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日本版幽霊艦隊計画:潜水避航を行う戦闘支援型多目的USV(無人水上艇)

JSF軍事/生き物ライター
戦闘支援型多目的USVの研究:令和5年度事前の事業評価:防衛省

 9月8日に防衛省から「令和5年度 事前の事業評価 評価書一覧」が発表されました。17種類の新兵器の開発研究の概要が掲載されています。その中に令和6年度概算要求で初めて登場した「戦闘支援型多目的USVの研究」もありました。(USV:Unmanned Surface Vehicle、無人水上艇)

達成すべき目標:戦闘支援型多目的USVの研究

ア 潜水航行技術の確立

USVが脅威の接近を探知し、潜水して回避し、潜航後、周囲情報から安全に浮上する技術を確立する。

イ 自動運航関連技術の確立

USVを洋上で自律航行、または陸上局(リモートブリッジ)から遠隔制御するとともに、荒天下での自動運航を実現するための船体動揺制御及び故障対応の技術を確立する。

ウ ミッションモジュール関連技術の確立

様々なミッションモジュールを搭載でき、遠隔制御により運用できる技術を確立する。

エ 複数USV連携技術の確立

複数隻のUSVを同時運用した際に、USV船隊(フリート)内で運航データを共有する技術を確立する。

出典:戦闘支援型多目的USVの研究:令和5年度事前の事業評価:防衛省

 潜水航行技術の確立という項目から、USV(無人水上艇)でありながら一時的に完全に潜航することが可能な形式であることが確定しました。「潜水避航型」と呼ばれる特殊なUSVになります。このような装備は世界にまだありません。自衛隊が潜水避航型USVに拘るのは、脅威レベルの高い戦闘海域で現状のUSVが生き残るにはそれしかないと考えているからでしょう。

 そして複数が連携して艦隊(Fleet)を組むと書かれています。アメリカ海軍では2018年から立ち上げた無人水上艇の計画を「ゴースト・フリート・オーバーロード(Ghost Fleet Overlord)」と名付けましたが、それの遥か先を見据えたような野心的な計画です。潜水が可能なUSVが艦隊を組んで、警戒監視だけでなく戦闘参加する・・・こんなことを自衛隊が研究するというのです。

戦闘支援型多目的USVの研究:令和5年度事前の事業評価:防衛省
戦闘支援型多目的USVの研究:令和5年度事前の事業評価:防衛省

◆当該事業を行う必要性

警戒監視や対艦ミサイル発射等の機能を選択的に搭載し、有人艦艇を支援するステルス性を有したUSVの基盤技術を獲得する必要がある。 

出典:戦闘支援型多目的USVの研究:令和5年度事前の事業評価:防衛省

 文章では「対艦ミサイル発射」とありますが解説図では魚雷を発射しています、なんと対潜水艦戦闘も可能とする計画のようです。これらの武装と光学センサー、レーダー、ソナーなどを施すとなると、かなりの大型のUSVとなるでしょう。

 そんな大型USVが潜水しながら最前線に投入されて警戒監視から戦闘まで行う、日本版幽霊艦隊計画は、他国がまだ何処も計画していない領域を目指して始動します。

関連記事:潜水避航型の戦闘支援型多目的USV(無人水上艇)を自衛隊が開発研究(2023年8月31日)

防衛省予算(令和6年度概算要求)より「戦闘支援型多目的USVの研究」
防衛省予算(令和6年度概算要求)より「戦闘支援型多目的USVの研究」

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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