「PTAは任意で加入する団体だ」ということが徐々に知られ、非加入を選択する人も増えてきました。でも「退会する」「入らない」と伝えると、PTA役員さんから「卒業祝い品をあげられない」など、子どもへの不利益を告げられてしまうことが、いまだにときどきあります。

 なかには「実費を払えば、同じ品をあげますよ」というPTAもあると聞きますが、この対応はアリなのでしょうか? PTAを退会する際、一度はこの案で合意したものの、のちに違和感を抱くようになったと話すDさん(都内在住)に、理由を聞かせてもらいました。(2021年2月取材)(前回/「PTA退会するなら子どもに不利益がある」と言われても負けない方法

*誰が非会員か把握できないはず

 2014年、長子が通う小学校のPTAを退会したDさん。当初、PTA側は「卒業記念品などPTA予算で購入して子どもたちに配布するものは、非会員の子どもには配れない」と言ってきましたが、その後「非会員が実費を払えば、同じものを配布する」という案で合意。Dさんも最初はこのやり方に納得していたのですが、実際にやってみると大きな違和感を抱き、「このやり方は、やはりおかしい」と思うようになったといいます。

 なぜなら、ひとつには、PTAは学校に通うすべての子どものための団体だからです。もし会員(家庭)限定サービスを行う団体なら、授業時間中に特定の教室(PTA室)を使うことや、お手紙の配布や回収を先生が代行することを、校長は認められないでしょう。もしPTAが子どもたちにモノを配るなら、保護者が会員か非会員かにかかわらず子ども全員に配るのがスジですし、それができないなら一切配らないのが妥当と考えられます。

 Dさんはこんなふうに話します。

 「卒業記念品に限らず、PTAという団体が子どもたちにプレゼントを配布して、その費用をPTA非会員の保護者に請求するのは、奇妙なことだと思っています。それはプレゼントではなく購入です。購入であれば、購入する気があるかどうか意思確認をしたうえで、希望者が購入するという形が一般的でしょう」

 さらに「非会員から実費を徴収する」というやり方は、個人情報の取り扱いの観点からも無理があります。もし学校やPTAが個人情報を正しく取り扱っていれば、すなわち学校がもつ情報をPTAで無断流用していなければ、PTAは会員の個人情報しかもたないはずです。つまり「誰が非会員かPTAは把握できない」ことになりますから、PTAが非会員から実費を徴収することは、事実上不可能なはずです。

 Dさんは考えた末、副校長に自分の考えを伝えることに。一度は実費請求を受け入れたので、実費は払いました。ただし、このとき「こういう理由で、本当はおかしいと思っています」と説明した手紙を、いっしょに渡したのです。なかなか変化しませんでしたが、副校長が替わるたびに同内容のお手紙を渡し続けてきたところ、3人目の副校長に替わった去年から、様子が変わってきました。

 「昨年(2020年)の春、3子が小学校に入ったのですが、2月現在まだ入学祝い品の請求は来ていません。もしかしたら忘れているだけかもしれませんけれど。ちなみに金額は160円くらいです」

 なお、Dさんは副校長に手紙を渡す際、「返事は要りません」と毎回書き添えているのですが、これには理由があるといいます。

 「納得したうえでやり方を改めてほしいからです。『うるさい保護者に言われたから、やります』じゃなくて、ちゃんと考えて『たしかに、そうだよな』と思って、変えてほしいので」

 さらに、中学校のPTAでも、いまのところ物品の実費請求はないということです。Dさんは昨春、長子が通う中学校の入学説明会の際、副校長に「PTAに入りません」と伝えたところ「今後PTAから物品を配布する際は、実費を請求する」と言われました。しかしここでも、なぜそのやり方を「おかしい」と思うか説明し、以下のように話したのです。

 「PTAが非会員への実費請求を合法的に行うのはたぶん不可能だと思うので、物品の購入費用の『出どころ』を変えたらどうですか、と提案しました。PTA予算ではなく、学校徴収金の『教材費』から出すことにすれば、PTA非会員からもお金を徴収できますよと。それから半年くらい待っても連絡が来なかったので問い合わせたところ、『出どころを変えたので大丈夫です』みたいなお話でした」

