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台風13号が関東接近 台風13号本体の雨が降る前に降る熱帯低気圧等の雨にも警戒

饒村曜気象予報士
元台風12号の熱帯低気圧と後に台風13号に発達する熱帯低気圧(9月5日15時)

2つの熱帯低気圧

 8月30日9時にトラック諸島近海で発生した台風12号は、発達しながら北西に進み、9月2日には小笠原近海に達し、その後は進路を西よりに変えて、9月3日15時に小笠原近海で熱帯低気圧に変わりました。

 この熱帯低気圧は、黒潮上という暖かい海面水温の海域を進みましたので、急速に衰えることがなく、九州の南東海上にあってほとんど停滞しています(タイトル画像)。

 また、日本の南海上にも熱帯低気圧があり、北上しながら発達し、9月5日21時に台風13号になりました(図1)。

図1 台風13号の進路予報(9月6日0時)
図1 台風13号の進路予報(9月6日0時)

 日本の南の熱帯低気圧の周辺は、海面水温が29度~30度と、台風が発達する目安の海面水温を大きく上回っているため、台風13号に発達したのですが、上層の風が大きく発達しにくい場となっていますので、暴風域を持つまでは発達しないと考えられています。

 とはいえ、台風となった以上、最大風速が17.2メートル以上あり、大きな被害が発生する可能性があります。

 しかも、広い範囲に雨雲を伴っていますので、台風が接近してきた場合には、大雨に警戒が必要な台風です。

 この台風13号は、北上して9月7日(木)から8日(金)にかけて関東甲信に接近するおそれがありますので、関東甲信地方では、9月6日(水)から7日にかけて土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水に注意・警戒してください。

 伊豆諸島では、7日は強風や高波にも注意・警戒が必要です。

 なお、令和5年(2023年)は、これまで台風の発生数が12個、接近数が6個、上陸数は1個と、平年より若干少なくなっています(表)。

表 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは一致しない)
表 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは一致しない)

台風13号接近前の大気不安定による局地的な豪雨

 台風13号が接近してきた場合には、大雨に警戒が必要ですが、台風13号接近前の雨から別の理由で雨に対する警戒が必要です。

 まず、9月4日頃から続いている下層の熱帯由来の暖湿気の北上によって、大気が非常に不安定となって発生する局地的な豪雨です。

 東北地方から山陰地方にかけて潜在的な前線が存在していますので、上空に入っている寒気によって、より大気が不安定となり、気象庁が記録的短時間大雨情報を相次いで発表する事態となっています。

 記録的短時間大雨情報は、これまで東北から北陸地方で7回発表となっていますが、9月6日も発表の可能性があります。

記録的短時間大雨情報

9月4日12時00分 栃木県・真岡市付近で約110ミリ

9月4日12時00分 茨城県・桜川市付近で約100ミリ

9月4日12時30分 栃木県・益子町付近で約110ミリ

9月4日13時00分 栃木県・宇都宮市付近で約110ミリ

         芳賀町付近で約110ミリ

9月4日15時30分 栃木県・宇都宮市付近で約110ミリ

         さくら市付近で約110ミリ

9月4日16時50分 栃木県・塩谷町付近で約110ミリ

9月5日16時00分 新潟県・糸魚川市青海付近で約120ミリ

9月5日21時30分 島根県・海士町付近で約100ミリ

台風12号から変わった熱帯低気圧による豪雨

 台風12号から変わった熱帯低気圧が四国に接近する見込みで、四国を中心として大雨の可能性があります。

 図2は、気象庁が9月5日21時に発表した6日6時の予想雨量分布ですが、四国の足摺岬の南海上を中心とした半円形の雨雲が予想されています。

図2 今後の雨(9月5日21時に発表した6日6時の予想雨量分布)
図2 今後の雨(9月5日21時に発表した6日6時の予想雨量分布)

 この半円形の中心が熱帯低気圧の位置で、熱帯低気圧の北東に位置する室戸岬付近では、熱帯低気圧の南東風が吹き付ける南東斜面を中心とした大雨を予想しています。

 そして、気象庁は、9月5日21時30分に「大雨と雷及び突風に関する全般気象情報」を発表し、四国地方では、6日午前中から午後にかけて、線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があるとしています。

 また、9月6日0時30分の「大雨と雷及び突風に関する全般気象情報」では、四国地方に加え、北陸地方でも線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があるとしています。

【追記(9月6日10時00分)】

 気象庁は、9月6日5時6分に東海地方でも、6日午後から7日午前中にかけて、線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があると発表しました。

【追記(9月6日11時20分)】

 気象庁は、9月6日11時6分に北陸地方では引き続き6日午後にかけて、東海地方では6日午後から7日午前中にかけて、伊豆諸島では6日夜から7日午前中にかけて、線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があると発表しました。

線状降水帯の予報

 気象庁では、令和12年(2030年)までの10年計画で、線状降水帯の予測精度向上を目指していますが、令和12年まで待つことなく、完成した技術を用いた情報の発表を計画しています。

 その第一弾が、令和3年より始まった「顕著な大雨に関する情報」です。非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている状況を、「線状降水帯」というキーワードを使って解説する情報です。

 線状降水帯に関する情報の第2弾が、昨年、令和4年から始まった全国を11の予報区に分けての「線状降水帯の半日前予報」で、今回は、四国地方と北陸地方に発表となりました。

 線状降水帯の予報は、適中は4回に1回程度、見逃しは3回に2回程度といわれていますので、まだまだ精度が悪い予報です。

 しかし、線状降水帯の予報が発表された時に線状降水帯が発生しなかった10回のうち4回は、3時間に140ミリ以上という大雨警報級の激しい雨が降っていますので、線状降水帯の予報が発表された四国地方と北陸地方は厳重な警戒が必要です。

台風12号から変わった熱帯低気圧と台風13号の間にも注意

 台風12号から変わった熱帯低気圧に伴う雲と、台風13号に伴う雲の間にも、多くの積乱雲があります(タイトル画像)。

 このため、台風12号から変わった熱帯低気圧に伴う雨が降ったあと、台風13号に伴う雲雨が降るまでの間も雨が降り続く見込みです(図3)。

図3 雨と風の分布予報(9月6日9時の予想)
図3 雨と風の分布予報(9月6日9時の予想)

 雨量が多くなくても、雨が続くことにより、土の中の水分量がなかなか減らず、ここに台風13号の雨が降ると土砂災害の危険性がより高まります。

 関東に接近する可能性のある台風13号に警戒が必要ですが、台風13号本体の雨が降る前に降る熱帯低気圧等の雨にも警戒が必要です。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図1、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図2、表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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