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計算が難しい閏日の平年値 最近の閏日の東京は雨の日が増えてきたが、今年は南岸低気圧が通過

饒村曜気象予報士
閏年と辰年の絵(写真:イメージマート)

西高東低の冬型の気圧配置

 日本の東海上で低気圧が発達したため、2月27日は全国的に北風が強く、東北の太平洋側は暴風雪となりました。

 岩手県・宮古では明け方の3時間に27センチの降雪があり、東京・羽田では昼過ぎに20.4メートルの最大風速を観測しました。

 この低気圧は勢力があまり衰えないのですが、日本列島から離れるため、北日本を中心とした西高東低の冬型の気圧配置は次第に弱まる見込みです(図1)。

図1 予想天気図(左は2月28日9時の予想、右は29日9時の予想)
図1 予想天気図(左は2月28日9時の予想、右は29日9時の予想)

 西高東低の冬型の気圧配置には、シベリア高気圧が強いために等圧線の間隔が狭くなる「押しの西高東低」と、日本の東の低気圧が発達して等圧線の間隔が狭くなる「引きの西高東低」があります。

 「押しの西高東低」は、長続きする持続型が多いのですが、「引きの西高東低」は、今回の西高東低の気圧配置のように、各地に暴雨風や大雪をもたらす半面、この荒天は一時的で瞬発型です。

 西高東低の気圧配置によって寒気が南下し、最高気温が0度に満たない真冬日や、最低気温が0度に満たない冬日が増えましたが、今冬一番の冬至寒波や、1月上中旬寒波、1月下旬寒波ほどではありません(図2)。

図2 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2023年12月1日~2024年3月1日、2月28日以降は予測)
図2 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2023年12月1日~2024年3月1日、2月28日以降は予測)

 2月27日の冬日は385地点(気温を観測している全国914地点の約42パーセント)、真冬日は124地点(約14パーセント)でしたが、2月28日は冬日と夏日の観測地点は少し増えるものの、その後は減り、季節は少しずつ春に向かって進んでいます。

 2月28日は、北海道の東部や東北から近畿の日本海側では所によりにわか雪がありますが、北~西日本では晴れる所が多いでしょう。

 ただ、東シナ海で前線が顕在化してくるため、九州では午後は次第に雲が広がり夜遅くには雨の降る所があるでしょう。南西諸島は雲の多い天気となって、所によりにわか雨がある見込みです。

 2月29日は、東シナ海で前線上に低気圧が発生し、東進する見込みです。

 つまり、令和6年(2024年)の閏日(2月29日)は、南岸低気圧が通過しそうです。

閏年の平年値

 今年、2024年(令和6年)は閏年で、閏日(2月29日)があります。

 現在、私たちが使っているグレゴリオ暦は、1582年にローマ教皇・グレゴリウス13世が制定したもので、太陽の動きをもとに作られています。

 地球が太陽の周りを一周するのに365.24219日(365日5時間48分45秒)かけてまわりますので、1年を365日とすると、少し足りません。

 このため、4年に1回、閏日を設けて2月29日を作るのですが、これだと、わずかに足しすぎとなり、400年に3回、100で割り切れるのに400では割り切れない年には閏日を設けないとしたのがグレゴリオ暦です。

 従って、2000年は閏年で閏日がありますが、1800年、1900年、2100年は閏年ではなく、閏日はありません。

 気象で使われている平年値は、1991年(平成3年)から2020年(令和2年)までの30年間の気象データを用いた平均値です。

 しかし、日別平年値でいうと、1月1日の平年値は、1月1日の気象データを30個集めての平均ですが、2月29日は8個しかなく、ここで揺らぎが大きくなることから例外扱いになっています。

 日別平年値は、単純に日別値の平均を求めるのではなく、まず1月1日から12月31日まで(2月29日を除く)の日別値の単純累年平均を求めた上で、これの9 日間移動平均を とります。

 例えば、1月1日から1月9日までのすべての値の平均を、真ん中の1月5日の平均とするのが9日間移動平均です。この一回目の移動平均を用いて二回目の移動平均を求め、二回目の移動平均を用いて三回目の移動平均を求めたのが日別の平年値(正確には日別平滑平年値)として使われます。

 そして、2月29日の値は、三回目の移動平均で求めた、2月28日と3月1日の中間の値としています。

 また、2月29日に初終日があった事項の平年日については、3月1日に起こったこととして平年値を作りますので、初終日の平年値が2月29日になることはありませんし、早い遅いは2月29日を飛ばして数えます。

 例えば、関東地方の今年の春一番は2月15日ですが、昨年に春一番が吹いた3月1日に比べて、14日早いと発表されました。つまり、閏日( 2月29日)をカウントしていません。

閏日(2月29日)の東京の天気

 東京の1964年(昭和39年)以降の2月29日の天気を見ると、昔は、雨の日が少なかったのですが、近年は雨の日が多い傾向が見られます(表)。

表 東京の2月29日の天気 
表 東京の2月29日の天気 

 1981年(昭和56年)から2010年(平成12年)までの30年間で雨の日は0パーセントですが、1991年(平成3年)から2020年(令和2年)までの30年間では、雨の日は25パーセント(8分の2)です。

 そして、今年の閏日も雨の可能性が高い予報となっています(図3)。

図3 全国の2月29日の天気予報
図3 全国の2月29日の天気予報

 関東地方の山沿いは雪で、東京都心は雨の見込みです(図4)。

図4 南岸低気圧による閏日(2月29日)の雨雪判別図 
図4 南岸低気圧による閏日(2月29日)の雨雪判別図 

 ただ、南岸低気圧の雨や雪の予報は非常に難しく、降り始めの時刻や、下層の寒気の動向で様相が大きく変わりますので、最新の気象情報に注意してください。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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