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奇襲攻撃能力を備えた北朝鮮のICBM

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
長距離弾道ミサイルの格納庫を見て回る金正恩委員長

 北朝鮮のミサイルが休戦協定日から一日遅れて28日の深夜に発射された。ミサイルの機種や性能、実験の詳細については今日にも北朝鮮が発表するだろう。

(参考資料:北朝鮮に対する米軍の先制攻撃はいつでも可能な状態

 飛距離については、韓国当局の発表によれば、今回もロフテッド軌道(高角度で発射)で発射され、高度3,700km、水平距離1,000kmあったようだ。

 北朝鮮が5月14日に発射した中長距離弾道ミサイル「火星12号」は一段式で、高度2、111kmに達し、水平距離は787kmあった。同じく平安北道の亀城から発射された7月4日の長距離弾道ミサイル「火星14号」は二段式で高度2、802km、水平距離933km、飛行時間は約39分(米国は37分飛行と発表)と発表されていた。

 今回は高度3、700km、水平距離約1,000km、飛行時間は47分あったと推定されている。前回に比べ、高度で約900km、水平距離で100km延び、飛行時間で8分も長く飛んでいたことになる。

 直近の2回のミサイルとの違いから、今回は三段式の「KN-08」もしくは「KN-14」が使用された可能性も否定できない。この二種類の長距離弾道ミサイルはこれまで軍事パレードで登場しながら、一度もテストされてなかったミサイルである。

 次に気になるのは発射場所である。

 今回も平安北道・亀城から発射されるものと予想されていた。偵察衛星などで亀城へのミサイル運搬や金正恩委員長をはじめ幹部らの車列が確認されたと報道されていたからだ。しかし、実際に発射された場所は予想に反し、中国国境に近い慈江道・舞坪里であった。

 発射地点を間違えたのは、これで2度目である。

今年初めて午後に発射された5月21日の「北極星2型」も当初、「平安南道の北倉」付近から発射されたと発表されたが、実際には16km離れた平安南道・安州からの発射であった。北朝鮮が公開した写真、動画には湖の傍から発射される模様が映し出されていたが、北倉には湖がないことから安州であったことが判明した。

 北朝鮮は過去3年間に短距離を含めてミサイルを200発近く発射しているが、慈江道からの発射は2014年9月1日に龍林から発射され、約220キロ飛行し、日本海に落下した短距離ミサイル1発だけだった。

 慈江道は中国と国境を接している。前回国境から60kmに位置する龍林から発射された際には「韓国に接近する中国を牽制するのが狙い」とか、「米国に攻撃しにくいようにするのが狙い」と言われていた。

 しかし、龍林に発射基地が地下に建設されていること、さらには慈江道には長距離弾道ミサイルの製造工場があることはあまり知られてない。

 韓国や日本にとって午後11時40分という発射時間も想定外だったようだ。

 それもそのはずで、今年だけをみても、2月12日の午前7時55分に発射された「北極星2型」から7月4日の「火星14号」まですべて午前中に発射されていたからだ。

 例えば、3月6日の「スカッドER4」4発は午前7時36分、5月14日の中長距離弾道ミサイル「火星12号」も午前5時28分、6月8日の地対艦巡行ミサイル「KH-35」も午前7時台だった。そして「火星14号」も午前9時40分に発射されている。唯一5月21日の2回目の「北極星2型」だけが午後4時59分に発射されていた。

 今回は午後11時40分頃に発射されたことから「奇襲」を狙ったとの見方がなされているが、過去にも午後に発射されたケースはいくらでもある。

 例えば、過去3年間だけでも、2014年2月27日の弾道ミサイル「スカッド」4発は午後5時40分、2014年7月27日の「スカッドC」は午後9時40分、2015年2月6日から5月にかけて3回試射された新型艦隊艦ミサイルはいずれも午後5時20分、午後4時15分、午後4時25分と午後の時間帯だった。昨年4月30日の「ムスダン」とみられる中距離弾道ミサイルもまた午後7時26分だった。

 午後の発射は決して珍しいことではないが、気になるのはむしろ深夜の時間帯に発射されていることだ。

 過去のケースでは、2006年7月5日の江原道安寧郡・旗対嶺からのミサイル(7発)が午前3時32分から発射され、3発目の長距離弾道ミサイル「テポドン」は午前5時に発射されている。

 また、2014年3月に平壌北方の平安南道・粛川から発射された中距離弾道ミサイル「ノドン」2発も午前2時台に発射されている。

 昨年も3月10日の射程500kmの「スカッド」は午前5時20分に、3月17日の射程1300kmの中距離弾道ミサイル「ノドン」2発もいずれも午前5時55分と6時17分に発射されている。

 米太平洋上の米軍基地(在日米軍基地とグアム基地)をターゲットとしている中距離弾道ミサイル「ムスダン」は昨年4月15日、4月30日、5月31日、そして6月22日に合計6発発射されているが、4月30日に再発射された3発目だけが午後7時26分と例外で、他は全部早朝に発射されている。

北朝鮮に対する米軍の先制攻撃はいつでも可能な状態

 具体的には4月15日の1発目は午前5時33分、4月30日の2発目は午前6時40分、5月31日の4発目は午前5時20分、6月22日の5発目は午前5時58分に発射されている。

 北朝鮮は数年前から「先制攻撃は米国の専売特許ではない」として、朝鮮半島有事の際の日米への先制攻撃を示唆している。

 ミサイルによる先制攻撃は米国の「シリア空爆」、あるいは日本軍の真珠湾攻撃をみるまでもなく、奇襲、電撃攻撃が前提となる。

 北朝鮮の今回の発射はまさに「いつ、どこからでも発射できる」との先制攻撃の能力を示したことになると言っても過言ではない。

(参考資料:北朝鮮が2週間以内にICBMを再発射! トランプ大統領は我慢できるか?

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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