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西日本〜東北では11日にかけて大雨 今週早々にも関東甲信等で梅雨明けか?

饒村曜気象予報士
梅雨前線に伴う東西にのびる雲域(7月9日12時)

九州北部から山陰の大雨

 令和5年(2023年)7月9日(日)は、対馬海峡~東北南部に梅雨前線が停滞し、前線に向かって暖かくて湿った空気が流入しました(タイトル画像)。

 このため、西日本~東北の広い範囲で雨となり、日本海側を中心として雷を伴った非常に激しい雨が降りました(図1)。

図1 24時間降水量(7月9日0時~24時)
図1 24時間降水量(7月9日0時~24時)

 この雨は、夜にはいったん弱ましたが、7月10日(月)には九州北部には再び活発な雨雲が流れ込み、非常に激しい雨の降る所がある見込みです。

 気象庁は、7月10日3時9分に福岡県では線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いいるという内容の、顕著な大雨に関する情報を発表しました。

 福岡県では命に危険が及ぶ土砂災害や洪水による災害発生の危険度が急激に高まっていますので、最新情報を入手し、警戒してください。

【追記(7月10日8時30分)】

 線状降水帯は大分県と佐賀県にも発表となり、福岡県と大分県には大雨特別警報が発表となりました。大雨特別警報では、「直ちに命を守る行動をとってください」という呼びかけで、「直ちに避難してください」ではありません。避難行動をするのは、大雨警報や避難指示などが発表されたときで大雨特別警報が発表されたときではありません。

 気象庁では、早期注意情報を発表し、5日先までに警報を発表する可能性を、「高」「中」の2段階で示しています。

 大雨に関する早期注意情報によると、7月10日(月)朝~夜遅くでは、九州北部と中国で「高」、北陸と岐阜・長野で「中」となっています(図2)。

図2 早期注意情報(上段:7月10日朝~夜遅く、中段:7月11日、下段:7月12日)
図2 早期注意情報(上段:7月10日朝~夜遅く、中段:7月11日、下段:7月12日)

 そして、7月11日(火)は九州北部と北陸で「中」、7月12日(水)は北陸で「中」となっています。

 西日本~東日本の日本海側では、7月9日(日)より大雨のトーンが落ちるものの、11日(水)にかけて大雨の可能性があることに変わりがありません。

 前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込むため、大気が非常に不安定となり、雷を伴った激しい雨や局地的に非常に激しい雨が降る見込みです。

 西日本では、これまでの大雨により地盤の緩んでいる所がありますので、土砂災害に厳重に警戒し、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒してください。

 これは、太平洋高気圧が強まってきており、梅雨前線がゆっくり北上していることに対応しています。

各地の10日間予報

 令和5年(2023年) 7月9日に全国で1番気温が高いのは、三重県紀伊長島町・紀伊長島の35.1度で、北海道北見市・北見と宮崎県日向市・日向がともに35.0度と、3地点が最高気温35度以上の猛暑日となりました。

 また、最高気温が30度以上という真夏日を観測したのは325地点(気温を観測している全国915地点の約36パーセント)、最高気温が25度以上の夏日を観測したのが849地点(約93パーセント)と、いずれも前日よりは増えています(図3)。

図3 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日〜7月9日)
図3 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日〜7月9日)

 各地の10日間予報をみると、新潟と札幌を除いて、ほとんどの日が30度以上の真夏日の予報で、35度以上の猛暑日も混じっています(図4)。

図 各地の10日間予報(7月10日~16日は気象庁、17日以降はウェザーマップの予報で数字はともに最高気温)
図 各地の10日間予報(7月10日~16日は気象庁、17日以降はウェザーマップの予報で数字はともに最高気温)

 これからは、猛暑日、真夏日、夏日といった夏を象徴する数字がどんどん更新してゆくものと思われます。

 また、6月25日~26日に梅雨明けをした那覇と鹿児島県奄美大島の名瀬では、連日お日様マーク(晴れ)ですが、関東甲信の東京と九州南部の鹿児島も連日にわたって、お日様マークです。

 関東甲信と九州南部は、いつ梅雨明けしてもおかしくない天気予報となっています。

 ちなみに、関東甲信地方の梅雨明けの平年は、7月19日です(表)。

表 令和5年(2023年)の梅雨
表 令和5年(2023年)の梅雨

 関東甲信地方の梅雨明けが最も早かったのは、平成20年(2018年)の6月29日ですので、今週に梅雨明けしたとしても、記録的な早さではありませんが、平年より早い梅雨明けということができます(図5)。

図5 関東甲信の梅雨明け
図5 関東甲信の梅雨明け

 なお、関東甲信は、梅雨入りは早いと梅雨明けが遅れ、梅雨入りが遅いと梅雨明けが早いという傾向がありますが、今年の梅雨入りはほぼ平年並みでしたので、この傾向はあてはまりません。

 また、四国の高松は7月11日以降、東海の名古屋と近畿の大阪は7月12日以降、中国の広島と九州北部の福岡は7月13日以降、連日にわたって、お日様マークです。

 今週半ばには、九州から東日本の太平洋側で、続々と梅雨明けの発表があるかもしれません。

 そして、北陸の新潟と東北の仙台でも、7月17日以降は、お日様マークが多く、来週の初めには北陸から東北も梅雨明けの可能性があります。

 梅雨がないとされる北海道を除いて全国的に平年より早い梅雨明けとなり、暑い夏が早目に始まる可能性があります。

今年の夏の予報

 気象庁は、6月20日に、7月から9月にかけての3カ月予報を発表しました(図6)。

図6 気象庁が発表した気温と降水量の3か月予報
図6 気象庁が発表した気温と降水量の3か月予報

 これによると、気温は南西諸島と西日本で高く、東日本では平年並みから高い、北日本で平年並みとなっています。

 ただ、今年の夏の予報は単純ではありません。

 今年の夏は、太平洋東部赤道域の海面水温が平年より高くなる「エルニーニョ現象」が発生する見込みです。一般的には、エルニーニョ現象は、日本付近に張り出す太平洋高気圧が弱くなって冷夏になりやすい傾向があります(ラニーニャ現象なら猛暑の傾向)。

 また、インド洋東部赤道域の海面水温が平年より低くなる「正のダイポールモード現象」が発生する見込みです。一般的には、正のダイポールモード現象は、上空のチベット高気圧が日本付近に張り出して暑くなる傾向があります。

 つまり、今年は正反対の現象をもたらすことが同時に起きるのです。

 どちらの影響がより強く出るのかという難しい判断の結果、

・地球温暖化の影響やエルニーニョ現象の影響で地球全体の温度が高く、特に北半球の亜熱帯域では顕著である

・冬に収束したラニーニャ現象の影響が残り、正のダイポールモード現象が発生することから太平洋高気圧が日本の南で西へ張り出す

・エルニーニョ現象の影響で偏西風は平年よりやや南寄りを流れる

等からの判断による3か月予報です(図7)。

図7 気象庁が発表した7月から9月に予想される海洋と大気の特徴
図7 気象庁が発表した7月から9月に予想される海洋と大気の特徴

 今年の夏は、冬に収束したラニーニャ現象の影響が残っているところに、インド洋の正のダイポールモード現象が発生することで、例年より早く太平洋高気圧が強まってきたと考えられますが、現在、太平洋高気圧を弱めるエルニーニョ現象が発生中です。

 このまま暑い夏が続くとは限らず、戻り梅雨の可能性もあり、最新の1カ月予報でフォローが必要な3カ月予報と思われます。

タイトル画像、図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3、図4の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図5の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図6、図7の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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