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PTA改革求める保護者が会長を「どう喝」 今後もPTAトラブルは増加か

大塚玲子ライター
PTA退会や非加入、要望は、書面で伝えるのがおすすめです(提供:イメージマート)

 多くの保護者を悩ませてきたPTAですが、ここ数年ようやく少しずつ、改善の兆しも見られるようになってきました。「全員必ずやる」という義務前提の従来の仕組みから、「やりたい人がやる」という本来の仕組みに切り替える動きが、徐々に広がっています。

 そんな状況のなか、同じ保護者である会長や役員さんに対し、PTA改革を求めて「どう喝」する保護者が現れたという、穏やかならぬ話を聞きました。どう喝まで至るのはやや特殊な事例ですが、改革を求める保護者からの過度な突き上げ事例は、たまに耳にします。何が起きたのか、聞かせてもらいました。

会長・役員全員を呼び出し2時間どう喝

 西日本に住む宮下さん(仮名・30代男性)が、子どもが通う小学校のPTA会長になったのは、約4年前でした。PTAには特に興味がなかったのですが、頼まれたので軽い気持ちで引き受けたそう。1年やってみて保護者の負担が大きいことに気付き、2年目からは活動内容の見直しを行うなど、改善をはかってきました。

 問題の保護者・A氏(50代男性)を知ったのは、会長3年目の頃でした。A氏は、子どもが学校でいじめに遭ったと訴えましたが、学校はいじめと認めず、トラブルに。これを機に、学校への不信感を募らせてしまったようです。

 A氏がPTA退会を伝えてきたのは、それから間もなくのことでした。いじめの件を機にネットで情報を集め、PTAの自動加入の問題についても情報を得たようです。宮下さんは「非会員の子どもへの不利益はない」と伝え、A氏は退会したのですが、その後も入退会の仕組みの整備などのPTA改革を、激しく迫ってきたのでした。

 ときには、校長を介して本部役員全員を学校に呼び出し、2時間にもわたってどう喝(校長が受け入れてしまったせいでもありますが…)。役員さんたちは子どもに危害を加えられることを恐れ、警察に相談したこともありました。宮下さんが一人で呼び出され、暴言を吐かれ続けたこともあるといいます。

 宮下さんはこの間じっと耐えながら、PTA改革に取り組みました。そして今年度からはついに加入届を整備し、会則に「任意加入であり、入退会は自由」という文言も入れ、入退会の仕組みを整備したそう。宮下さんの住む自治体では、初めてのことでした。

 なお当時の校長も、教育委員会も、P連も、みんな最初は入退会の仕組みの整備に反対していたため、宮下さんはそれらの団体との調整にも、苦労したということです。

 宮下さんは、A氏が現れてからのことをこう振り返ります。

 「確かにこの方がいなければ、僕たちはPTAの運営について正しい知識を得られなかったかもしれないし、入退会の仕組みも整えられなかったかもしれない。でも、このようなやり方がよかったとは、決して思えません。いくら正しいことのためでも、他人を口汚く罵ったり、馬鹿にしたり、どう喝したりしていいはずがないでしょう」

 まったく、その通りです。PTAの問題を指摘し、改善を促すのは必要なことですが、程度というものがあります。罵りや嘲り、どう喝をするなど、論外です。

 これまでも繰り返し書いてきたことですが、PTAの問題は前例踏襲で続いてきたことが多いので、いまの役員さんを責めるのは気の毒です。それに、PTAへの自動加入という問題については校長の責任が大きいので(学校が持つ個人情報を提供、あるいは流用を黙認している)、まずは校長先生に働きかけるのがベターでしょう。

 PTAに退会や非加入、要望を伝える際は、双方の時間や労力を省くため、書面や手紙に依るのがおすすめです。以前ここで紹介したDさんのやり方(下記リンク)を、ぜひ参考にしてください。筆者の新刊(『さよなら、理不尽PTA!』)でも、一般会員や非会員の立場からPTA問題の改善を促した好事例を、複数紹介しています。

 PTAに関するトラブルは、おそらく今後も増えるでしょう。何十年も問題を放置してきたのですから、ある意味必然です。P連は、各PTAの会長や役員さんたちが困ることがないよう、正しい情報共有やサポートを行えるとよいのですが。奈良市PTA連合会の例(下記リンク)を参考にしてもらえれば幸いです。

 なおこの件は、いじめの問題が発端であり、A氏は学校や関係者に対して脅迫を行っていたといいます。校長や教育委員会が問題を内部で抱え込まず、警察に相談するなど適切に対応していれば、PTAにまで問題を飛び火させずに済んだ可能性もあります。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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