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文在寅大統領の「対日強硬発言」は恩師・故盧武鉉元大統領の14年前の「談話」を踏襲

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
自殺した恩師・盧武鉉元大統領の遺影を手にする文在寅大統領(左)(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 韓国を「ホワイト国」から除外したことへの昨日(8月2日)の文在寅大統領の緊急国務会議での発言は予想外に強硬だった。では、何をもって強硬と言えるのか?その理由を大きく分けて4つ挙げられる。

 第一に、日本の今回の措置が元徴用工判決に関する韓国最高裁の判決に対する「貿易報復である」との認識は予想されたことだが、「ホワイト国」からの除外を「事態をより深刻化させる無謀な決定」としたうえで「状況を悪化させた責任は日本にある」と断じ、「これから起きる事態の責任も全的に日本政府にある」と警告したことだ。

 第二に、「加害者の日本が盗人猛々しくも逆に大きく出る状況を決して座視しない」とのキツイ表現を使い、「不当な経済報復措置に対し相応の措置を断固採る」と対決姿勢を鮮明にしたことだ。

 第三に、日本の措置が「韓国の経済を攻撃し、韓国経済の未来の成長を邪魔し、打撃を加えることに意図がある」と解釈し、「我が経済を意図的に打撃するならば 、日本も大きな被害を甘受しなければならない」と事実上、「経済戦争になる」と予告したことだ。

 最後に、韓国はこれから困難に直面するが、「挑戦に屈服したら歴史はまた繰り返される。今日の大韓民国は過去の大韓民国ではない、我々は十分に日本に勝てる」と、非情な覚悟を持って日本に立ち向かうよう国民に呼びかけたことだ。

(参考資料:「線香花火」で終わりそうにない韓国の日本製品不買運動 「若者層」が圧倒的に支持)

 文大統領の異常なまでの強硬発言は盧武鉉政権下の2005年、日本が2月22日を「竹島の日」に設定したことや小泉純一郎総理(当時)の靖国参拝などで日韓摩擦がピークに達していた時の盧大統領の国民向け談話(3月23日)をまるで踏襲しているようでもある。

 文大統領は同じ弁護士出身で先輩の盧武鉉大統領の政権下で大統領府(青瓦台)民情首席秘書官(2003年2月)として青瓦台入りし、市民社会首席秘書官(2004年5月)を経て2007年には最側近の大統領秘書室長に起用され、盧大統領を支えていた。

 当時の「盧武鉉談話」もまた日本への対決、対抗を鮮明にしていた。以下、主な発言をピックアップしてみると;

 「謝罪は真の反省を前提にするもので、またそれに伴った実践が供わなくてはならない。小泉総理の神社参拝は以前に日本の指導が行った反省と謝罪の真実性を損なうものだ。そのことに対して我が政府は外交争点にしたり、対応措置を取ったりすることなくただ自制を促してきた。それこそまさに、日本の指導者らが口を開いては反復してきた未来志向の韓日関係のためだった。だが、もう看過できないところまできてしまった」

 「これからは積極的に対応していく。これまで政府は日本に対して言いたい言葉、主張があっても急進的市民団体や被害者らに任せ、言葉を控えてきた。被害者らの血を吐くような絶唱にも耳を貸さず、被害者らが真相を求め、奔走していた時も助けてあげられなかった。政府間の葛藤を招く外交上の負担や経済に影響を及ぼしかねない影響を考慮したことによるかもしれない。何よりも未来志向的韓日関係を考えたがために自制してきた。しかし、(日本から)返ってきたのは未来を全く考慮しないような日本の行動だ。今はむしろ政府が前面に出なかったことが日本の慢心を招いたのではないかとの疑問が提起されている。これではだめだ。これからは政府がやれることはすべてやる」

 「まずは外交的に断固対応する。外交的対応の核心は日本政府に対して断固として是正を求めていくことだ。日本政府の誠意ある応答を期待するのは難しいとの疑問の声も出ているが、当然やらなければならないことは相手が聞くまで止まることなく、絶え間なく要求するつもりだ。次に国際世論を説得する。国際社会も日本をして人類の良心と国際社会の道理に沿って行動するよう促す義務がある。我々は国際社会にこの当たり前の道理を説得していくつもりだ」

 「こうしたことは決して簡単なことではない。厳しい外交戦争もあり得るし、経済、社会、文化など全ての分野で交流が委縮され、それが我が国の経済を困難にしかねないとの憂慮も出てくると思う。しかし、この問題に関してはそれほど心配してない。我々も少々の困難を十分に耐えるだけの力量を持っている。また、国家的に必ず解決すべきことのために耐えなければならない負担ならば果敢に乗り越えられると思う」

 「いかなる困難があろうが、退いたり、うやむやにはせず、我が国民が受容できる結果が出るまで粘り強く対処していく。今回は必ず根を断つ。困難な時には国民に助けを請う。仮に喧嘩となれば、この喧嘩は1日や2日で終わるような喧嘩ではない。持久戦だ。いかなる困難も甘受できるよう悲壮な覚悟で挑む」

 「国民にお願いしたいことがある。日本の国粋主義者らが侵略的な意図を決して容認してはならないが、だからと言って、日本国民全体に不信を持ち、敵対してはならない。日本と我々は宿命的に避けられない隣人だ。両国の国民の間に不信と憎悪の感情が高まれば、再びとてつもない不孝を避けることができなくなる」

 韓国で先週から日本の措置に抗議する集会デモが行われているが、「反日」のスローガンではなく、「反安倍」が叫ばれているのはまさに、この「盧武鉉談話」に基づいている。

(参考資料:韓国の「反安倍ろうそくデモ」は「朴槿恵弾劾ろうそくデモ」の規模まで拡大するか!?)

 文在日政権は盧武鉉政権のDNAを引き継いでいると言われているが、果たしてどこまで徹底抗戦ができるのだろうか?

(参考資料:「安倍晋三対文在寅」 似て非なる因縁の「対決」

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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