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関東甲信の梅雨明けはいつ 連日の熱中症警戒アラート

饒村曜気象予報士
東日本の太平洋側を中心とした晴天域(7月11日15時)

大雨特別警報

 令和5年(2023年)7月10日の明け方から朝にかけては、太平洋高気圧が強まって西に張り出し、その縁辺をまわるように暖かくて湿った空気が西日本に流入しました。

 対馬海峡から北陸にかけて梅雨前線が停滞していたため、梅雨前線と太平洋高気圧に挟まれる形で、多量の水蒸気が狭い場所に集中して流れ込みました。

 このため、九州北部では線状降水帯が発生し、気象庁は「顕著な大雨に関する情報」を5回も発表しました。

 これは、線状降水帯が発生したとき、その旨を伝えることによってより一層の防災対応をとってもらうための情報で、3時9分に福岡県に、4時39分に福岡・佐賀県に、5時9分に福岡・大分・佐賀県に、8時20分に福岡・大分・佐賀県に、8時29分に福岡・大分県で線状降水帯が発生したという内容でした。

 そして、福岡県と大分県は大雨特別警報が発表となりました。

【令和5年(2023年)7月10日の大雨特別警報】

6時40分 福岡県朝倉市・東峰村 発表

7時20分 福岡県添田町 発表、福岡県朝倉市・東峰村 継続

7時30分 福岡県久留米市・八女市・うきは市 発表、福岡県朝倉市・東峰村・添田町 継続

8時00分 大分県日田市 発表

9時5分 大分県中津市 発表、大分県日田市 継続

17時30分 大雨特別警報から大雨警報に切り替え(福岡県久留米市・八女市・うきは市・朝倉市・東峰村・添田町)

17時31分 大雨特別警報から大雨警報に切り替え(大分県中津市・日田市)

 福岡県と大分県で大雨特別警報が発表となるほどの大雨をもたらした一因となった太平洋高気圧の強まりは、関東地方を中心に猛烈な暑さをもたらしました。

関東地方を中心とした猛暑

 令和5年(2023年)7月10日に全国で1番気温が高かったのは山梨県・大月の38.7度と、今年初めて38度を超えました。

 東京では、今年初めて熱中症警戒アラートが発表となりましたが、最高気温は36.5度となり、今年初めて猛暑日となりました。

 最高気温が25度以上という夏日を観測したのは884地点(気温を観測している全国915地点の約97パーセント)とこれも今年最多でした。

 7月11日は、最高気温が30度以上の真夏日を観測したのが574地点(約63パーセント)と、今年一番となりました(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日〜7月11日)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日〜7月11日)

 しかし、最高気温が25度以上の夏日を観測したのが860地点(約94パーセント)と前日の10日には及びませんでした。

 また、最高気温が35度以上の猛暑日を観測したのが57地点(約6パーセント)と、7月7日の62地点(約7パーセント)には及びませんでした。

 とはいえ、全国の多くの地点で記録的な暑さになったことには変わりがありません。

今後の天気予報

 強まった太平洋高気圧の縁辺をまわるように暖かくて湿った空気が梅雨前線に向かって北上しているという状態は、しばらく続く見込みです(図2)。

図2 予想天気図(7月12日9時の予想)
図2 予想天気図(7月12日9時の予想)

 福岡県と大分県で大雨特別警報が発表となった時のように、大雨となる可能性は低いのですが、大気が不安定となり、局地的に強い雨が降る可能性があります。

 これまでに大雨が降った地方では、土の中に大量の水分が溜まって土砂災害が発生しやすくなっていますので、少しの雨でも土砂災害等には注意してください。

 そして、関東を中心とした猛暑も続く見込みです(図3)。

図3 各地の天気予報(7月12日~18日は気象庁、19日以降はウェザーマップの予報で数字はともに最高気温)
図3 各地の天気予報(7月12日~18日は気象庁、19日以降はウェザーマップの予報で数字はともに最高気温)

 東京は、連日30度以上の真夏日の予報というより、半分が35度以上の猛暑日という予報ですし、しばらくは傘マーク(雨の予報)がありません。

 すでに梅雨明けしているかのような天気予報です。

 関東甲信地方の梅雨明けの平年は、7月19日ですが、いつ梅雨明けしてもおかしくない天気予報となっています(表)。

表 令和5年(2023年)の梅雨
表 令和5年(2023年)の梅雨

 関東甲信地方の梅雨明けが最も早かったのは、平成30年(2018年)の6月29日ですので、今週に梅雨明けしたとしても、記録的な早さではありませんが、平年より早い梅雨明けということができます。

 また、6月25日~26日に梅雨明けをした那覇と鹿児島県奄美大島の名瀬では、ほとんどの日でお日様マーク(晴れ)ですが、東海から西日本も、7月14日以降は連日にわたって、お日様マークです。

 今週半ばには、九州から東日本の太平洋側で、続々と平年より早い梅雨明けの発表があるかもしれません。

 梅雨明けするしないにかかわらず、気温が高い状態は続きます。

 熱中症警戒アラートが7月12日も各地で発表となっています。

【熱中症警戒アラート(7月12日)】

東北   福島

関東甲信 茨城・群馬・埼玉・東京・千葉・神奈川

東海   静岡・愛知・三重

四国   徳島

九州南部・奄美  鹿児島(奄美地方を除く)・奄美地方

沖縄   沖縄本島地方・八重山地方

 これは暑さ指数33以上の「極めて危険」であるときに発表となるものです(図4)。

図4 7月12日の「暑さ指数」の日最高値の予想と熱中症警戒アラート(極めて危険)
図4 7月12日の「暑さ指数」の日最高値の予想と熱中症警戒アラート(極めて危険)

「厳重警戒」の上の「危険」のさらに上が「極めて危険」です。

 熱中症警戒アラートが発表となっている地方はもちろん、発表となっていない地方でも、熱中症には最大限の警戒が必要な日が続きます。

タイトル画像、図2、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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