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今週は、週明けは菜種梅雨前線が活発化も、中頃からは晴天に さくらは暖かいのに満開までの期間が長い傾向

饒村曜気象予報士
沖縄付近から東日本の南海上に停滞した前線の雲(令和6年4月8日12時)

いろいろな梅雨

 菜種の花が咲く頃(3月~4月)にかけての連続した降雨を「菜種梅雨」と言います。

 沖縄では5月上旬に梅雨入りですが、本州・四国・九州の梅雨入りは6月前半ですので、5月の長雨は「先駆け」の意味から「走り梅雨」と呼びます。「前梅雨」、「迎え梅雨」、地方によっては筍が旬であることから「筍梅雨」とも言います。

 梅雨期間でも、強い雨が降ったり晴天となったり、変化が激しい梅雨を「陽性梅雨」、あまり強い雨にはならないが曇りや雨の天気が続くと「陰性梅雨」、雨日数や降水量が少ないと「空梅雨(照り梅雨)」です。

 昔は、「男梅雨」、「女梅雨」という言葉もありましたが、男女のイメージが変わってきている昨今では、使われていません。

 また、梅雨のない北海道でも、2週間くらいリラ冷えと呼ばれる肌寒い天気が続く年があり「蝦夷梅雨」と呼ばれます。

 さらに、梅雨末期にはそろそろ梅雨明けということで「送り梅雨・帰り梅雨・残り梅雨」といい、持続的な悪天が梅雨明け後に現れると「戻り梅雨」となります。

 さらにさらに、初秋のときは「すすき梅雨」、晩秋から初冬は「さざんか梅雨」です。

 このように、ほぼ一年にわたって「梅雨」という言葉があるのは、日本人にとって梅雨が大きな関心事であることの反映です。

菜種前線が活発化

 令和6年(2024年)4月7日は、沖縄県から東日本の南海上に前線が停滞しました(タイトル画像)。

 そして、前線に近い沖縄では100ミリ近い大雨となり、関東地方や九州でもまとまった雨が降りました(図1)。

図1 令和6年4月7日の24時間降水量
図1 令和6年4月7日の24時間降水量

 太平洋側の地方では、菜種梅雨となっていますが、週明けの4月8日~9日は、菜種梅雨前線上に低気圧が発生し、雨や風が強まる見込みです(図2)。

図2 予想天気図(4月9日9時の予想)
図2 予想天気図(4月9日9時の予想)

 このため、ほぼ全国的に雨となり、紀伊半島から東日本の太平洋側では150ミリを超える雨が降る見込みです(図3)。

図3 令和6年4月8日0時~9日24時の48時間予想降水量
図3 令和6年4月8日0時~9日24時の48時間予想降水量

 気象庁は、5日先までに警報を発表する可能性を、「高」「中」の2種類で示す、早期注意情報を発表しています。

 これによると、大雨に関する早期注意情報では、4月9日の静岡、神奈川、千葉の各県で「中」となっています(図4)。

図4 大雨に関する早期注意情報(4月9日)
図4 大雨に関する早期注意情報(4月9日)

 近年は、菜種梅雨でも大雨が降る傾向がありますので、梅雨という名前がつく長雨のときは、梅雨期なみに警戒したほうが良い時代に入っています。

 今年の菜種梅雨も、梅雨期の警戒が必要です。

今週半ば以降の晴天とさくらの開花から満開までの期間

 今週の半ば以降は、全国的に晴れて気温が上昇する見込みです(図5)。

図5 各地の週間天気予報(数字は最高気温)
図5 各地の週間天気予報(数字は最高気温)

 先週までの予報では、菜種梅雨がしばらく続くという予報でしたが、ここへきて、晴れの方に予報が変わっています。こんな中、北日本を除いて、さくらの季節がそろそろ終わりそうです。

 さくらの開花から満開までの平年の期間は、西日本で8~10日間、東日本の太平洋側で6~9日間に対し、北海道では2~5日間と、北国ほど短くなります。

 沖縄・奄美を除くとトップで開花した高知は開花8日後の3月31日に、東京では開花6日後の4日に満開となりました。

 その後も、各地で開花や満開が相次いでいますが、今年は、開花から満開までの期間が例年より長くなっている所が目立ちます(表)。

表 令和6年(2024年)さくら開花日と満開日
表 令和6年(2024年)さくら開花日と満開日

 例えば、広島は11日間、名古屋は10日間、3月29日に開花した鹿児島は、まだ満開となっていませんので、10日以上ということになります。

 開花後に寒さが続いて満開が遅れるというのは珍しくありませんが、気温が高めに経過しているのに遅いということは珍しいと思います。

 さくらが南国の花のように一斉に咲かなくなってきたのかもしれません。

タイトル画像、図1、図3、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページ。

表の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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