラップは」は第三週を、「リアルメーター」は第五週を調査してないので、比較できないため二つとも外した。

 9月

 第一週「支持」43%(46.3%) 「不支持」49%(49.9%)

 第三週「支持」40%(45.2%) 「不支持」53%(52.0%)

 第四週「支持」41%(47.3%) 「不支持」50%(50.2%)

 ※「韓国ギャラップ」は第二週に調査をしていないので、「第二週」は外した。

 10月

 第一週「支持」42%(44.4%) 「不支持」51%(52.3%)

 第二週「支持」43%(41.4%) 「不支持」51%(56.1%)

 第三週「支持」39%(45.5%) 「不支持」53%(51.6%)

 調査結果を比較すると、両社とも8月の第二週までは「支持」が「不支持」を3~4ポイント上回っていたが、二週間後にはそれぞれ逆に「不支持」が「支持」を4ポイントの差を付け逆転。以後、その差が開いている点でも共通している。

 しかし、総じて、「リアルメーター」の調査は「韓国ギャラップ」よりも「支持」が平均して2%から最大で6%高いことがわかる。その一方で、「不支持」の両者の誤差は1%前後しかなく、ほぼ同じ結果だが、唯一、先週(10月第二週)だけは「リアルメーター」は「韓国ギャラップ」よりも5%も高かった。逆に「支持」は「韓国ギャラップ」よりも1.6%低い41.4%だったことから「大統領就任以来過去最低を記録した」と内外の関心を集めたばかりだった。

▲(参考資料:「チョ法相辞任」で文大統領の支持率が予想外に上昇!

 両者のコントラストは大統領支持率に限ったことではなく、政党支持率でも明らかに異なった結果が出ている。

 「リアルメーター」は進歩(革新)系与党の「共に民主党」が前週よりも4.1ポイント上昇した39.4%。文大統領の支持率と同様に2週間連続の下落から回復していた。一方、保守系最大野党の「自由韓国党」は0.4ポイント下落の34.0%であった。ところが、「韓国ギャラップ」の調査では、与党「共に民主党」は前週から1ポイントダウンの36%、「自由韓国党」は前週と同じ27%などとなっている。

 韓国の世論調査が割れるのは、何も今回が初めてではない。

 文大統領によるチョ法相任命についても「リアルメーター」の調査結果(9月16~18日に実施)では「反対」が55.5%、「賛成」が35.3%と20%以上の大差が付いていたが、不思議なことに直後(9月19~20日)に「韓国リサーチ」が韓国KBS(「日曜診断ライブ」)の依頼で約1千人の有権者を対象に行った調査ではチョ法相による検察改革について「評価する」が52%、「評価しない」が35%と、国民の半数以上がチョ法相による検察改革に支持を表明していた。

 政界では与野党が正面衝突し、大衆による大規模集会やデモも左右に分かれ、メディアも政府系(ソウル新聞、京郷新聞、ハンギョレ新聞)対反政府系(東亜日報、朝鮮日報、中央日報)に分かれている状況にあって、世論調査までもが矛盾した結果が出れば、韓国の民意を正確に把握するのは容易ではない。

(参考資料:韓国の世論調査は信用できるのか? 不可解なチョ法相をめぐる調査結果

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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