*登校班の編成にも個人情報が必要

 Dさんは、実費請求のことのほかにも、PTAや学校で「おかしい」と感じたことは、きちんと伝える努力を続けてきました。

 たとえば登校班。PTAが班を編成している学校では、学校(教育委員会)が入学前の保護者の個人情報を無断でPTAに渡していることがほとんどですが、このやり方は個人情報保護法令に反します。Dさんが指摘したところ、班編成はその後、学校がやるようになったということです。

 また、世話人になる保護者の負担を減らすため、小6の班長さんに時計をもてるようにすることや、世話人会議をなくすことなど提案したところ、どちらも採用されました。先生たちは、世話人がどんなことをして、どんな負担を負っているのか、ほとんど知らないようだった、とDさんは振り返ります。

 さらに給食試食会についても、PTAでなく学校が主体で行う行事であることを確認。それまではずっと、PTAの名前で発行されていた給食試食会の案内の手紙を、学校名で発行するように変更してもらいました。

 「給食試食会って、本当にPTAの行事なのかな? と疑問だったんです。もちろん、参加者の募集やお金(参加費)の集計管理、当日の準備など、全部PTAがやっているということは知っていますが、学校給食の調理員さんは、公費で雇われていますよね。その人たちの勤務時間内に、PTAという別団体のために働いてもらっていいのかな、と思って。

 副校長先生にも『確かにそうですね』と言ってもらいました。給食の調理員さんたちは外部委託ですが、委託内容に給食試食会のことも入っているそうで、それなら給食試食会も学校が主体でやっている行事だということになる。なので次回からは、案内の手紙を学校から出してもらうことになったのですが、今年度はコロナで試食会がなくなってしまって。来年度以降どうなるかな、というところです」

 7年前、PTAを退会するだけでも何度も話し合いを求められて、苦労をしたDさん。当時と比べると「時代の流れがちょっと変わってきている」と感じるといいます。

*おかしなルールに声をあげることは大事

 Dさんのように「おかしい」と感じたことを一つひとつ学校に伝えるのは、とても手間がかかることです。黙って受け流すほうが本当はラクなのに、なぜ敢えてそれを続けるのか? 尋ねると、こんな答えが返ってきました。

 「たぶん私、学校を信頼しているんだと思います。言いたいことを言ってもちゃんと相手は聞いてくれるはずだ、と思っているから。だから、本当はこんなめんどくさいことはやりたくないけれど、労力と精神力を使ってやっている。『言っても仕方がない』と思っている人のほうが、本当は学校を信頼していないと思うんです。それって学校は見捨てられているようなもので、そのほうが悲しいことだと思うんですけれど」

 いわれてみると、そうかもしれません。筆者もPTA以外のことは「おかしい」と思っても飲み込みがちですが、それは学校に期待しないからであって、失礼なこととも考えられます。

 「PTAの話も、おかしな校則の話も、全部同じような気がするんです。学校では、ルールのほうが間違っていても『決まったことだから、守るのが正しい』ということになりやすい。でも、ルールってそもそも何のためにあるのかといったら、みんなが幸せに過ごせるための約束事なわけですよね。それでもし多くの人が不幸になるのだとしたら、それはもう意味がないでしょう。

 だから、みんなでルールをきちんと考えたい。与えられたルールじゃなくて、われわれが作ったルールだから守っていこうよ、という学校、社会であってほしい。声をあげれば誰かが聞いて受け止めてくれるって、子どもたちが感じて成長してほしい。だからPTAでも校則でも、おかしなルールがあったら声をあげることはとても大事。そんな思いでやっています」

 なお、DさんはずっとPTA非会員を続けていますが、「PTAがなくなってほしいとは特に思わない」と話します。

 「保護者のなんらかの団体みたいなものは、むしろあったほうがいいんじゃないかなって思います。学校と保護者が疑問や不満、希望など、思っていることを本音で話し合うことは必要だと思うので。でも、いまのPTAにそれはできないと思うんです。学校との間に、お互いに言いたいことを言い合える信頼関係があるなら、保護者の団体があることでいい方向に行く気がするけれど、お互いが忖度して、表面的な同調だけしているような関係だったら意味がない。それでどうやって学校をよくしていくの、って感じます。

 だからまずはお互いに思っていることや困っていること、本当のことを言おうよ、って思います。そこからがスタートですよね」

 保護者と学校にとって必要なものは何なのか、という根っこから、私たちは考える必要がありそうです。