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平和の祭典中は北朝鮮の軍事挑発も「一時休止」

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
東アジアカップで優勝した女子サッカー選手団を空港で歓迎する金正恩委員長

リオ五輪が始まった。8月21日の閉会まで熱戦が繰り広げられる。

五輪は平和の祭典である。この期間は戦争状態にあっても撃ち方止めの「休戦」に入ると言われている。

「アジアの火薬庫」と呼ばれる朝鮮半島も例外ではない。北朝鮮は五輪期間中に核実験や「衛星」と称する長距離弾道ミサイル「テポドン」を発射したことはない。ロンドン五輪があった2012年に2度「テポドン」を発射したが、いずれも4月と12月であった。

今回は、どうか?

ミサイルについては五輪直前の8月3日に中距離弾道ミサイル「ノドン」を2発連射したが、その後は鳴りを潜めている。噂されている5度目の核実験の動きもぴったり止まったままだ。

(参考資料:朝鮮半島で近々、軍事衝突が起きるか!

リオ五輪には北朝鮮も参加している。男女31人の選手が金メダルが有力視されている重量挙げなど9種目に出場する。体育相が率いる選手団とは別に党序列5位の崔龍海副委員長(政治局常務委員)も招待されている。金正恩委員長もスポーツ好きと言われているので五輪中に事を荒立てるようなことはしないだろう。

唯一に気になるのは、今月予定されている米韓合同軍事演習(UFG)が五輪開催中にかぶることだ。まだ正式発表はないが、米韓にとっては春の合同軍事演習(キーレゾルフとフォーイーグル)と並ぶ恒例の演習だ。「恒例の演習で、防衛が目的である」(韓国国防部)ので中止することはないだろう。

ロンドン五輪(7月27-8月12日)があった2012年は五輪終了後の8月20日から実施されていたが、過去3年間のデーターをみると、2013年は8月19-30日まで、2014年は8月18―29日まで、そして昨年は一日早い8月17-28日まで実施されていた。リオ五輪が終了するのは21日までなので五輪期間中にスタートする可能性が高い。 

米軍3万人と韓国軍5万人が参加する演習には過去に米原子力空母「ジョージワシントン」やF―22ステルス戦闘機、B52爆撃機、ステレス戦略爆撃機B-2、イージス駆逐艦「ラッセン」や「フィッツジェラルド」などが参加している。

特に2009年からは北朝鮮の大量破壊兵器(WMD)の探知・破壊を目的とした訓練に重点が置かれている。ミサイルにせよ、核にせよ北朝鮮によるWMD使用の兆候があれば、それを阻止するための先制攻撃訓練が行われている。脅威を感じた金正恩党委員長は2012年のUFGに対しては「我慢にも限界がある」として全面的な反攻撃戦に向けた作戦計画を検討し、署名していた。

一昨年は「我々に対する奇襲攻撃を画策した戦争練習である」(8月8日付労働新聞)として軍総参謀本部が「米国と南朝鮮が宣戦布告してきた以上、我々のやり方の最も強力な先制攻撃が、任意の時刻に無慈悲に開始される」と警告していた。しかし、実際には何事も起こらなかった。

昨年もUFGは宣戦布告だとして、「強行されれば、第二次朝鮮戦争を招くかも」と連日威嚇していたが、軍事衝突には至らなかった。ミサイル発射もなく、核実験もなかった。慣例に従えば、五輪期間中は何事も起こらないだろう。

但し、例外として、ドイツでサッカーワールド杯が開催された2006年(6月9日―7月9日)には期間中の7月5日にテポドンを発射していたこともあったので油断はできない

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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