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九州で大雨特別警報、東京では今年初の猛暑日と熱中症警戒アラート

饒村曜気象予報士
大雨特別警報(7月10日14時13分現在)

線状降水帯の発生

 令和5年(2023年)7月10日の明け方から朝にかけては、太平洋高気圧が強まって西に張り出し、その縁辺をまわるように暖かくて湿った空気が西日本に流入しました(図1)。

図1 梅雨前線に向かって流入する湿った空気の流れを示す地上天気図と衛星画像(7月10日9時)
図1 梅雨前線に向かって流入する湿った空気の流れを示す地上天気図と衛星画像(7月10日9時)

 対馬海峡から北陸にかけて梅雨前線が停滞していたため、九州を中心に大雨が降っています。

 九州では線状降水帯が発生し、気象庁は「顕著な大雨に関する情報」を5回も発表しました。

 これは、線状降水帯が発生したとき、その旨を伝えることによってより一層の防災対応をとってもらうための情報で、3時9分に福岡県に、4時39分に福岡・佐賀県に、5時9分に福岡・大分・佐賀県に、8時20分に福岡・大分・佐賀県に、8時29分に福岡・大分県に対しての発表です(図2)。

図2 九州の線状降水帯(左:7月10日3時0分、右:7月10日8時20分)
図2 九州の線状降水帯(左:7月10日3時0分、右:7月10日8時20分)

 そして、福岡県と大分県は大雨特別警報が発表となりました(タイトル画像)。

【記録的な大雨に関する全般気象情報】

令和5年(2023年)7月10日6時45分 気象庁発表

福岡県に大雨特別警報を発表しました。これまでに経験したことのないような大雨となっています。何らかの災害がすでに発生している可能性が高く、警戒レベル5に相当します。命の危険が迫っているため直ちに身の安全を確保しなければならない状況ですので、最大級の警戒をしてください。

【記録的な大雨に関する全般気象情報】

令和5年(2023年)7月10日8時7分 気象庁発表

大分県に大雨特別警報を発表しました。福岡県には大雨特別警報を発表中です。…

 太平洋高気圧が強まって西に張り出し、梅雨前線に向かって暖かくて湿った空気の流入は、11日まで続く見込みです。

 この間、地上天気図はほとんど変化がない見込みです(図3)。

図3 予想天気図(左は7月11日9時、右は7月12日9時の予想)
図3 予想天気図(左は7月11日9時、右は7月12日9時の予想)

 気象庁では、早期注意情報を発表し、5日先までに警報を発表する可能性を、「高」「中」の2段階で示しています。

 大雨に関する早期注意情報によると、7月11日(火)朝~夜遅くでは、九州北部に「高」があり、中国地方から北陸、東北日本海側、北海道のオホーツク海沿岸までの広い範囲で「中」となっています(図4)。

図4 早期注意情報(上段:7月11日朝~夜遅く、中段:7月12日、下段:7月13日)
図4 早期注意情報(上段:7月11日朝~夜遅く、中段:7月12日、下段:7月13日)

 そして、7月12日(水)は九州北部と北陸、東北日州北部から東日本の日本海側、東北の日本海側では、13日にかけて大雨の可能性が北部から東日本の日本海側、東北の日本海側では、13日にかけて大雨の可能性があります。

 前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込むため、大気が非常に不安定となり、雷を伴った激しい雨や局地的に非常に激しい雨が降る見込みです。

 西日本では、これまでの大雨により地盤の緩んでいる所がありますので、土砂災害に厳重に警戒し、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒してください。

 これは、太平洋高気圧が強まってきており、梅雨前線がゆっくり北上していることに対応しています。

猛烈な暑さ

 太平洋高気圧が強まって西に張り出していることから、太平洋側の地方を中心に晴れて気温が高くなってきました。

 令和5年(2023年) 7月10日に全国で一番気温が高かったのは山梨県・大月の38.7度と、今年初めて38度を超えました。

 次いで、山梨県・勝沼の38.3度、埼玉県・さいたまの38.0度、埼玉県・所沢の38.0度、東京都・練馬の37.8度と、関東を中心に体温以上の厳しい暑さとなりました。

 また、最高気温が25度以上という夏日を観測したのは884地点(気温を観測している全国915地点の約97パーセント)とこれも今年最多でした(図5)。

図5 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日〜7月10日)
図5 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日〜7月10日)

 しかし、最高気温が30度以上の夏日を観測したのが486地点(約53パーセント)と、7月6日の540地点に及びませんでした。

 また、最高気温が35度以上の猛暑日を観測したのが53地点(約6パーセント)と、7月7日の62地点には及びませんでした。

 とはいえ、全国の多くの地点で記録的な暑さになったことには変わりがありません。

東京の最高気温・最低気温

 7月10日の東京には、今年初めて熱中症警戒アラートが発表となりましたが、最高気温は36.5度と、今年初めて35度を超えて猛暑日となりました。

 そして、7月下旬までは最高気温が30度以上の真夏日が続くという予報がでています(図6)。

図6 東京の最高気温と最低気温の推移(7月11~17日は気象庁、7月18~26日はウェザーマップの予報)
図6 東京の最高気温と最低気温の推移(7月11~17日は気象庁、7月18~26日はウェザーマップの予報)

 また、最低気温が25度以上の真夏日も続く予報となっています。

 梅雨明けはしていませんが、晴れて気温の高い日が続きますので、熱中症などの暑さ対策が必須です。

 ただ、このまま暑い夏で終わるかというと疑問です。

 というには、冷夏になる可能性があるエルニーニョ現象(東部太平洋赤道域の海面水温が平年より高くなる現象)が発生しているからです(図7)。

図7 エルニーニョ監視海域(東部太平洋赤道域)の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値
図7 エルニーニョ監視海域(東部太平洋赤道域)の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値

 気象庁は7月10日にエルニーニョ監視速報を発表し、春からエルニーニョ現象が続いているとみられ、今後、秋にかけて、エルニーニョ現象が続く可能性が高い(確率は90%)と発表しています。

 現在の太平洋高気圧の強まりは、今年春まで2年間続いていたラニーニャ現象(猛暑をもたらすとされる東部太平洋赤道域の海面水温が平年より低くなる現象)のなごりで一時的かもしれませんので、今後の気象情報に注意してください。

タイトル画像、図1、図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図3、図7の出典:気象庁ホームページ。

図5の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図6の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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