2021年の秋は、自民党総裁選に衆院選と政治日程が目白押し。様々な場面で政治関連のニュースを目にすることも多くなってきました。自民党総裁選は党員・党友にしか投票権はありませんが、衆院選は2019年参院選以降となる国政選挙で、多くの有権者が関心を持つところです。

 今回は、今夏に『25歳からの国会: 武器としての議会政治入門』を出版された政治ライター・平河エリさんにインタビューをし、総裁選や衆院選を前にして、有権者ひとりひとりがどのように政治に向き合い、また政治に参加すべきかをトークしました。(インタビューは2021年8月後半に行っています)

(「政治ライター・平河エリさんに聞く、今からでも間に合う「政治参加」とは(上)」から続く)

政治の「妥協」は必要なもの

写真:つのだよしお/アフロ

大濱﨑卓真(以下、大濱﨑): もうあと1カ月ぐらいで、衆議院議員選挙がやってくるんですけれども、ニュートラルな目線で、フラットに政治を見てきている平河さんにとっての見どころというかを是非伺いたいと思います。

平河エリさん(以下、平河): 個人的には、今、政府がやってしまった問題とか、人権上問題のある発言とかっていうところが、結構なおざりにされたまま、どんどん物事が進んでいって選挙になるのかという印象です。政権としては、とはいえオリンピックで盛り上がってわーっとやって選挙に突入するっていうところは、一つのもくろみだったと思うんですが、それは崩れてしまった。

あと世論についても、政権与党側の、今、コントロールがあまり利いてない状態なのかなというふうに思っています。逆に言うと、政権からコントロールしづらい状態ってことは、人々の意識によって結果もひっくり返るというか、相当変動する情勢にあるのかなと。逆に今、確定的なことは言えない中で、皆さん一人一人がいろいろ考えて投票行動して、周りの人と話し合ってやることで、割と大きく動く可能性のある選挙じゃないかなと、僕自身は思っています。

様々な予想とか報道とかもありますし、とはいっても、「自民党強いよね」みたいな意見がある中ですが、実は思っているよりも今の自民党って結構大変な選挙区も多いし、機能してない組織も多いので、いろんな結果が考えられる選挙なのかなと。

あとは野党共闘など野党間の連携がこの数年間ずっとポイントになってきましたが、連携とか一本化って、よく「妥協」のようにネガティブに捉えられがちなところもあると思うんですけど、政策のいいところをお互いすりあわせて妥協するっていうことは、実は政治にとって非常に重要なことだと思います。お互い突っ張って好きなことだけ言って、それで政治ができるかっていうと、僕はそうでもなくて、お互いのぎりぎりのラインまで見極めて、妥協して、妥協できるポイントを探して、最大公約数を探すっていうことは、一番政治において重要っていうか、妥協の美学みたいなところが政治にあると思っています。そういった経緯も見ながら、どういう構図で選挙が行われるかを注視して見ていくと面白いのかなと。

大濱﨑: 自民党のコロナ対策もオリンピックも、不満が高まって、それが支持率の低下にもつながっていますと。で、それが今回大きく選挙が結果として変わってくるかもっていうのも、つながってくると思うんですけど。一方で、選挙っていうのは、どっちかが勝つゼロサムゲームなわけですから、与党が負けるということは基本、野党が勝つということだと思うんですよね。

ただ、立憲民主党とかの支持率が急激に伸びている傾向はないですし、特に若い世代に関して、不満が高まっているけれども、投票に行って野党に入れるかっていうと、政治に対して諦めてしまうというか、その結果白票だったり、もしくは行かないってことも考えられますよね。

政治は「ベストを探すよりワーストを避ける」

平河: そうだと思います。政治って理想というより、ベストを探すというよりはワーストを避けるっていうところが大きいと思うんですよね。だから、どうしても我慢できないとこはどこなのかっていうところを考えるべきなのかなと思って。人によってはどうしても我慢できないっていうところは、共産党と一緒にやるっていうところはどうしても我慢できない人もいると思う。

それは全然一つの主張だと思いますし、人によっては、例えば、女性に対して差別的なことを言う人は許せないっていう人もいるかもしれないし、人によってはあんまり高齢過ぎる候補っていうのは嫌だっていうところとか、こういう思想を持ってる人は嫌だとか、いろいろ主張はあると思うんですよね。

