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今週はさくらの開花ラッシュで一気に春本番 さくらが開花しても地球温暖化で満開がなくなる?

饒村曜気象予報士
訪日カップル(写真:アフロ)

冬日・真冬日の減少と夏日の増加

 令和6年(2024年)3月24日に最高気温が0度に満たない真冬日を観測したところはなく、最低気温が0度に満たない冬日は316地点(気温を観測している全国914地点の約35パーセント)でした。

 今冬一番の強い寒気が南下してきた令和5年(2023年)12月22日の冬至寒波の頃は、真冬日は約29パーセント、冬日は約85パーセントでしたので、これに比べれば、かなり少なくなっています(図1)。

図1 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2024年1月1日~3月27日、3月25日以降は予想)
図1 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2024年1月1日~3月27日、3月25日以降は予想)

 2月後半以降は、1月上中旬寒波や、1月下旬寒波などと比べると、寒気の南下が長続きせず、寒波とは呼べない状況になっています。

 今冬の東京都心は、令和5年(2023年)12月上旬までは極端に気温が高い日もあったのですが、冬至(12月22日)寒波以降は、それまでの極端に気温が高い日はなかったものの、気温は高めに推移していました。

 そして、1月後半から気温が平年よりかなり高くなり、2月20日には最高気温23.7度と記録的な暖かさとなりました(図2)。

図2 東京の最高気温と最低気温の推移(3月25日~4月9日はウェザーマップの予報)
図2 東京の最高気温と最低気温の推移(3月25日~4月9日はウェザーマップの予報)

 その後、気温が急降下し、2月23日の天皇誕生日には最高気温が4.0度となっています。

 天皇誕生日を含む三連休の気温は平年より低くなりましたが、三連休後は、ほぼ平年並みに戻っています。

 しかし、3月5~6日と8日に、南岸低気圧が続けて通過し、気温が大きく下がっています。特に、2回目の8日のときは、4時40分から7時10分まで雪が降り、1センチの積雪を観測しました。

 その後気温が大きく上昇し、最高気温は3月16日に22.7度、17日に21.7度と、連日20度超えとなりましたが、3月20日の「春分の日」の頃に南下してきた寒気では、23日の最高気温が9.3度と、体に応える大きな気温変化となりました。

 ただ、今週の中ごろ以降は、4月にむけて気温が高い日が続きそうです。

高知でさくらが開花

 寒気南下の影響で開花が少し遅れましたが、3月23日に高知でさくらが開花しました。南西諸島を除いて、今年全国トップでのさくらの開花です。

 そして、今週の暖かさで、東日本の太平洋側から西日本の各地から、さくら開花のたよりがとどきそうです(図3)。

図3 さくら開花前線(3月21日ウェザーマップ発表)
図3 さくら開花前線(3月21日ウェザーマップ発表)

 東京のさくらの開花は、靖国神社にあるさくらで判断していますが、この靖国神社のさくらの開花は、近年早まる傾向にあります。

 令和6年(2024年)の東京(靖国神社)のさくらの開花は、3月25日と予想されていますが、これは、平年より早いものの、ここ数年の記録的な早さからみると、遅くなっています。

 また、東北北部や北海道もさくらの開花は平年より早くなりそうです。

開花から満開までの期間

 さくらの開花から満開までの期間は、西日本の平年が8~10日間、東日本での太平洋側の平年が6~9日間に対し、北海道の平年が2~5日間です(図4)。

図4 さくらの開花から満開までの期間の平年値
図4 さくらの開花から満開までの期間の平年値

 北海道では、開花から満開までの期間が非常に短いのです。

 過去には、午前中に開花し、午後に満開となった例もあります。

 平成24年(2012年)の北海道・旭川のことで、5月2日午前に開花し、午後に満開となりました。

 北海道などの北国は、さくらの開花から満開までの期間が短いだけでなく、いろいろな花が一斉に咲きだします。

 まさに「北国の春」です。

 これに対して、暖かい地方では、開花から満開の期間が長くなるだけではなく、満開そのものがないこともあります。

 今年、令和6年(2024年)の例でも、石垣島と南大東島でさくらの満開した日はありません(表)。 

表 令和6年(2024年)のさくらの開花日と満開日
表 令和6年(2024年)のさくらの開花日と満開日

 気象庁のさくらの満開の定義は、長年にわたって、「標本木で80パーセント以上のつぼみが開いた状態」ということでした。

 暖かい地方では、一本の木で一斉に咲くというより、徐々に花が開いてゆく傾向があるため、先に咲いた花が散ったころに遅れて咲く花があるため、なかなか同時に80パーセントの花が咲いている状態になりません。

 温暖な沖縄・奄美地方で満開がない年があっても違和感がなかったのですが、近年、沖縄・奄美地方以外でも、さくらが咲きそろわない年が目立ち、違和感がでるようになってきました。

 平成28年(2016年)には、例外として、大分と徳島では、散ってしまった花も含めて満開としたことがありました。

 地球温暖化が進み、平成28年(2016年)の大分と徳島のようなことが増えてくることが想定されることなどから、気象庁では満開の定義を令和3年(2021年)に変えています。

 「同時に約80パーセント以上咲いている状態である必要はない」という注釈がつき、散った花も含めて満開とすることにしたのです。

 つまり、さくらの満開の定義にも、地球温暖化の影響が出ているのです。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2、表の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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