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コロナ不況、田舎の町も深刻です もしかしたら地域経済に最後の一撃かも

大野和興ジャーナリスト(農業・食料問題)、日刊ベリタ編集長

 コロナ不況は東京の繁華街だけの話ではない。ぼくの住む地方小都市や田舎町も深刻だ。市内に2軒だけ残った銭湯や近くの日帰り温泉に浸かっていると、そんな話ばかりが耳に入ってくる。このまま4月に入ったら店じまいが続出しそうな気配だ。以下、街中スケッチーー。(大野和興)

 ぼくが住む秩父は首都圏の北西の外れに位置する山間地だが、近年観光で売り出している。東京から2時間あれば十分ということで幅広い年代層にうけている。その観光客がばったり途絶えた。

 いまどきの秩父の観光の目玉はイチゴ狩り。おいしいと評判で首都圏から大勢来てくれる。例年だと予約しなければ入場できないほどなのに今年はキャンセルが続出。秩父圏で最大のいちご園は4000件から5000件のキャンセルとなった。大きな農園とはいえ,もともと地元農家が経営していて、地元の人を雇用、地域の経済に大きな貢献をしている。だから、お客さんが来てくれないとイチゴ園だけでなく地域経済そのものが打撃を受ける。

 秩父の冬のもうひとつの観光目玉は氷柱(巨大つらら)だが、暖冬で今年は凍結せず、早々の店じまいした。これにコロナがかぶさり、二重のダメージを受けている。

また菜の花が咲くころから、秩父札所を訪ねる巡礼さんが秩父路を訪れる。菜の花、梅、桃、桜そして新緑、夏の濃い緑、モミジと続く秩父の豊かな自然の中を白い装束に身を包み巡礼道を歩くお遍路さんが、今年、さっぱり姿を見せない。旅館も食堂もお土産屋さんも閑古鳥が鳴いている。西武秩父駅前の食堂のご主人にお聞きすると、平日がダメなだけでなく、土日にお客さんが来ないと話していた。

 打撃を受けているのは地元の業者さんだけではない。全国チェーンのファミレス2軒に聞いてみた。お客さんは3分の1に減ったという。「チェーン店だからやっているけど、地元の個人商店は持たないでしょうね」と古参のスタッフが教えてくれた。

 地域経済はおカネがまわることで持続している。その回転が止まってしまったのだ。グローバル化の中で地域経済は全国どこも疲弊してきていた。秩父のような小地方都市は外国人を含む観光客を受け入れることでなんとか命脈を保ってきていた。コロナがその流れを断ち切った。おまけに地域経済の基底を支える農業は滅ぶ寸前にある。コロナ不況がそんな地域経済に最後の一撃とならなければいいが、とつい思ってしまう。

ジャーナリスト(農業・食料問題)、日刊ベリタ編集長

1940年、愛媛県生まれ。四国山地のまっただ中で育ち、村歩きを仕事として日本とアジアの村を歩く。村の視座からの発信を心掛けてきた。著書に『農と食の政治経済学』(緑風出版)、『百姓の義ームラを守る・ムラを超える』(社会評論社)、『日本の農業を考える』(岩波書店)、『食大乱の時代』(七つ森書館)、『百姓が時代を創る』(七つ森書館)『農と食の戦後史ー敗戦からポスト・コロナまで』(緑風出版)ほか多数。ドキュメンタリー映像監督作品『出稼ぎの時代から』。独立系ニュースサイト日刊ベリタ編集長、NPO法人日本消費消費者連盟顧問 国際有機農業映画祭運営委員会。

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