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イランがイスラエルに大規模ミサイル報復攻撃

JSF軍事/生き物ライター
イスラエルを攻撃するイランの弾道ミサイル。2024年4月14日、エルサレム(写真:ロイター/アフロ)

 4月14日、イランがイスラエルに対して数百発のミサイルとドローンによる攻撃を実施しました。これは4月1日にシリアのイラン大使館領事部がイスラエルによって攻撃され将官7人が死亡したことへの報復だと、イラン側から声明が出ています。

イスラエル軍報道官ダニエル・ハガリ少将の初期説明

  • イランが数十発の弾道ミサイルを発射し南部の軍事基地に軽微な損害
  • アロー防空システムによって弾道ミサイルの撃墜に成功
  • 戦闘機で数十発の巡航ミサイルと数十機のドローンを撃墜
  • 戦略的パートナー諸国と協力してほとんどをイスラエル領空外で撃墜
  • 飛来数は少なくとも200以上

追加説明:331発が飛来 出典:ニューヨークタイムズ

  • 185発:ドローン
  • 110発:地対地ミサイル ※弾道ミサイルを指すと思われる
  • 36発:巡航ミサイル

 巡航ミサイルとドローンに対しては戦闘機を進出させてイスラエル領空外で迎撃し、弾道ミサイルに対してはアロー防空システムを用いて迎撃しています。なおこの結果、隣国のヨルダンに撃墜した弾道ミサイルの残骸が降ってくるなどしています。

 イスラエル軍報道官が説明している通り、弾道ミサイル迎撃はアロー防空システム(アロー2およびアロー3)によって行われています。言及はありませんがパトリオット防空システムも弾道ミサイル迎撃戦に参加していた可能性はあります。

 しかし有名なアイアンドーム防空システムは対ロケット弾迎撃用であり、弾道ミサイルは迎撃できません。ですがアイアンドームがあまりに有名なので今回の弾道ミサイル迎撃に使われたと一部で誤解されていますが、能力的に不可能です。

 なお迎撃戦にはアメリカ軍も参加しています。地中海に展開しているアメリカ海軍の2隻のイージス艦が弾道ミサイルを撃墜しており、SM-3ないしSM-6迎撃ミサイルが使われた可能性があります。またアメリカ空軍の戦闘機が巡航ミサイルとドローンを撃墜しています。

イスラエル軍の主な防空システムと対応範囲

  • アロー3:弾道ミサイル対応 ※大気圏外
  • アロー2:弾道ミサイル対応
  • ダビデ・スリング:ドローン、巡航ミサイル、ロケット弾対応
  • アイアンドーム:ドローン、巡航ミサイル、ロケット弾対応
  • パトリオット:ドローン、巡航ミサイル、弾道ミサイル対応

※イランからイスラエルまでの距離は最短で約1000km、弾道ミサイルの射程は運用上の余裕を見て1500km前後(準中距離弾道ミサイル級)が必要。これを迎撃できるイスラエル軍の兵器はアローないしパトリオットのみ。

※ダビデ・スリングは射程300kmの短距離弾道ミサイルまでなら対応可能、パトリオットはロケット弾も対応可能だが迎撃弾が高価すぎるので安いロケット弾相手には投入されない。

※ヘブライ語名称はそれぞれ、ヘッツ(アロー)、ケラ・ダビデ(ダビデ・スリング)、キパットバルゼル(アイアンドーム)、ヤハロム(パトリオット)。この中では輸入兵器のパトリオット=愛国者のみが違う意味の言葉のヤハロム=ダイアモンドと命名。

2024年4月14日のイラン攻撃で弾道ミサイルが着弾する様子

弾道ミサイル大気圏内迎撃(アロー2ないしパトリオット)

  • 降下する光:弾道ミサイルの弾頭部分
  • 降下する光:弾道ミサイルのロケット部分
  • 上昇する光:迎撃ミサイルの噴射炎

 大気圏に再突入してきた弾道ミサイルが空力加熱で赤熱し光っています。弾頭部分以外の分離したロケット部分も一緒に落ちて来ているので、迎撃ミサイルはこれを無視して弾頭部分のみを狙いに行く必要があります。

弾道ミサイル大気圏外迎撃(アロー3あるいはSM-3)?

 確定ではありませんが、イスラエル軍のアロー3ないしアメリカ軍のSM-3による大気圏外迎撃らしき映像の報告があります。事実ならば実戦での大気圏外迎撃の命中の様子が初確認されたことになります。

関連記事:イスラエル軍のアロー3大気圏外迎撃ミサイルが実戦初投入、弾道ミサイル迎撃に成功(2023/11/10)

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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