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さくらの開花目前 週末にかけての高い気温で来週の一番乗りは高知か名古屋か東京か?

饒村曜気象予報士
さくらと笑顔の日本人女性(写真:アフロ)

移動性高気圧

 令和6年3月15日は、低気圧が通過する北日本は雲が多く、東北北部では雨か雪、北海道では日本海側を中心に雪か雨の見込みです(図1)。

図1 予想天気図(左は3月15時9時、右は21時の予想)
図1 予想天気図(左は3月15時9時、右は21時の予想)

 しかし、大陸から大きな移動性高気圧が西日本から東日本太平洋側に張り出してきますので、南西諸島で雲が多いものの、その他の地方は、晴れる見込みです。

最高気温は、沖縄で平年並みの他は、平年より高い予報です

 そして、各地とも週末に向かって気温はさらに上昇する見込みです(図2)。

図2 各地の週間天気予報(数字は最高気温)
図2 各地の週間天気予報(数字は最高気温)

 この暖かさで、来週は各地から「さくら開花」の情報が発表されそうです。

気象庁のさくら開花の観測

 気象庁では、昭和30年(1955年)から平成21年(2009年)まで、沖縄・奄美地方を除く全国で桜の開花予報を行ってきました。

 しかし、民間気象事業者が実力をつけ、気象庁と同等の情報提供を行うようになったことから、平成22年(2010年)以降は、予報をやめ、観測のみを行っています。

 気象庁でいうさくらは、ほとんどの地方はそめいよしのですが、そめいよしのの少ない沖縄ではひかんざくら、北海道の一部ではえぞやまざくら等です。

 いずれも、各地方に標本木として指定されたさくらの木があり、5 〜6輪以上の花が開いた状態になった日が桜の開花日です。

 また、80%以上花が開いた状態を満開としています。

 気象庁の有人官署では、構内に植えられている、あるいは近くの公園等に植えられている桜のうち、特定の木を標本木として開花や満開を観測しています。

 標本木が年をとるなどで、周囲の桜との間で差がでるようになると、次の標本木の候補を決め、比較観測をしばらく行ってから新しい標本木に変えています。

 観測値を継続させるためです。

 そして、同じ条件で長期間継続して観測を行っていることから「昨年より〇〇日早い」「平年より〇〇日早い」「全国的にみると東日本が早い」などの比較情報が発表できるのです。

令和6年(2024年)の一番乗りは?

 さくらの開花は、1月中旬頃に沖縄・奄美地方のひかんざくらの開花で始まります。

 そめいよしのの開花は3月下旬に九州地方、中国地方、四国地方、近畿地方、東海地方、関東地方、4月10日には北陸地方、東北地方南部に達します。

 その後、東北地方北部を北上し、5月中旬に北海道日本海側北部・太平洋側東部まで達します。

 ただ、これは平年の話であり、年によって様相は異なります。

 このため、関東から西の太平洋側の地方では、沖縄・奄美地方を除いて、トップに桜が咲くのは何処かということが大きな話題になります。

 さくらの開花レースは、地球温暖化の影響で早まっていますが、特に早くなってトップ争いに加わってきたのが都市化の影響も加わっている東京です。

 桜の開花日は、平成12年(2010年)までの30年の平均に比べ、令和2年(2020年)までの30年の平均は、1~2日ほど早くなっていますが、東京の早まり方が顕著です(図3)。

図3 そめいよしのの開花日の30年平均の推移
図3 そめいよしのの開花日の30年平均の推移

 平成29年(2017年)と令和2年(2020年)、令和5年(2023年)にトップで開花したのは東京(千代田区の靖国神社)でした。

 過去10年間では東海から西日本にかけて、いろいろな都市がトップとなり、混戦模様です。

全国で一番早い開花の都市(沖縄・奄美を除く)
令和5年(2023年)3月14日 東京
令和4年(2022年)3月17日 福岡
令和3年(2021年)3月11日 広島
令和2年(2020年)3月14日 東京
平成31年(2019年)3月20日 長崎
平成30年(2018年)3月15日 高知
平成29年(2017年)3月21日 東京
平成28年(2016年)3月19日 福岡、名古屋
平成27年(2015年)3月21日 名古屋、熊本、鹿児島
平成26年(2014年)3月18日 高知

充実している各地のさくら情報

 さくらの開花予報は社会的関心が高く、ウェザーマップ、ウェザーニューズ、日本気象協会などの民間気象事業者は、ユーザーに合わせた予報を個々に行っています。

 単純に比較はできないのですが、競争原理によって各地のさくらに関する情報が充実しています。

 さくらの開花の早い遅いの大きな傾向は、冬の寒さと関係しています。寒い時期を経験すると、その後の暖かさで、開花が早まるというのが「休眠打破」と呼ばれる現象です。

 寒さにさらされないと開花が遅れるのですが、今冬はそこそこ寒かったため、全国的に平年より早い開花になりそうです。

 いつ咲くかということになると、直近の暖かさが影響します。

 これらを加味してウェザーマップが3月14日に更新した予報では、3月20日の高知に続いて、3月21に名古屋・広島などとなっています(表)。

表 令和6年(2024年)の「さくらの開花」
表 令和6年(2024年)の「さくらの開花」

 今のところ、高知がトップの予想ですが、他の常連の都市も続いていますので、来週の週明け、つまり開花直前に南下してくる寒気の程度によっては、別の都市となる可能性があります。

 いずれにしても、来週には高知や名古屋、東京などからさくらの開花情報が聞けそうです。

 さくらの開花は平年より3日〜7日くらい早くなり、そのあと4月も気温は高めとなる予想で、東北北部や北海道も平年より早いという予想です(図4)。

図4 さくら開花前線(3月14日にウェザーマップが発表)
図4 さくら開花前線(3月14日にウェザーマップが発表)

 一般的に、開花後の気温が低いと開花から満開までの期間が長くなります。

 九州から東海・関東地方では開花から満開までの期間が約7日間ですが、今年は、どうなるのでしょうか。

 いずれにしても、西日本〜東日本の入学式は、さくらのシーズンが終わっているところが多そうです。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。

表の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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