北朝鮮の「奇襲発射」はあり得るか?

(写真:ロイター/アフロ)

北朝鮮の長距離ミサイルはいつどこに向けて発射されるのだろうか?それも予告なく、奇襲的に行われるのだろうか?

発射の時期については、米CNNは29日、二人の米当局者の話として「北朝鮮が早ければ来週中にも弾道ミサイルの発射実験をする可能性がある」と報じていた。この報道通りならば、2月7日まで発射されることになる。2月8日は金正恩第一書記が昨年復活させた朝鮮人民軍正規軍創建日である。また、16日は金正日総書記の誕生日(74歳)にあたる。死去して5年目の誕生日だ。それに合わせての国威発揚として打ち上げるつもりなのだろうか?

仮に、来週打ち上げるとした場合、このまま予告もせずに発射するのだろうか?

この長距離弾道ミサイルが人工衛星打ち上げのロケット「銀河」で、本当に2月7日までに打ち上げる予定ならば、北朝鮮は一両日中にも国際機関に通告しなければならない。北朝鮮は前回(2012年12月)発射の際には12月1日に「10日~22日の間に発射する」と通告し、12日に発射していたからだ。1月30日現在、北朝鮮から航路禁止区域の事前通告がない。飛行区域の航空機や船舶の航路安全のため国際民間航空機関(ICAO)や国際海事機関(IMO)に期間と飛行ルートを事前通告しなければならない。こうしたことから日韓両国は、今回は事前通告なく、発射するのではとの見方も強めている。

事実、菅官房長官は29日の記者会見で「金正恩体制の行動を検証した場合、事前の予告なく弾道ミサイルの発射もある」と述べていた。韓国国防部スポークスマンもまた「奇襲発射もあり得る」と警戒を怠ってない。北朝鮮が今年1月6日に実施した4度目の核実験が過去3回と異なり事前予告なく電撃的に行われたことがその根拠となっているようだ。

予告なしの発射ならば、北朝鮮が主張する衛星発射ではなく、長距離ミサイルの発射と結論付けられる。北朝鮮が現在保有している長距離ミサイルは「テポドン」と三段式の「KN-08」しかない。

全長30メートル、重量92トンの「テポドン」よりも小型の「KN-08」(全長17メートル、重量60トン)は移動式発射台が使われ、固定式発射台は必要としない。となると、今回発射される長距離ミサイルは前回同様に「テポドン」ということになる。

北朝鮮が過去に「テポドン」を発射したのは公式、非公式合わせて5回。そのうち事前通告がなかったケースが過去2回ある。1回目の1998年と2回目の2006年の時だ。

1回目は、1998年8月31日に日本海に面した咸鏡北道花台郡舞水端(ムスダン)基地から予告なく発射され、日本列島を飛び越え、三陸沖に着弾した。

当時三陸沖海域には漁船が多数操業し、民間航空機もミサイル通過時には7機飛来していた。事前通告せずに発射するとは、暴挙極まりなかった。仮に国内、あるいは米軍の三沢基地に着弾していれば大変なことになっていた。北朝鮮は発射から4日後に「人工衛星を打ち上げた」と発表した。日本政府は仮に人工衛星であったとしても、また人工衛星打ち上げの事前通告があったとしても容認できないと北朝鮮に強く抗議した。

2回目は8年後の2006年7月5日で、これまた事前通告なく発射された。

この日は午前3時半から日本海に面した江原道安寧郡旗対嶺(キッテリョン)基地を中心に新型中距離弾道ミサイル2発を含むスカッド及び「ノドン」ミサイルの計7発が発射されたが、そのうちの一発が午前5時に発射された「テポドン2号」だった。「テポドン2号」は発射から40秒後に爆破し、日本海に墜落した。国連安保理が問題視し、10日後の15日に非難決議を採択するや、それまで沈黙していた北朝鮮は「軍事演習の一環としてミサイルを発射した」とミサイル発射の事実を認め、「衛星を打ち上げた」とは言わなかった。

しかし、直近の過去三回はいずれも事前予告があった。

3回目は3年後の2009年4月5日で、北朝鮮は初めて国際機関に事前通告していた。2月24日に宇宙空間技術委員会の名前で「人工衛星打ち上げの準備を行っている」と予告し、「4月4-8日の間に人工衛星を打ち上げる」と公表した。発射場は過去2回と同じ舞水端基地だが、北朝鮮はこの時初めてこの基地を「東海衛星発射場」と称した。

4回目は2012年4月13日で、4月15日の金日成主席生誕100周年を前に中国に近い平安北道東倉里(トンチャンリ)基地「西海衛星発射場」から発射された。

飛行コースは石垣島、宮古島など南西諸島からフィリピンの東方190kmの公海に設定された。この時も、3月16日に宇宙空間技術委員会が「光明星―3」(テポドン3)を「4月12-16日の間に発射する」との事前通告があった。また、西側の報道陣にも公開された。7時38分に打ち上げられ、1~2分程度で空中爆発し、2006年同様に失敗に帰した。

そして、5度目が2012年12月12日で、コースも前回同様に南方向に設定された。この時も12月1日に朝鮮宇宙空間技術委員会から「12月10―22日の間に人工衛星を発射する」との発表があった。しかし、この時は直前の10日になって「29日まで延期する」と発表しておきながら、実際には2日後の12日に発射した。

事前通告のない発射はこれまでの「衛星」との主張を全面的に覆すことなり、逆に長距離弾道ミサイル(テポドン)として制裁を科した国連安保理の正当性を裏付けることになる。

また、東倉里基地からの発射ならば、今回も飛行コースは南方ということになるが、人工衛星でなく、長距離ミサイルなら、敵性国家である韓国、日本、米国が位置する東側(日本海と太平洋側)に向けて発射されても不思議ではない。

発射されるミサイルがテポドンか、又は「KN-08」か、それとも「人工衛星」なのか、いずれにせよ北朝鮮の動きが注目される。

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。1986年 テレビ、ラジオで評論活動開始。98年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー 。2003年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会会員、日本ペンクラブ会員。著書に「在日の涙 間違いだらけの日韓関係」(飛鳥新社)「世界が一目置く日本人、残念な日本人」(三笠書房)「大統領を殺す国 韓国」(角川)「金正恩の北朝鮮と日本」(小学館)「北朝鮮100の新常識」(マサダ)「韓国人と上手につきあう法」(ジャパンミックス)など20数冊

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