だからどうしても許せないところを持っている人からまず取り除いていって、そこから選んでいく。何か基準を、ざっくりでもいいから一つ決めて、そこから、若い人がいいとか、女性がいいとか、何か経験がある人がいいとか、地元の出身の人がいいとか、何か基準を決めてやるっていうのが個人的にはいいのかなと思います。

そんなにスーパーマンが政治家でいるかって、一人の人間ですからね。もちろん、皆さん、それはそれなりにきらきらした経歴を持っているので、そんなにひどい人がいっぱいいるわけではないんですけど。とはいえ、万能の人がいるわけではないんで、下手に、一人の人間が、スーパーマンがいて、その人が全部ひっくり返してくれるみたいな幻想を持つよりは、ちょっとでもましなものを選んでいこうっていう。

大濱﨑: ベストを探すのではなくてワーストを避けるっていうのは、すごく今しっくりきました。私も今こういう選挙コンサルタントという仕事をしていても、身近な人から、選挙で誰に入れたらいいか分からないと結構聞かれるんですよ。そのときに、例えばボートマッチングのサービスがあったりだとか、様々なやり方があると思うんですけども、でも自分にとってそれがベストかって、やっぱ国会議員に求める期待度ってすごく高いじゃないですか。100点満点というか120点満点というか、神々しいまでの国会議員なるべきだっていう、そういう理想と、今まさにおっしゃった現実との乖離(かいり)がとてつもなく激しい職業だと思うんですよね。

プロ野球だったら2軍に落とせばいいけど、別にそういう2軍とかがあるわけでもないから。だから、ワーストを避けるっていう考え方はすごくいいなと。要は、平河さんの仰っている話は、一つ何かイシューを決めてっていうのは、例えば自分は、では、じゃあ夫婦別姓に関してはすごく譲れないんだとか、コロナ対策に関しては譲れないんだって、そういうイシューを決めて、それでワーストから切っていって、ある種、消去法ですよね。それで決めていくのも一つのやり方だということですよね。

女性政治家がもっと増えるべき

写真:アフロ

平河: 後は、私がもし一つだけ軸を聞かれて、個人的に答えるんだったら、私は女性候補に入れたほうがいいんじゃないっていうふうには言っています。

大濱﨑:女性候補ですか。

平河: はい。日本は女性の議員が圧倒的に少ないですし、大体衆議院だと10%ぐらいの比率なわけじゃないですか。私は、立法府の代表って本来男女同数であるべきだし、同数に近いぐらいの数字になる必要があると思っています。

そういう意味では、一つの基準として、私がもし提案するのであれば、女性候補に入れるっていうのはポイントなのかなと、個人的には思ってはいます。私の個人の基準としてはそういうところが重要かなと。

大濱﨑: 女性候補のところ、候補として出てればいいんですけれども、出てない小選挙区のほうがむしろ多いじゃないですか。これは仕事していて、女性候補を、出馬するところの難度って高いなっていう印象があります。根本的に、欧米諸国とかと比べて、あまりにも低い水準が続く状態っていうのも、産休・育休の制度を作るとかあると思うんですけど、僕は根本的には変わらないと思っていて。もうちょっと、根本的に変える方法って何かないですかね。

平河: メキシコとかだと、制度として、ちゃんと男女同数を政党に義務づけるっていう法律を作ったところ、8%くらいだったのが飛躍的に伸びて、もう男女同数近くまで来ている(2021年で48.4%)んですよ。やはり不均衡は制度によって変えられると思いますし、自然に変わらないことというのは、結局制度を作らないと駄目なんです。本来制度を作るのは政治とか政党なわけで、そういうクオータ制も含めて、男女同数に対して積極的な政党をまずは選んで、そこからその法律を作るってことをやってかないと、この問題はなかなか変わらないのかなと思っています。

大濱﨑: そうですよね。だからクオータ制度作るのも結局法律なのだから、国会議員なのだから、ある種ニワトリと卵みたいな話になってくるんだけれども。結局、じゃあクオータ制度に賛成する国会議員が、仮に男性でもいれば、それが国会議員になって、クオータ制度通せば、次は女性候補がおのずと出てくるって、そういうことですよね。他にはなにかありますか。

