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今週末から来週前半にかけて、さくらの開花を促す催花雨

饒村曜気象予報士
桜と階段を上がる親子の後ろ姿 お花見(写真:アフロ)

今週末からの催花雨(菜花雨)

 令和6年(2024年)3月22日の日本列島は、2つの移動性高気圧におおわれ、高気圧の間に位置する北陸や東北ではくもりや雪となりますが、その他の地方は概ね晴れる見込みです(図1)。

図1 予想天気図(左は3月22日9時、右は23日9時の予想)
図1 予想天気図(左は3月22日9時、右は23日9時の予想)

 しかし、高気圧が通過した今週末~来週前半にかけては、北海道や沖縄は概ね晴れるものの、その他の地方では、前線や低気圧の影響で雨が降りやすい天気が続く見込みです(図2)。

図2 雨雲予想(3月24日15時の予想)
図2 雨雲予想(3月24日15時の予想)

 ただ、各地の週間天気予報をみても、雨が降っても冷たい冬の雨ではなく、春らしい温かい雨の見込みです(図3)。

図3 各地の週間天気予報(数字は予想最高気温)
図3 各地の週間天気予報(数字は予想最高気温)

 東京など、東日本太平洋側では、3月25日の最高気温は20度の見込みですし、九州南部では3月23日以降、連続して最高気温が20度以上です。

催花雨

 今頃から4月上旬にかけて降る雨を、サクラの開花を促す催花雨(さいかう)といったり、ナタネの花が咲いているので菜花雨(さいかう)といったりします。

 読み方は同じで、漢字が違います。

 沖縄・奄美以外では、まだサクラが開花していませんが、各地でサクラの花芽が膨らんでおり、ウェザーマップが3月21日に発表した、さくら開花前線では、3月22日(金)に、広島と高知で開花の発表がありそうです(表)。

表 令和6年(2024年)さくら開花日の予想(ウェザーマップによる)
表 令和6年(2024年)さくら開花日の予想(ウェザーマップによる)

【追記(3月23日17時)】

 寒気南下の影響で開花が少し遅れましたが、3月23日に高知でさくらが開花しました。南西諸島を除いて、今年全国トップでのさくらの開花です。

 そして、催花雨のなか、次々に各地で開花が予想されています。

 東京のさくらの開花は、靖国神社にあるさくらで判断していますが、この靖国神社のさくらの開花は、近年早まる傾向にあります。

 令和6年(2024年)の東京(靖国神社)のさくらの開花は、3月25日と予想されていますが、これは、平年より早いものの、ここ数年の記録的な早さからみると、遅くなっています(図4)。

図4 東京(靖国神社)のさくらの開花日
図4 東京(靖国神社)のさくらの開花日

 これは、春分の日(3月20日)の頃に南下した寒気によって寒い日が続いたためです。

今冬の東京都心の気温

 今冬の東京都心は、令和5年(2023年)12月上旬までは極端に気温が高い日もあったのですが、冬至(12月22日)寒波以降は、それまでの極端に気温が高い日はなかったものの、気温は高めに推移していました。

 しかし、令和6年(2024年)2月中旬になると季節外れの暖かさとなり、2月20日に23.7度と、2月としては記録的な暖かさとなりましたが、その後気温が急降下しました(図5)。

図5 東京の最高気温と最低気温の推移(3月22日~28日は気象庁の予報、3月29日~4月6日はウェザーマップの予報)
図5 東京の最高気温と最低気温の推移(3月22日~28日は気象庁の予報、3月29日~4月6日はウェザーマップの予報)

 2月23日の天皇誕生日を含む三連休の気温は平年より低くなりましたが、三連休後は、ほぼ平年並みに戻っています。

 しかし、3月5~6日と8日に、南岸低気圧が続けて通過し、気温が大きく下がっています。特に、2回目の8日のときは、4時40分から7時10分まで雪が降り、1センチの積雪を観測しました。

 その後気温が大きく上昇し、最高気温は3月16日に22.7度、17日に21.7度と、連日20度超えとなりましたが、3月20日の「春分の日」の頃に南下してきた寒気では、季節外れの暖かさからの気温低下ですので、体に堪える大きな気温変化となりました。

 「春分の日」は少し寒くなりましたが、その後は4月にむけて気温が高い日が続きそうです。

 東京だけでなく、ほかの地方も似た気温の変化傾向ですので、東北北部や北海道もさくらの開花は平年より早くなりそうです(図6)。

図6 さくら開花前線(3月21日ウェザーマップ発表)
図6 さくら開花前線(3月21日ウェザーマップ発表)

 さくらの開花から満開までの期間は、西日本の平年が8~10日間、東日本での太平洋側の平年が6~9日間に対し、北海道の平年が2~5日間です(図7)。

図7 さくらの開花から満開までの期間の平年値
図7 さくらの開花から満開までの期間の平年値

 北海道では、開花から満開までの期間が非常に短いのです。

 過去には、午前中に開花し、午後に満開となった例もあります。

 平成24年(2012年)の北海道・旭川のことです。

引用:毎日新聞(平成24年(2012年)5月3日朝刊)
桜:午前開花、午後満開 北海道・旭川、全国初の同日
 旭川地方気象台は2日、北海道旭川市のサクラ(エゾヤマザクラ)が観測史上全国で初めて、開花と満開が同日になったと発表した。基準にしている「標本木」は、午前に3割程度で開花が確認され、午後に満開と判断する8分咲きを超えた。
 開花は平年より3日早く、満開は5日早い。通常は開花から満開まで3、4日かかるが、同日の最高気温は7月上旬並みの25.1度で、一気に花が開いた。…。

 北海道などの北国は、さくらの開花から満開までの期間が短いだけでなく、いろいろな花が一斉に咲きだします。

 まさに「北国の春」です。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2、図3、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図4、図7の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図5の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

表の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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