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台風6号で九州・四国に線状降水帯発生 台風7号はお盆休みの東日本に接近・上陸の可能性あり

饒村曜気象予報士
東シナ海の台風6号の雲と、南鳥島近海の台風7号の雲(8月9日15時)

台風6号と線状降水帯

 台風6号は暴風域を伴って九州の西の海上を北上し、8月10日(木)朝にかけて対馬海峡に進み、その後、朝鮮半島に進む見込みです。

 九州南部では、8月9日(水)に線状降水帯が発生しましたが、引き続き、九州北部では10日午前中にかけて、線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があります(図1)。

図1 台風6号による九州の線状降水帯(左は8月9日10時20分の屋久島・種子島、右は8月9日21時00分の熊本・宮崎県)
図1 台風6号による九州の線状降水帯(左は8月9日10時20分の屋久島・種子島、右は8月9日21時00分の熊本・宮崎県)

 また、台風から少し離れている高知県でも、8月10日0時30分頃から線状降水帯が発生しています。

 また、1時30分頃には高知、大分、宮崎の各県で、2時00分頃には、高知、愛媛、大分、宮崎の各県で線状降水帯が発生しています(図2)。

図2 台風6号による四国・九州の線状降水帯(8月10日2時00分)
図2 台風6号による四国・九州の線状降水帯(8月10日2時00分)

 すでに西日本の太平洋側を中心に600ミリ以上の雨が降っており、更なる少しの雨でも大規模災害が発生する可能性が高まっています(図3)。

図3 96時間降水量(8月6日0時~9日24時)
図3 96時間降水量(8月6日0時~9日24時)

 西日本では、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫、暴風に厳重に警戒し、高波に警戒してください。

お盆休みを襲う台風7号

 東シナ海の危険な台風6号に加え、南鳥島近海には、もっと危険な台風7号があります。

 この台風7号は、今後、発達しながら北西に進み、8月10日から12日(土)頃にかけて暴風域を伴いながら、小笠原諸島に接近する見込みです(図4)。

図4 台風6号・台風7号の進路予報(8月9日21時の予報)と海面水温
図4 台風6号・台風7号の進路予報(8月9日21時の予報)と海面水温

 小笠原諸島では、暴風や高波に警戒し、土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水に注意・警戒してください。

 台風が発達する目安の海面水温は27度と言われていますが、台風7号は海面水温が29度以上の海域を進む予報となっていますので、中心気圧が950ヘクトパスカル、最大風速40メートル、最大瞬間風速60メートルの強い台風になる予報となっています。

 また、東~西日本の南海上は、日本列島に記録的な暑さをもたらした太平洋高気圧に覆われていたため晴れて、強い日射で海面水温が高くなっています。加えて、台風が通過して海面をかき混ぜて海面水温が下がることがありませんでした。

 その後、台風7号は、東~西日本の南海上の海面水温も高いことから、あまり衰えることなく北西へ進み、8月14日(月)頃にかけて、暴風域を伴って強い勢力で東日本や西日本に近づくおそれがあります。

 ひょっとしたら、東日本に上陸するかもしれません。

エルニーニョ現象と台風

 現在、東部太平洋赤道域の海面水温が平年より高くなるというエルニーニョ現象が発生しています。

 今年の春までは、東部太平洋赤道域の海面水温が平年より低くなるというラニーニャ現象が2年半という長きにわたって続いていましたので、様変わりです。

 エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、赤道域で積乱雲の発生場所が変わり、台風の性質などが変わり、地球規模で異常気象が発生するとされています。

 気象庁ホームページでは、エルニーニョ現象・ラニーニャ現象と台風との関係は表のようにまとめています。

表 エルニーニョ現象・ラニーニャ現象発生時の台風の特徴(気象庁ホームページより)
表 エルニーニョ現象・ラニーニャ現象発生時の台風の特徴(気象庁ホームページより)

 昨年、令和4年(2022年)はラニーニャ現象の最中でしたが、台風の発生位置は北東にずれて発生していました。

 このため、日本近海で発生する台風が多くなり、台風が発生するとすぐに日本に影響したということが多々ありました。

 エルニーニョ現象の今年、令和5年(2023年)は、7月末までに平年であれば8個発生しているところが、8月の半ばになっても7個と、やや少ない発生数です。

 エルニーニョ現象発生時には、台風発生数が少なくなるという傾向が出ている可能性があります。

 また、これまでの7個の台風発生海域をみると、まだ例数は少ないのですが、南東側にずれています(図5)。

図5 エルニーニョ現象時の台風発生海域(令和5年(2023年)の台風1号~台風7号、丸数字が台風番号)
図5 エルニーニョ現象時の台風発生海域(令和5年(2023年)の台風1号~台風7号、丸数字が台風番号)

 となると、気になるのは、表にある「夏、最も発達した時の台風の中心気圧が平常時よりも低い傾向がある」というところです。

 事実、今年の台風2号は、フィリピン東海上で猛烈な台風に発達しています。

 そして、沖縄近海から日本の南海上を進んでいますが6月の初めということもあり、海面水温がまだ低く、勢力としては弱まりましたが、日本列島の梅雨前線に向かって広い範囲で大量の水蒸気を送り続けたことで、連続6県(高知・和歌山・奈良・三重・愛知・静岡)で線状降水帯が発生し大雨となりました。

 台風6号も、大型で非常に強い台風にまで発達し、線状降水帯が発生して大雨が降っています。

 台風7号も、かなり発達する予報ですので、台風2号や台風6号のように線状降水帯が発生するかもしれません。

 しかも、台風7号が東日本や西日本に近づくのが、ちょうどお盆休みの期間で、多くの人が普段とは違う場所に移動しています。

 お盆期間ということで普段通りの防災対策がとれない可能性があり、混乱が広がる可能性があります。

 最新の情報入手に努め、早めの行動と、臨機応変の予定変更が必要です。

 今年は台風に対して、特に警戒すべき年になりそうです。

タイトル画像、図1、図2、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図5、表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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