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東~西日本を中心とした記録的な猛暑と台風4号の東にあった熱帯起源の帯状の雲の北上、再度の東北の大雨

饒村曜気象予報士
台風4号の円形の雲と南海上から北上している帯状の雲(7月17日15時)

今年一番の暑さ

 令和5年(2023年)7月中旬は、太平洋高気圧の強まりとともに、東北南部から東日本・西日本では晴れて気温が記録的に高い日が続いています。

 これまで、今年の最高気温は7月16日に群馬県・桐生で観測した39.7度ですが、7月17日に愛知県・豊田で39.1度を観測し、連日40度近い気温を観測しています。

 また、最高気温が35度以上の猛暑日は195地点(気温を観測している全国915地点の約21パーセント)、最高気温が30度以上の真夏日は647地点(約71パーセント)と、どちらも今年最多となりました(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日~7月17日)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日~7月17日)

 最高気温が25度以上の夏日は816地点(約89パーセント)と、7月10日の884地点(約97パーセント)には及びませんでしたが、これは、北海道で気温が平年並みであったことによります。

 秋田県を中心に大雨を降らせた梅雨前線は、弱まって天気図上から消えていましたが、次第に顕在化し、7月18日は東北地方で再び停滞すると予想されています(図2)。

図2 予想天気図(左は7月18日9時、右は7月19日9時の予想)
図2 予想天気図(左は7月18日9時、右は7月19日9時の予想)

 北海道と東北北部は平年並みの気温ですが、その他の地方は、7月17日と同様、優勢な太平洋高気圧におおわれ、強い日射しにより、平年より気温が高くなる見込みです。

 最高気温は埼玉県・熊谷で39度、前橋、さいたま、名古屋、岐阜で38度の予想ですので、ひょっとしたら、めったに出現しない40度以上を観測する所があるかもしれません(図3)。

図3 最高気温の分布予報(7月18日の予報)
図3 最高気温の分布予報(7月18日の予報)

 7月18日は、関東から東海を中心に、猛暑日が150地点位、真夏日が545地点位、夏日が780地点位と予想されていますので、前日の7月17日より北陸地方の気温が少し下がる分だけ減りますが、それでも平年の7月中旬に比べれば、かなり多い地点数です。

 7月17日と同様、最大限の熱中症対策が必要です。

熱中症警戒アラート

 熱中症は、気温が高いだけでなく、湿度が高いとより起きやすくなります。

 このため、熱中症対策には気温ではなく、湿度も考慮してある「暑さ指数」がつかわれており、気象庁と環境省は共同して暑さ指数が33以上の極めて危険と予想されるときに熱中症警戒アラートを発表しています(前日17時と当日5時に発表)。

 熱中症警戒アラートは、7月16日に当日発表で21地方に、7月17日は前日発表で21地方、当日発表で東京や大阪を含む32地方に発表されました。

 7月17日の32地方というのは、今年最多です。

 そして、7月18日は前日発表で22地方です。

【熱中症警戒アラート(7月18日:前日発表)】

(関東甲信) 埼玉、東京、千葉、神奈川、長野、山梨 

(東海) 静岡、愛知、三重

(近畿) 大阪、兵庫、和歌山

(中国・四国) 広島、徳島、香川、愛媛

(九州北部) 長崎、熊本

(九州南部・奄美) 宮崎、鹿児島(奄美地方を除く)、鹿児島(奄美地方)

(沖縄) 沖縄(大東島地方)

 熱中症警戒アラートは、前日発表で対象となっていなくても、当日発表で対象の地方がさらに増えるかもしれません。

【追記(7月18日10時)】

 7月18日の熱中症警戒アラートは、当日発表で高知が追加され、23地方となりました。

 ただ、熱中症警戒アラートは、極めて危険な地方に対しての発表です。暑さ指数32の危険となっている地方も多くあり、広い範囲で熱中症対策が必要となっています。

梅雨前線の東北での停滞

 次第に顕在化してきた梅雨前線は、東北地方で再び停滞すると予想されていますので、山形県から秋田県では、18日から20日頃にかけて激しい雨が降り、再び100ミリを超える大雨となる所があるでしょう(図4)。

図4 48時間予想降水量(7月18日6時~7月20日6時)
図4 48時間予想降水量(7月18日6時~7月20日6時)

 これまでの大雨により地盤が緩んでいる所では、少しの雨でも災害が発生するおそれがあります。引き続き、土砂災害や河川の増水・氾濫には厳重に警戒してください。

 また、梅雨前線は、19日から20日頃にかけて南下することから、北陸地方では警報級の大雨となるおそれがあります。

 気象庁では、早期注意情報を発表し、5日先までに警報を発表する可能性を、「高」「中」の2段階で示しています。

 大雨に関する早期注意情報によると、7月18日朝~夜遅くでは、秋田県に「高」があり、岩手・山形・群馬の各県で「中」があります(図5)。

図5 大雨に関する早期注意情報(7月18日~7月20日)
図5 大雨に関する早期注意情報(7月18日~7月20日)

 7月19日は「高」は引き続き秋田県だけですが、「中」は岩手・山形の各県と北陸各県、茨城・佐賀の各県に広がります。

 そして、7月20日も秋田・山形と北陸各県、茨城県が「中」です。

 東北日本海側から北陸は降り続く雨に警戒が必要です。

熱帯起源の雲の帯

 南シナ海から華南へ西進していた台風4号は、7月19日にはベトナムで熱帯低気圧に変わる見込みです(タイトル画像)。

 この台風4号の卵である熱帯低気圧がフィリピン近海にあったとき、すぐ東側には発達した積乱雲の塊がありました。

 この積乱雲の塊は、熱帯低気圧(台風4号)にとりこまれるでもなく、独自に渦を巻いて別の熱帯低気圧になるわけでもなく、帯状になりながら北上を続け、沖縄県を通過して東シナ海に入っています(図6)。

図6 北上する熱帯起源の雲の帯(左から7月15日15時、7月16日15時、7月17日15時)
図6 北上する熱帯起源の雲の帯(左から7月15日15時、7月16日15時、7月17日15時)

 沖縄県では、積乱雲の塊の通過によって強い雨や発雷がありましたが、問題は、今後です。

 帯状になった積乱雲の先には梅雨前線がありますので、梅雨前線を刺激し、活発化させる可能性があるからです。

 最新の気象情報の入手に努め、大雨に注意してください。

タイトル画像、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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