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北朝鮮がKN23短距離弾道ミサイルを地下サイロから発射した可能性

JSF軍事/生き物ライター
北朝鮮・朝鮮中央通信より「核反撃仮想総合戦術訓練」

 3月20日、北朝鮮は前日19日に発射した短距離弾道ミサイルについて核反撃仮想総合戦術訓練を行ったと発表しました。短距離弾道ミサイルの核弾頭の空中起爆を模した訓練です。

平安北道鉄山郡で発射された戦術弾道ミサイルは、800km射程に設定された朝鮮東海上(日本海上)の目標上空800mで正確に空中爆発して、核戦闘部に組み立てられる核爆発制御装置と起爆装置の動作の信頼性が再度検証された。

出典:「核反撃仮想総合戦術訓練」:朝鮮中央通信(2023年3月20日)

※発射場所は平安北道鉄山郡東倉里にある西海衛星発射場と推定。

V字型の排炎、地下サイロからの発射?

 発射された短距離弾道ミサイルはKN-23(イスカンデル型)です。しかし発射機が見当たりません。そして噴射の排炎がV字型に放出されています。おそらく排炎筒が存在しています。つまり車両発射型ではなく、地下サイロからの発射の可能性があります。ただし今朝の公式発表文には地下サイロのことは何も言及がありません。

※KNナンバーはアメリカ軍の命名したコードネーム。

北朝鮮・朝鮮中央通信より「核反撃仮想総合戦術訓練」
北朝鮮・朝鮮中央通信より「核反撃仮想総合戦術訓練」

北朝鮮・朝鮮中央通信より「核反撃仮想総合戦術訓練」
北朝鮮・朝鮮中央通信より「核反撃仮想総合戦術訓練」

先制攻撃で潰されやすい固定施設の地下サイロ

 短距離弾道ミサイルを地下サイロから運用するのは問題が多い運用です。敵の攻撃圏内にある固定基地でミサイルを運用するということは、敵の先制攻撃で潰されてしまう可能性が高いからです。特に韓国軍は短距離弾道ミサイル「玄武2」を発展させた大重量弾頭貫通型「高威力玄武」を開発しています。

参考:韓国軍の新型兵器「高威力玄武弾道ミサイル」(2022年10月23日)

 弾頭重量8~9トンという、弾道ミサイル用としては破格の重量の貫通弾頭(バンカーバスター)を搭載した「高威力玄武」ならば、強固な地下サイロだろうと簡単に破壊してしまうでしょう。

 北朝鮮は韓国軍の新装備の存在を知っている筈です。またアメリカ軍の13.6トン超大型貫通爆弾「MOP」も有名な兵器です。これら貫通兵器に対抗できないのに、地下サイロで短距離弾道ミサイルを運用することが有り得るのでしょうか? 敵の攻撃が容易に届かない面積の大きい国の深奥部ならともかく、狭い北朝鮮の全土は米韓連合軍の即時攻撃圏内なのです。

 しかしV字型の排炎は車両搭載型ではないことは明らかです。鉄道搭載型でも確認されたことはないです。そして発表写真に車両や鉄道は映っておらず、山の中腹です。固定施設からの発射である可能性が高そうです。

※KN-23短距離弾道ミサイルの発射システム種類別

  • 装輪車両(タイヤ車両)
  • 装軌車両(クローラー車両)
  • 鉄道
  • 潜水艦
  • ダム湖
  • 地下サイロ
軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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