「PTA退会するなら子どもに不利益がある」と言われても負けない方法

朗らかに取材に答えてくれたDさん。写真はイメージです(写真:Paylessimages/イメージマート)

 PTAは「任意で加入する団体」であると同時に、「学校に通うすべての子どものために活動する団体」です。でも多くのPTAは長い間、自動加入で保護者全員を会員にしてきたため「互助会」のように誤解されており、「入らない」というと、子どもへの不利益を提示されることがたまにあります。そんなときはどうしたらいいのでしょうか。

 今回登場するDさん(都内在住・4子の母)は、7年前にPTAを退会しました。現在も、長子が通う中学校のPTAと、下の子たちが通う小学校のPTAで、どちらも非加入です。当時はまだ非加入という選択をする人が大変少なかったこともあり、Dさんが退会を告げると、PTAや学校から話し合いを求められ、またPTA会長からは子どもへの不利益を告げられたといいます。Dさんはどんなふうに対応したのか、教えてもらいました。

 最近はPTAに入らない人も増えており、子どもへの不利益などなく、あっさり退会できることが多いのですが(本来それが当たり前なのですが)、地域や学校によってはまだ、PTAが子どもへの不利益を掲げて話がこじれることがあります。そういったケースの一例として、参考にしてもらえれば幸いです。(2021年2月取材)

*疑問がふくらみ、退会を考えるように

 DさんがPTAを退会したのは2014年、長子が小学校に入った年でした。DさんははじめPTA活動に希望をもっていました。保育園の保護者会の活動がとても楽しかったので、PTAも同様だろうと思っていたからです。当時、3子が産まれたばかりで育休中だったDさんは、ベルマーク係をやることにしました。これなら家でもできるかもしれないと思ったからです。

 でもベルマーク係の活動は、想像とはずいぶん違っていました。1年間に必ず6回、平日日中の集まりに参加せねばならず、休む場合は必ず代理を立てなければならない決まりだったのです。妊娠中の保護者に対し、委員長が出産翌月からの参加を強く求めたり、活動を欠席するシングルファザーが陰口を叩かれたりするのを見たDさんは、「家で集計してもよいのでは?」と提案しましたが、まったく取り合ってもらえませんでした。

 登校班のやり方にも賛同しかねました。Dさんの登校班では、保護者が「子ども1人につき必ず1回、登校班の世話人になる」というルールがあったのですが、世話人になると、毎朝登校班の集合場所に行き、子どもたちを見送らねばなりません。Dさんの仕事は出勤時間が早く、育休が明けたら世話人をできなくなるため「今年度の人と交替させてもらえないか」と頼んでみましたが、これもちっとも取り合ってもらえず。

 そんなことがいくつも重なり、PTAへの疑問を深めていったDさんは、ネットで「PTAが実は任意加入の団体である」ことを知り、退会を考えるようになります。

 準備には時間をかけました。当時、PTAをやめる人は今よりずっと少なく、退会を伝えれば学校やPTAが話し合いで退会を止めようとすることが多かったからです。Dさんはネットや新聞記事、書籍、論文を読んで正しい知識を身に着け、さらに教育委員会にも電話をかけ、PTAが任意加入団体であることを認識しているか確認したそう。

 でもまだ不安もありました。もしかしたらPTAを退会することで、子どもに何か不利益が及ぶのではないか? Dさんの背中を押してくれたのは夫でした。夫もDさんの話を聞き、退会に賛成していたのです。長子にも親の考えを伝えたところ「いいよ」との返事。Dさんはついに決心したのでした。

*一度は話し合いに応じ、交渉を続行

 退会を伝えたのは夏休み直前でした。校長、副校長、PTA会長宛てに3通の退会届を用意して、校長宛てに郵送したのです。「文書かメールで返事がほしい」と添えましたが、予想通り副校長から電話がきて、話し合いを求められました。本来、任意加入の団体を退会するのに話し合いは不要なはずですが、Dさんは夫とともに、一度は応じることに。

 話し合いの際、退会は受け入れられたものの、PTA会長は「非加入者の子どもには不利益が及ぶ」ことを主張しました。親がPTAを退会すれば、子どもは登校班に入れなくなるし、PTAが配布する記念品ももらえなくなる、というのです。

 最近は「PTAは学校に通うすべての子どものために活動する団体であり、保護者が会員か非会員かにかかわらず、区別なく扱う」という原則がだいぶ浸透して、非会員家庭の子どもへの不利益を掲げるPTAはかなり減ったのですが、当時はまだ「PTA=会員向けサービスをする互助会」と思っている人が少なくなかったのです。

