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日本海側と太平洋側に大雪をもたらした今冬一番の寒気の収束と「さくらの開花予報」

饒村曜気象予報士
離岸距離が大きくなってきた日本海の寒気の南下を示す筋状雲(1月25日15時)

今冬一番の寒波

 令和6年(2024年)1月23日から日本付近に南下してきた今冬一番の寒波(寒気の中心は上空約5500メートルで氷点下40度以下)のピークは過ぎつつあります。

 日本海には、寒気の南下を示す筋状の雲は、大陸から筋状雲の発生する海域までの距離(離岸距離)がのきくなってきました(タイトル画像)。

 離岸距離が短いほど強い寒気の南下を示しますので、寒気の南下が弱まってきたことを示しています。

 強い寒気の目安として、上空約5500メートルの気温が使われています。この気温が氷点下30度なら強い寒気の目安、氷点下36度なら大雪の目安とされています。

 現在、南下してきている寒気は、1月26日朝には、日本上空約5500メートルで氷点下36度以下の範囲がほとんどなくなり、氷点下30度以下の範囲も東北地方までとなっています(図1)。

図1 上空約5500メートルの気温分布(左は1月24日朝の実況、右は1月26日朝の予報)
図1 上空約5500メートルの気温分布(左は1月24日朝の実況、右は1月26日朝の予報)

 冬型の気圧配置が強まると、日本海側の地方は雪、太平洋側の地方は晴れるというのは、一般的な話です。

 南下する寒気が強いと積乱雲が発達し、脊梁山脈(本州を背骨のように連なっている一連の山脈)の中で標高の低い所をすり抜けたり、山脈を乗り越えたりして太平洋側に雪を降らせます。

 今回も、顕著な降雪が観測され、今後も継続すると見込まれる場合に発表される「顕著な大雪に関する気象情報」が福井県で発表されるなど、北陸地方を中心に大雪となりましたが、太平洋側の地方でも、雪雲が脊梁山脈の低いところ通って関ヶ原付近で大雪を降らせたため、岐阜県関ケ原町の名神高速道路での立ち往生が19時間も続き、陸上自衛隊が出動しました。

 また、仙台市でも脊梁山脈を乗り越えてきた雪雲によって13センチの積雪を記録しました。

 ただ、今冬一番の寒気は、長続きせず、1月26日には収束しそうです。

 地上天気図をみると、東側で気圧が低く、西側で気圧が高いという西高東低の気圧配置となっており、等圧線がほぼ南北にのびています。

 等圧線の間隔が狭いと強い風が吹き、強い寒気が南下してきますが、この等圧線の間隔が西日本から広がってくる予想となっています(図2)。

図2 実況天気図(左は1月25日9時の実況)と予想天気図(中は26日9時の予想、右は27日9時の予想)
図2 実況天気図(左は1月25日9時の実況)と予想天気図(中は26日9時の予想、右は27日9時の予想)

 このため、26日は山陰から北の日本海側では雪が降るでしょう。近畿~東海や北日本の太平洋側は雲が広がりやすく、北日本の太平洋側では雪の降る所がありそうです。

 また、南西諸島は雲が多く所によりにわか雨があるでしょう。その他の地域は概ね晴れる見込みです。

 最高気温は平年並みか平年より低い予報が多くなっています

真冬日と冬日の推移

 令和5年(2023年)12月22日(冬至)の頃に西日本を中心に南下してきた寒波(冬至寒波)では、福岡では最高気温が12月21日に3.7度、22日に4.3度と、平年の最低気温をも下回る厳しい寒さでした。

 12月22日に全国で最高気温が0度を下回った真冬日を観測したのは264地点(気温を観測している全国914地点の約29パーセント)、最低気温が0度を下回った冬日は774地点(約85パーセント)もありました(図2)。

図2 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2023年11月1日~2024年1月28日、1月26日以降は予報)
図2 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2023年11月1日~2024年1月28日、1月26日以降は予報)

 1月中旬にも寒波が南下してきましたが、冬至寒波に比べるとが、冬日や真冬日のピークが小さく、冬至寒波には及ばなかったといえるでしょう。

 また、今回の今冬一番の寒波も、1月24日の真冬日は255地点(約28パーセント)、冬日は752地点(約82パーセント)と、冬日や真冬日を観測した地点数では冬至寒波には、わずかに及びませんでした。

 しかし、25日の東京都心の最低気温が氷点下1.1度と、今冬初の冬日(最低気温が氷点下の日)となるなど、今冬一番の寒さとなった所が少なくありません。

東京都心の最高気温と最低気温の推移

 今冬の東京都心の最高気温と最低気温の推移をみると、12月の中旬までは、平年よりかなり高い気温を観測する日が多く、12月15日に最高気温20.2度、翌16日に最高気温21.1度を観測し、12月としては異例の連日の続20度超えでした(図3)。

図3 東京の最高気温と最低気温の推移(1月26日〜2月1日は気象庁、2月2日〜2月10日はウェザーマップの予報)
図3 東京の最高気温と最低気温の推移(1月26日〜2月1日は気象庁、2月2日〜2月10日はウェザーマップの予報)

 しかし、冬至(12月20日)の頃の冬至寒波以降は、最高気温が15度を超える日がほとんどなくなり、最低気温が0度に近い日がときどき出現しています。

 そして、1月25日の最低気温は氷点下1.1度と冬日でした。

 ただ、1月26日以降は、最高気温、最低気温ともに次第に右肩上がりとなっている平年値より高い予想で、今冬の寒さのピークは過ぎようとしています。

暖冬とさくらの開花

 今冬は、冬至寒波や1月の今冬一番の寒波がありましたが、寒気が流れ込む回数が少なく長続きもしない、暖冬となっています。

 このため、休眠打破と呼ばれるさくらの開花を早める真冬の寒さは弱めとみられています。

 ただ、令和2年(2020年)ほどの大暖冬ではないため、休眠打破は記録的な弱さではないところが多いとみられています。

 そして、この先2月にかけても冬型が続かず気温が高めの日が多い見込みで、3月も平年よりは気温の高い日が多くなるとみられます。

 ウェザーマップが1月25日に発表した「さくらの開花予想」によると、令和6年(2024年)のさくらは、一部地域を除いて平年より4日〜1週間くらい早いところが多くなりそうです(図4)。

図4 さくらの開花予報(ウェザーマップが1月25日に発表した予報)
図4 さくらの開花予報(ウェザーマップが1月25日に発表した予報)

 そのあと4月も気温は高めとなる予想で、東北北部や北海道も平年より早くなりそうです。

 寒い、寒いといっているうちに、春はそこまできています

タイトル画像、図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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