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気温上昇で各地でさくらの開花 28日から29日の発達した低気圧の通過後は菜種梅雨の気配

饒村曜気象予報士
東京都港区・赤坂サカスにある福島県三春の滝桜の子孫樹(3月27日に筆者撮影)

大きな移動性高気圧

 令和6年(2024年)3月27日(水)の日本列島は、大きな移動性高気圧におおわれ、ほぼ全国的に晴れて気温が上昇しました(図1)。

図1 大きな移動性高気圧に覆われた日本列島(3月27日12時の地上天気図と衛星画像)
図1 大きな移動性高気圧に覆われた日本列島(3月27日12時の地上天気図と衛星画像)

 今週初めに南下してきた寒気で、さくらの開花が少し遅れましたが、各地でさくらの開花が進んでいます。

 気象庁では、東京のさくらの開花は、東京都千代田区の靖国神社にあるソメイヨシノの標本木が5~6輪咲いた時を開花としています。

 ニュースで取り上げられる東京のさくらは、この靖国神社のさくらです。

 さくらの種類によって、あるいは日当たり等の植えられている場所の違いによって差がありますが、さくら開花の長期変化を調べたり、他地域の開花との比較を行うため、標本木という木を決めて観測しているのです。

 同じ東京でも、さくらの咲き方には差があります。

 例えば、現在、靖国神社の標本木は、開きかけの花芽がある程度で、東京のさくらは開花していませんが、東京都港区のTBS前の赤坂サカスにある「福島県三春の滝桜の子孫樹」は咲いています(タイトル写真)。

 沖縄・奄美を除くと、トップのさくら開花は3月23日(土)の高知でした。

 その後、広島、宮崎、長崎、熊本が続き、3月27日には岐阜と松山、福岡で開花しました(表)。

表 令和6年(2024年)さくら開花日と満開日
表 令和6年(2024年)さくら開花日と満開日

 晴天をもたらした大きな移動性高気圧が過ぎた3月28日(木)夜から29日(金)にかけて日本海と本州の南岸を2つの低気圧が通過し、気温が高い雨であることから、ほぼ全国的に開花を促す催花雨となりそうです(図2)。

図2 予想天気図(3月28日21時の予想)
図2 予想天気図(3月28日21時の予想)

 ただ、日本海を進む低気圧が急速に発達する見込みで、3月29日には北日本では非常に強い風が吹き、最大風速は20から24メートル、最大瞬間風速は25から35メートルと予想されています。

 催花雨というイメージにそぐわない、強い風を伴った雨になりそうです。

 さくらの開花から満開までの期間は、西日本の平年が8~10日間、東日本での太平洋側の平年が6~9日間に対し、北海道の平年が2~5日間です(図3)。

図3 さくらの開花から満開までの期間の平年値
図3 さくらの開花から満開までの期間の平年値

 今後、強い風を伴った雨の期間も含め、気温が高目に経過する予想ですので、これより短く、さくらの下で新年度というところも多そうです。

菜種梅雨

 低気圧が発達して通過した今週末以降、日本の南岸に前線が停滞する見込みです。

 鹿児島県奄美大島・名瀬の16日先までの天気予報をみると、16日間連続で傘マーク(雨)があり、ほとんどの日に黒雲マーク(雨の可能性があるくもり)がついています(図4)。

図4 鹿児島県奄美大島・名瀬の16日先までの天気予報
図4 鹿児島県奄美大島・名瀬の16日先までの天気予報

 降水の有無の信頼度は、一番高いAから、一番低いEまで5段階ありますが、この16日先までの予報は、EやDが少ない予報です。

 しかも、来週にはAが並ぶという、信頼度が高い16日先までの天気予報です。

 これに対して、東京や那覇の16日先までの天気予報では、雨の日が多い予報ですが名瀬ほどではありません(図5)。

図5 東京(都心)の16日先までの天気予報(上)と那覇の16日先までの天気予報(下)
図5 東京(都心)の16日先までの天気予報(上)と那覇の16日先までの天気予報(下)

 お日様マーク(晴れ)や、白雲マーク(雨の可能性が少ないくもり)も少なくない予報です。

 しかも、降水の有無の信頼度がDとかEの雨の日が多い予報となっています。

 これは、菜種梅雨前線が奄美大島付近を中心として存在し、少し南下すると3月30日から4月2日のように東京は晴れ、那覇は雨となり、逆に、少し北上すると4月3日から6日のように東京は雨、那覇は晴れとなります。

 ただ、この少し北上、少し南下という予報が難しいことから、降水の有無の信頼度が東京と那覇、ともに名瀬より低いのです。

 菜種梅雨といっても、気温が上がって大気中の水蒸気の量が増えてくるなど、条件が揃ってくると、大雨になることがあります。昨年の3月22日には、菜種前線で発生した線状降水帯が、沖縄に大雨を降らせました。

 季節は初夏に向かって進んでいるということは、大雨の危険がある季節に向かって進んでいるということでもあります。

 今のうちから、大雨が降った場合の対策を考え、小さなことでも実行しはじめることが大切です。

図1、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3、表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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