選挙予想という関わり方だって面白い

『あたらしい憲法のはなし』挿絵
『あたらしい憲法のはなし』挿絵提供:アフロ

平河: 選挙は予想してみるととても面白いので、これは大濱﨑さんのご専門でもあるのでしょうけれど、選挙予想をしだすと、楽しいからおすすめですよっていうのは。特に若い方とか、結構若い方で選挙予想する人とか、ネットでも増えてきているので、よかったら皆さんも考えてみると面白いかもしれないですねっていう。

 統計に近いところもあるので、ゲームとか、変な話、そういう予想のギャンブルとかに近いものがあって。もちろんお金は賭けないわけですけど、予想して当たったときって、結構楽しかったりはするので。ちょっとどっちが勝つとか考えてみるとかだけでも、割と面白いかなと思います。

大濱﨑: 若い人と話をしていると、自分が入れた候補者が受かったら自分の政治的なセンスが正しくて、自分が入れた候補者が落っこちたら自分の政治的センスがないから、恥ずかしくて口外できないとか、そういうバイアスがあるじゃないですか。だから受かりそうな候補者に入れるっていうバンドワゴン効果は、若い世代に強く出てくる効果があって。そこを狙って、最近、情勢調査の数字が聞こえてきたり怪文書が回ったりだとかするわけですけれど。そうすると、こういった情勢調査の数字や怪文書も、ある種の、極端な言い方をすれば、「陰謀論」とか「デマ」といった類いの一つじゃないですか。そこの影響を受けないための、ある種、予防的なものって何でしょうかね。

平河: 難しいですよね。私は正直、勝ちそうな候補に入れるっていう考え方がよく分からなくて、その世代の感覚っていうのは。大勢に属していたいって気持ちが強くても、何が大勢なのか分からないっていうところが、日本の中で迷いの原因になっているのかなと思うんですよね。

一昔前であれば、確かに安倍さんって強い首相だったと思うし、支持率も比較的高かったと思うんですが、今、じゃあ菅さんって、国民一般のところで、大勢が支持している総理かっていうと、そうでもないわけじゃないですか。さりとて、枝野さんが大勢かっていうと、別にそういうわけでもないし、じゃあ公明、共産もそうでもないと。だから大勢に属すってなると、やっぱ政治的無関心っていうところが大勢になってしまうっていうわけで。そのジレンマっていうか、矛盾はあるのかなっていう気はしています。ただ、本来、いろんな情報含めて考えて投票するっていうところは必要なので、規制どうこうっていうよりは、やっぱり主権者教育として。だからうまく国会の仕組みとか選挙の仕組みを伝えるっていう役割の人が、もっと増えることが大事なのかなとは思います。

大濱﨑: なるほど。そういう意味では、やっぱり平河さんの出された本は重要ですよね。例えば与野党が衝突しがちな国会の会期制度の話も、何で会期末の不信任案提出やら延会動議やらといった様々な手続きをやらなきゃいけないのかって、僕らからしたらただの恒例行事なんですが…。僕、この本がほんとにいいなって思って、今回インタビューをお願いさせてもらったのは、似たような本ってある気がしたけど全くなかった。時事問題を扱ってる本というのは幾らでもあるんですが。だけど、時事問題じゃなくって、極端な話、10年後でも20年後でも、大きな国会法の改正とか憲法とか変わんない限り、基本的な構造はこのままじゃないですか。議会制民主主義を取っているっていう大前提が変わんない限りは、細かいことを除いてはほとんど変わらないですよね。だからそういう意味では、ほんとに政治経済の授業とかでも、副読本になるんじゃないかなと。表面上はこうですよっていうところは教科書で知れますが、資料集も別に体系的にはなってなくて、つまみ食いだけの話なんで。その間の本としてすごくいいなと思いました。これから先もこういった本を書かれるんですか。

平河: 書きたいなと思うテーマは幾つかあるんですけど、1冊書くのに2年ぐらいかかって疲れたので、少し休んで、また話があれば考えようかなと。私の書いたものを通して、実際の生の政治の情報に触れるきっかけになればいいかなと思いますので、よろしければ読んで頂けるとうれしいなと思います。

大濱﨑: ありがとうございました。

平河: ありがとうございました。

平河エリ氏プロフィール

ポリティカル・ライター。1990年京都市生まれ。早稲田大学卒業後、外資系IT企業にて勤務し、その後コンサルタントとして独立。議会政治、選挙などを専門分野に活動。朝日新聞、講談社、扶桑社、サイゾーなど各社媒体で執筆。著書に『25歳からの国会: 武器としての議会政治入門』(現代書館)