教育虐待をしないために、親に心がけてほしいこと

(写真:アフロ)

連日のように教育虐待についての取材を受けています。必ず聞かれるのが「どうやったら防げるのでしょうか?」。でも、教育虐待は、そもそも社会の構造的な問題から生じるもの。また、根本的には人権問題。そう簡単になくせるものではありません。もちろん質問するほうも、事はそんなに単純じゃないと百も承知です。それでもなんらかの手がかりがほしいのでしょう。

そこで、「これで教育虐待がなくせる」とは断言はとてもできないのですが、教育虐待を起こさないために親としていますぐできる心がけを、私なりに整理してみました。これらを意識化するだけでもだいぶ違うのではないかと思います。

(1)子供の勉強を見ていて感情が高まりすぎてしまったら「自分は溺れているのだ」と思う。口を閉じ、手足を落ち着かせる。それができないなら勉強を見ないこと。

(2)子供の「元気」を見る。元気がないときは、ストレスのせいで心が流血し続けている状態。心がリラックスして回復する時間が必要。しっかり寝る・食べるは大前提。

(3)ふがいなさも含めていまのわが子のすべてを愛す。親がありのままの自分を認めてくれているという安心感があるときにこそ、子供は最高のパフォーマンスを発揮する。

(3)について補足します。子供のできないところを指摘してプレッシャーをかければ一時的にパフォーマンスが上がったように見えることはあります。しかしそれは見せかけのパフォーマンス。それを続けると、プレッシャーを与え続けなければパフォーマンスを発揮できないひとになってしまいます。しかも、ゴールにたどり着く前に力尽きてしまいます。

そもそも子供の学力は親によって伸ばされるのではなく、自ら伸びていくものです。そのタイミングがひとによって早い遅いがあるだけです。早ければラッキー。遅いからといって親が焦って口や手を出したところで余計に悪循環になる。それがその子の現時点での実力だと認めて、励ましてやることが親として最も賢明な態度です。

仮にタイミングが遅れて第一志望校合格を逃したとしても、結果的に進むことになった学校に堂々と通えていれば、長い人生においては何の問題にもなりません。でも中学受験勉強で無理をさせすぎてしまうと、子供の心にそう簡単には消えない深い傷をつくってしまいます。そのほうがよほど人生に悪い影響を与え続けます。

前提として、以下の3つが重なると、教育虐待のリスクは飛躍的に高まります。

(1)子供(成長)ではなく、目標(結果)ばかりを見てしまう。

(2)「正解」を信じて迷いなくやってしまう。

(3)子供の出来は親次第だと思い込まされている。

思い当たる節があれば注意しましょう。具体的な対策については拙著『中学受験「必笑法」』をご覧ください。中学受験をテーマに書いていますが、特に第4章は高校受験にも大学受験にも当てはまる話です。

ただし、受験生を抱えていたりするとつい感情的になってしまったり、言うべきでないひどい言葉をかけてしまったりということは誰でもあります。そこで「あ、やっちゃった!」「悪いことをしてしまった」と思って次から改善できるのなら深刻な教育虐待には至りません。過度に神経質になるのもよくありません。とにかく肩の力を抜いて、親が健全な心の状態でいることです。

親として自分の心が健全な状態にあるかどうかのチェックとして、以下の4点を、自分自身の胸に手を当てて問いかけてみてください。数々の壮絶な教育虐待事例に直接関わってきた子どもシェルターの運営者からのアドバイスです。

(1)子供は自分とは別の人間だと思えていますか?

(2)子供の人生は子供が選択するものだと認められていますか?

(3)子供の人生を自分の人生と重ね合わせていないですか?

(4)子供のこと以外の自分の人生ももっていますか?

より具体的に意味を知りたいというひとは拙著『ルポ教育虐待』をご覧ください。逆説的ですが、この4点に「はい」と即答できてしまうようなら、ちょっと気をつけてください。そんなに簡単なことではありませんから、本来なら「大丈夫かな?」とちょっとくらいは不安になるはずです。その迷いがないというのは、「自分は正しい」という思い込みが強いのかもしれません。それは教育虐待の闇に引きずり込まれる初期設定ですから気をつけてください。

家族まで「何が何でも第一志望」みたいに「必勝」の気持ちで受験にのぞむと危険です。受験に必勝なんてありませんから。その代わり、どうやったら家族が笑っていられるか、どうやったら結果に関わりなく笑顔で受験を終えられるかをイメージする「必笑」の精神で受験に取り組んでください。受験に「必勝法」はありませんが、「必笑法」ならあります。