原子力推進核魚雷ポセイドンと海洋調査用無人潜水艇クラヴェシンの関係性

ロシア国防省から、原潜から発進するポセイドンのイメージ映像

 ロシア国防省が新兵器として公開した「核兵器が搭載可能で原子力推進機関を持つ無人潜水艇による海洋多目的システム:ポセイドン」について、発表された動画を見ると首をかしげるシーンがあります。

 大型原子力潜水艦に内蔵され水中で発進するスクリュー4基の無人潜水艇のCGが映ったと思ったら・・・

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 次のシーンでは何の説明も無く魚雷のCGが映っています。これは一体どういう事なのでしょうか?

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 先ずスクリュー4基の無人潜水艇は、ロシア科学アカデミー極東支部海洋技術問題研究所が開発した海洋調査用無人潜水艇「クラヴェシン」に非常によく似ています。形状からロシア軍にも納入される予定の改良型「クラヴェシン-2R-PM」そのものに見えます。しかしクラヴェシンはバッテリーを用いた電気駆動であり、原子力推進ではありません。

Клавесин-1Р : ИПМТ ДВО РАН

Клавесин-2Р-ПМ : MilitaryRussia.Ru

 クラヴェシンの特徴である4つの独立して可動するスクリューポッドは舵を兼ねる構造で、停止状態からでも繊細な機動を可能としますが、高速を発揮するには向いていません。高速性を最初から求められていない調査用潜水艇ならではの方式です。つまり低速しか発揮できず攻撃用途には全く向いていないのです。CGはあくまでイメージ映像であり、戦略核魚雷でもあるとされる原子力推進無人潜水艇ポセイドンの実機とは全く異なる可能性は高いのですが、もしもクラヴェシンと同様の推進システムを搭載した場合は、原子力推進であっても高速性は発揮できない情報収集用の偵察型となるでしょう。つまり核魚雷ではないことになります。

 次に動画は何の説明も無く魚雷が映ります。こちらは3年前に情報がリークされた巨大核魚雷「海洋多目的システム:ステータス6(アメリカ軍コードネーム:カニヨン)」を思い起こさせます。

BBCニュース - ロシアが巨大核魚雷を開発中? テレビで「誤って」放送 (2015年11月13日)

 冷戦初期に計画された戦略核魚雷T15の流れを組むと思われるステータス6は魚雷そのものの形をしており、高速力を発揮することが可能であるのは間違いないでしょう。核弾頭を搭載した攻撃的な使い方が出来る筈です。

 しかしポセイドンの名称を公募で決めたロシア国防省の投票サイトでは、クラヴェシンによく似たスクリュー4基の無人潜水艇の方を新兵器であると強調するように画像で紹介していました。これは一体どういうことなのでしょうか?

  1. 海洋調査用原子力推進無人潜水艇が真であり、戦略核魚雷は偽である
  2. 戦略核魚雷が真であり、海洋調査用原子力推進無人潜水艇は偽である
  3. 海洋多目的原子力無人潜水艇から戦略核魚雷を発射することが可能
  4. どちらも偽情報でありポセイドンなる兵器の開発計画は実態が無い

 4つのケースが考えられますが、どの場合でも3年前に情報リークされたステータス6と今回発表されたポセイドンの情報を全て正しいとする組み合わせがありません。ケース1とケース2は今回発表された映像の中で偽情報が含まれていることになります。ケース3は今回の映像では矛盾は生じないものの3年前のリーク情報が偽情報となります。しかし技術的な問題からケース3が最も可能性が低いように思えます。大型原潜に収納できるサイズの小型無人潜水艇に更に魚雷を装備して攻撃に向かう事に利点があまり見出せません。防備の厚い敵国沿岸へ攻撃に向かう無人潜水艇は帰還率が非常に低くなるはずで、それならば自爆した方が合理的です。無人ならばそういった運用が許されます。そしてケース4が全ての情報が相手を混乱させるための偽である場合ですが、何もかも偽である場合は逆に相手に見抜かれやすく、注目を引き付けるための何らかの開発計画が存在する可能性はあると思います。

 ロシアがポセイドンの紹介映像でクラヴェシンそのままの姿を映した意味は現時点では推測するしかありませんが、新兵器が偵察用なのか攻撃用なのか分からないように相手を混乱させようとする意図は強く感じられます。情報収集にしか使えないクラヴェシンのような低速の無人潜水艇を核攻撃が可能と説明し、高速を発揮でき攻撃用途に向いた魚雷型形状のステータス6に海洋多用途システムと名付けるやり方は、本当の事をそのまま伝える気は最初から無いのです。

※2018年7月20日追記。ロシア国防省が新たに公表した動画から、ポセイドンは超大型の戦略核魚雷であることが判明しました。