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まるで梅雨明けのような天気図も、大気不安定で各地で大雨

饒村曜気象予報士
梅雨明けのような地上天気図と各地で発生している雷雨の雲(6月28日12時)

まるで梅雨明けの天気図も大雨

 週初めに沖縄近海にあった梅雨前線は、一気に日本海まで北上し、沖縄・奄美地方は6月25~26日に梅雨明けをしました(表)。

表 令和5年(2023年)の梅雨
表 令和5年(2023年)の梅雨

 梅雨明けの平年値は、沖縄地方のほうが奄美地方より8日早いのですが、近年はその差が減少傾向にあり、今年は、1日の差でした。

 北上した梅雨前線は次第にはっきりしなくなり、天気図上からは梅雨前線が一旦消えました。西日本の南海上には優勢な高気圧があり、まるで梅雨明け時のような天気図となっています(タイトル画像)。

 次第に不明瞭になってきた梅雨前線ですが、この前線に向かって下層の暖湿気の流入が続いています。

 このため、6月28日は、大気が不安定で所々で積乱雲が発達し、局地的に落雷や非常に激しい雨が降りました。

 富山県と山形県では、その地域にとって数年に一度程度しか発生しないような大雨を観測・解析したとして、「記録的短時間大雨情報」が発表されました。

【記録的短時間大雨情報】

6月28日16時00分 富山県上市町小又 1時間雨量101ミリ

6月28日16時00分 富山県上市町付近 1時間雨量約100ミリ

6月28日18時30分 山形県東根市付近 1時間雨量約110ミリ

 また、埼玉県熊谷では短い時間で止みましたので、1時間雨量は30.0ミリでしたが、15時54分~59分の5分間に17.5ミリもの激しい雨が降っています。

 このまま1時間降り続いたとしたら、210ミリになるというとんでもない強い雨が降ったのです。

 6月28日は、熊谷における滝のような降り方の雨が、各地で起きたのですが、同じ場所にとどまらなかったことから、総雨量としては、それほど多くはなりませんでした(図1)。

図1 24時間降水量(6月28日0時~24時)
図1 24時間降水量(6月28日0時~24時)

 下層に暖湿気が入ってくる状況は29日も続く見込みです。

雷3日

 下層に暖湿気が入ると大気が不安定となり、積乱雲が発達しやすくなります。強い日射で地表面の気温が高くなると、より積乱雲が発達します。

 上層に寒気が入るときも大気が不安定となり、積乱雲が発達しやすくなります。

 6月29日は、下層に暖湿気の流入が続き、強い日射があり、上層に寒気が入ってくる見込みです。

 このため、各地で積乱雲が発達し、雷雨が発生する可能性が高くなります(図2)。

図2 発雷確率の予想(6月29日昼過ぎの予想)
図2 発雷確率の予想(6月29日昼過ぎの予想)

 北関東の発雷確率は75パーセント以上です。

 昔から言われている諺に「雷三日」があります。

 大気が不安定となり雷が発生しやすい状況は、しばらく続くことから、「雷がなったら、明日も、明後日も雷」という意味です。

 今回も、雷三日になりそうです。

 ただ、その後、梅雨前線が顕在化し、日本海で低気圧が発生する見込みです(図3)。

図3 予想天気図(6月30日9時の予想)
図3 予想天気図(6月30日9時の予想)

 そして、北陸・岐阜県から西日本の日本海側にかけて、300ミリ以上の大雨になる可能性があります(図4)。

図4 72時間予想降水量(6月29日0時~7月1日24時までの72時間)
図4 72時間予想降水量(6月29日0時~7月1日24時までの72時間)

 最新の気象情報に注意し、雨に警戒してください。

今年一番の暑さ

 6月28日に最高気温が30度以上の真夏日を観測したのは372地点(全国で気温を観測している915地点の約41パーセント)と、前日の393地点(約43パーセント)には及びませんでした(図5)。

図5 夏日と真夏日の観測地点数の推移(令和5年4月1日~6月28日)
図5 夏日と真夏日の観測地点数の推移(令和5年4月1日~6月28日)

 また、全国で一番気温が高かったのは、愛知県・豊田と岐阜県・美濃の34.6度であり、猛暑日の基準である35度には届きませんでした。

 しかし、最高気温が25度以上の観測地点は838地点(約92パーセント)もあり、前日記録した今年最多の829地点(約91パーセント)を更新しました。

 6月27日~28日の暑さは、5月17日~18日、6月17日~18日に次ぐ、3回目の暑さということもできますが、前の2回は湿度が比較的低い時の暑さです。

 今回の様に湿度が高い暑さは、気温の数字以上に熱中症にかかりやすい危険な暑さです。特に危険なのは、関東甲信地方です。

空梅雨気味の関東甲信地方

 10日先までの天気予報を見ると、晴れの日が続く梅雨明けした沖縄・奄美地方と、曇りの日が多い関東甲信地方以外は、雨の日が多い予報となっています(図6)。

図6 各地の10日先までの天気予報(7月5日までは気象庁、7月6日以降はウェザーマップの予報、数字はいずれも最高気温)
図6 各地の10日先までの天気予報(7月5日までは気象庁、7月6日以降はウェザーマップの予報、数字はいずれも最高気温)

 関東甲信地方は空梅雨気味です。

 東京では、最高気温が連日30度以上の真夏日を予報していますし、図では省きましたが、最低気温が22~25度と寝苦しい夜が続く予報となっています。

 夜も、熱中症に警戒が必要になってきました。

タイトル画像、図1、図2、図4、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁ホームページ。

図5の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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