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お騒がせの元NBAスター、ロッドマンがまた訪朝!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
NBAの元スター選手、ロッドマン氏と抱き合う金正恩委員長

米プロバスケットボール(NBA)の元スター選手、デニス・ロッドマン氏が訪朝するようだ。早ければ、今日にも平壌に到着する。実現すれば、5度目の訪朝となる。いずれもバスケットボールが趣味の金正恩委員長直々の招請による。 

初訪朝は2013年2月で、当時はオバマ大統領との橋渡しを依頼するため招かれたのではないかと囁かれていた。というのも、帰国したロッドマン氏が金正恩委員長から「オバマ大統領から電話をもらえないだろうか」と頼まれたと語ったからだ。しかし、これはどこまで本心だったか定かではなかった。

本心ならば、直前の1月にグーグルのエリック・シュミット会長に随行して訪朝したリチャードソン元米ニューメキシコ州知事に会って依頼したはずだ。リチャードソン元知事は訪朝歴のある数少ない北朝鮮シンパで、それも民主党の実力者の一人である。

金委員長はロッドマン氏よりもはるかに影響力のあるエリック・シュミットグーグル会長一行とは面会せず、袖にして、NBAでは「過去の人」になりつつある人物をVIP扱いしたわけだ。もはや個人の趣味であって「ピンポン外交」のレベルの話ではなかった。

父親の金正日総書記は生前、クリントン政権時の2000年6月に訪朝した金大中大統領に「クリントン大統領に繋いでもらえないだろうか」とクリントン大統領との橋渡しを依頼したことがあった。

クリントン大統領は信頼すべき金大中大統領の斡旋であるが故に金総書記のメッセージを真剣に受け止め、3か月後にオルブライト国務長官を平壌に派遣し、断念したものの自らも11月に訪朝する予定だったことは、退任から4年後に出版された回想録「我が人生」に書かれている。

正恩委員長は「オバマ大統領から電話をかけてもらいたい」理由として「戦争を望んでいないからだ」と語ったそうだが、これでは「電話をくれなければ、戦争をやるぞ」と言っているようなものだった。実際、オバマ大統領も相手にしなかった。オバマ大統領から電話をもらいたいなら、少なくともそれなりの人物を介すべきであった。

ロッドマン氏はこの年の12月にも訪朝したが、叔父の張成沢党部長を処刑した直後だったせいもあって金委員長には会えなかった。と言うよりも、金委員長が会いたいのに会えなかったと言ったほうが正解だろう。それもそのはずで、張成沢処刑の理由の一つが「張成沢がどんなに堕落、変質したかがよく分かる。資本主義的不健全さがわが内部に入ってくるように先導し、行く先々でお金をやたらにばら撒いて浮華放縦な生活をしていた」と告発していたからだ。

ロッドマン氏は前回の訪朝で金委員長の別荘に招待されていたが、帰国後イギリスの日刊紙とのインタビューで金委員長の私生活を次のように暴露していた。

「7日間の日程のほとんどを金正恩の島で飲酒パーティーとジェットスキー、乗馬などを楽しんで過ごした。テキーラでも何でも、何かを注文すれば必ず最高級のものが出てきたね。連れて行ってもらった島は全てが彼ひとりのものだっていうからハンパじゃない。ハワイやスペインのイビサ島以上にすごかった、長さ60メートルの大型ヨットと数十台のジェットスキー、馬小屋にいっぱいの馬など足りないものはなかった。すべての施設は7つ星級であり、世界最高の富豪も金正恩の生活を見れば驚くだろう」

時期が時期だけにとてもではないが、ロッドマン氏を「おもてなし」するわけにはいかなかったのだろう。ましてや、世界を震撼させた叔父の処刑(12日)からまだ2週間も経ってなかった。両腕にタトゥーを入れた、アルコール中毒の、それも「最高指導者」の前でも帽子を脱がない、サングラスも外さない「よそ者」を歓待し、7つ星級の別荘に招待し、テキーラのグラスを片手に、葉巻をくわえ、どんちゃん騒ぎを知ったらどう思うだろうか。

しかし、翌年の2014年1月、金委員長の誕生日(1月8日)を祝うため米国のバスケットボールチームを引率して訪朝した際には出てきた。張成沢氏を処刑してから初めて公衆の面前に姿を現し、笑みを振りまいてみせていた。金委員長がロッドマン氏に首ったけということが改めて立証された。

訪朝後にアルコール依存症を治すため入院していたロッドマン氏はCNNに出演し、「訪朝話」をしていたが、金委員長について「彼はまだ31歳で、私はいつも彼を『キッズ』(子供)と呼んでいた」と語っていた。国内では「敬愛する領導者」とか「偉大な領導者」と喧伝されているのにロッドマン氏は金委員長を子ども扱いにしていたことがわかった。

金正恩氏が誕生日に招いたこの客人は帰国前日泥酔し、宿舎の高麗ホテルで奇声を上げ、挙句には館内のいたるところで嘔吐、排泄するなど傍若無人に振る舞った。平壌では箝口令が敷かれ、このことは秘密に伏せられていた。金委員長は翌年の新年辞で叔父の張成沢氏を「汚物」扱いしていたが、汚物扱いをしてしかるべきは、道楽で呼んだロッドマン氏であった。

ICBMの発射や核実験が差し迫りつつあるこの時期にロッドマン氏を招く理由がトランプ政権にメッセージを発信するためか、それとも単なる道楽のためか、どちらにせよ金委員長が「悪童」のニックネームを持つこの男との再会に注目が集まるのは間違いない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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