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発達した低気圧の通過で今冬最後の寒気南下か? 今週はさくらの開花ラッシュ

饒村曜気象予報士
前線上を低気圧が次々に通過(3月25日15時)

今冬最後の寒気?

 令和6年(2024年)3月25日に最高気温が0度に満たない真冬日を観測したところはなく、最低気温が0度に満たない冬日は203地点(気温を観測している全国914地点の約22パーセント)でした。また、最高気温が25度以上の夏日を観測したのが32地点(約4パーセント)でした。

 2月後半以降は、1月上中旬寒波や、1月下旬寒波などと比べると、寒気の南下が長続きせず、寒波とは呼べない状況になっています(図1)。

図1 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2024年1月1日~3月27日、3月26日以降は予想)
図1 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2024年1月1日~3月27日、3月26日以降は予想)

 3月26日は、東シナ海にあった低気圧は発達しながら日本列島を縦断し、低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込むため、西日本から東日本では大気の状態が非常に不安定となる見込みです(タイトル画像)。

 西日本や東日本太平洋側では雨が降り、雷を伴って非常に激しく降る所もあるでしょう。大雨となる所もあるため、土砂災害に警戒し、低い土地の浸水や河川の増水、落雷や竜巻などの激しい突風に注意してください(図2)。

図2 雨と風の分布予想(3月26日21時の予想)
図2 雨と風の分布予想(3月26日21時の予想)

 この低気圧通過で少し寒気が南下してきますが一時的で、すぐに高気圧に覆われ、晴れて気温が上昇してくる見込みです(図3)。

図3 予想天気図(左は3月26日9時の予想、右は3月27日9時の予想)
図3 予想天気図(左は3月26日9時の予想、右は3月27日9時の予想)

 気象庁では、6日後から14日後までを対象として、5日間平均気温が「かなり高い」もしくは「かなり低い」となる確率が30パーセント以上の時、早期天候情報を発表しています。

 3月25日に発表した早期天候情報によると、今後、東北地方日本海側から東日本太平洋側、西日本、沖縄と広い範囲で高温になる見込みです(図4)。

図4 気象庁が3月25日に発表した早期天候情報(平均気温)
図4 気象庁が3月25日に発表した早期天候情報(平均気温)

 3月26日に低気圧が通過したあとに、ちょっとした寒気が南下してきても一時的で、このちょっとした寒気が、今冬最後の寒気になるかもしれません。

さくらの開花

 令和6年(2024年)2月はかなり暖かい日が多くなりましたが、3月のはじめにかけて長めの寒の戻りがありました。

 3月中旬は暖かくなりましたが予想ほどではなかったため、さくらの開花日が当初の予想より少し遅れました。

 そして、3月23日に高知でさくらが開花しました。南西諸島を除いて、今年全国トップでのさくらの開花です。

 さらに、3月25日には、宮崎と広島でも開花し、今週は開花ラッシュとなる見込みです(表)。

表 令和6年(2024年)のさくらの開花日と満開日
表 令和6年(2024年)のさくらの開花日と満開日

【追記(3月26日12時40分)】

熊本地方気象台は、3月26日昼前に、熊本でさくらが開花したと発表しました。

【追記(3月26日14時00分)】

長崎地方気象台は、3月26日昼過ぎに、長崎でさくらが開花したと発表しました。

 3月末から4月にかけて、気温が高めとなる予想となっており、関東から西ではだいたい平年並み、北日本では平年より早くなりそうです(図5)。

図5 さくら開花前線(3月25日ウェザーマップ発表)
図5 さくら開花前線(3月25日ウェザーマップ発表)

開花から満開までの期間

 さくらの開花から満開までの期間は、西日本の平年が8~10日間、東日本での太平洋側の平年が6~9日間に対し、北海道の平年が2~5日間です(図6)。

図6 さくらの開花から満開までの期間の平年値
図6 さくらの開花から満開までの期間の平年値

 北海道では、開花から満開までの期間が非常に短いのです。

 過去には、午前中に開花し、午後に満開となった例もあります。

 平成24年(2012年)の北海道・旭川のことで、5月2日午前に開花し、午後に満開となりました

 北海道などの北国は、さくらの開花から満開までの期間が短いだけでなく、いろいろな花が一斉に咲きだします。

 まさに「北国の春」です。

 これに対して、暖かい地方では、開花から満開の期間が長くなるだけではなく、満開そのものがないこともあります。

 今年、令和6年(2024年)の例でも、石垣島と南大東島では、さくらが開花した日はありますが、さくらが満開した日はありません。 

 暖かい地方では、一本の木で一斉に咲くというより、徐々に花が開いてゆく傾向があり、先に咲いた花が散ったころに遅れて咲く花があるため、なかなか同時に80パーセントの花が咲いている状態にならないからです。

 地球温暖化が進んで来ると、満開の花の下での花見は無くなってくるかもしれません。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁ホームページ。

図6、表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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