 Dさんと夫は、PTAの原則や、自分たちの考えを丁寧に説明しましたが、この日の話し合いでは折り合えませんでした。

 結論が出たのは8月末~9月でした。登校班については、校長からメールで「これまでどおりに参加してください」と連絡が。またPTAが配布する記念品は「非会員が実費を払う前提で、子どもに同じものを渡す」という案で合意することに。ただ、この「実費払い」については、一度はDさんも納得したものの、あとから違和感を覚えるようになったと言います(この点については後編で詳しく書きます)。

 PTAを退会しても、子どもには何ら影響はありませんでしたし、Dさん自身も、周囲から悪く言われたりはしませんでした。Dさんはフルタイム勤務で、ほかの保護者と顔を合わせる機会がもともと少なく、またPTAを退会していることをわざわざみんなに話していないので、親しい保護者以外は知らない可能性もあるといいます。

 なお退会した当時、登校班の編成はPTAが行っていたのですが、今では学校が行うようになっています(詳細は後編参照)。現在小学校に通う2子と3子も、親がPTAの非会員であることについてまったく気にしていないようです。

*PTAや学校とやりとりする際のポイント

 意外なこともありました。DさんがPTAを退会した翌年度、PTAで「入会届」と「退会届」が整備されたうえ、会則に入退会の規定が加えられたのです。Dさんは「任意加入の団体なのに入会の意思確認をしないのはおかしい」と伝えてはいたものの、そこまで実現することは期待していなかったので、とても驚いたといいます。おそらく校長が整備してくれたのだろうとDさんは話します。

 Dさんと学校・PTAとのやりとりには、いくつかのポイントがあったように思います。たとえば、やりとりの記録を残しつつ且つ双方の時間を有効に使うため、直接の話し合いよりも文書やメールでの意見交換を優先した点。期限を切って回答を求めた点、等々。

 退会届を校長宛てに送った点も大きいでしょう。そもそも保護者をPTAに自動入会させるのは校長ですから(学校がもつ保護者の個人情報を他団体であるPTAに提供)、同じ保護者である退会者と会長や役員さんが敵対する必要はないのです。

 もうひとつ大事なのは、Dさんが誰も責めなかった点です。PTAが非会員の子どもへの不利益を掲げるのは正しくないやり方ですが、これを止めるべきは校長です。Dさんは「会長や役員さんは素人なのだから、急に退会と言われてもどう対応すればいいかわからないのは仕方がないと思った」と話します。

 なお、Dさんは話し合いのとき、自分で議事録もつくっていました。あらかじめ全員の了承を取って録音を残し、後で議事録(要点のみ)を作って全員で共有、確認したのです。Dさんは仕事上の経験から、公務員との話し合いは「話を聞いておしまいにされやすい」と感じていたため、解決したいポイントをはっきり相手に示すことが目的でした。それに議事録が残っていれば、のちに校長や副校長、PTA会長が交替しても「こういう経緯があった」と示せるので安心だと考えたのです。

*「校長に意見する」という精神面のハードル

 その後も小・中学校のPTAで非加入を選択してきたDさんに、「これまでで何が一番大変だったか?」と尋ねると、「それほど大変だったわけではないけれど」と振り返りつつも、こんなふうに話してくれました。

 「退会や非加入を実行するとき、一番大変なのは、精神的な面じゃないかと思うんです。『学校の校長の意向に反するようなことを言う』という心理的なハードルです。私たちは『目上の人には反論すべきではない』とか『先生の言うことには従ったほうがいい』といった価値観のなかで育っているし、子どもを学校に通わせている立場なので、『子どもがどう扱われるかわからない』という不安もある。さらに『周りの友達(保護者)がどう考えるかな』といった心配もあります。

 私は(退会の)事前準備に時間を使いましたが、最近は非加入の人が増えたので、必要な情報はネットなどで比較的簡単に見つかります。だからその辺のハードルはだいぶ低くなったと思うんですが、心理的なハードルはまだまだ残っているんじゃないのかな。一度退会を経験していると、二度目以降はほぼ、ハードルはなくなるんですけれど」

 DさんはSNSのプロフィールに、こう書いています。「言いたいことは言おう。空気読めてても、腹に力を込め、あえて読まない勇気は大事。沈黙は追認と同じだから」と。大切なことではないでしょうか。筆者もよく、彼女のこの言葉に励まされています。

 後編は、PTAが配る記念品を「実費払い」で受け取ることについて、Dさんがなぜ違和感を覚えるようになったかなど、詳しくお伝えします。

(続く)