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西日本を中心に晴れて気温上昇も、梅雨前線が停滞している奄美地方では一時的に線状降水帯が発生

饒村曜気象予報士
奄美大島付近の梅雨前線の雲と、日本海の高気圧による広い晴天域(6月19日12時)

西日本を中心とした高温

 令和5年(2023年)6月19日は、沿海州から日本海へ移動性高気圧が進んできたため、全国の広い範囲で梅雨の中休みとなり、晴れ間が広がりました(タイトル画像)。

 強い日射によって西日本と東海を中心に199地点(全国で気温を観測している915地点の約22パーセント)で最高気温が30度以上の真夏日となりました。

 ただ、もともとは気温が低い高緯度の高気圧なので、極端に気温はあがらず、全国で一番気温が高かったのは大分県の日田の34.9度と、最高気温が35度以上という猛暑日を観測した地点はありませんでした(図1)。

図1 夏日と真夏日の観測地点数の推移(令和5年4月1日~6月19日)
図1 夏日と真夏日の観測地点数の推移(令和5年4月1日~6月19日)

 改めて、約1か月前の5月17日に真夏日が299地点(約33パーセント)で猛暑日が1地点、5月18日に真夏日が282地点(約31パーセント)で猛暑日が6地点という暑さになったのが異常だったと感じました。

 ただ、5月17~18日の暑さも、6月18日からの暑さも、湿度はそれほど高くない暑さです。湿度が高く、耐え難い暑さとなるのはこれからです。

 今年は、例年より早めに夏に向かって暑くなっていますので、より一層の暑さ対策を早めに考える必要があります。

奄美地方で線状降水帯

 梅雨前線に近い九州南部から南西諸島では曇りや雨の天気となった6月19日、鹿児島県奄美地方には線状降水帯が発生し、気象庁では、14時20分に顕著な大雨に関する情報を発表しました。

顕著な大雨に関する全般気象情報 第1号

奄美地方(鹿児島県)では、線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いています。命に危険が及ぶ土砂災害や洪水による災害発生の危険度が急激に高まっています。

 線状降水帯に近い沖永良部島では1時間に53ミリ、24時間で289.5ミリ(19日21時40分現在)を観測していますが、線状降水帯のほとんどが海上にあります(図2)。

図2 鹿児島県奄美地方に発生した線状降水帯(6月19日14時20分)
図2 鹿児島県奄美地方に発生した線状降水帯(6月19日14時20分)

 線状降水帯の位置が少しずれていたら、もっと多くの雨が降った可能性があります。

 気象庁では、令和12年度を目処として、「線状降水帯の発生を含め、集中豪雨の予測精度向上」に取り組んでいます。とはいえ、毎年のように重大な災害をもたらす線状降水帯に対する防災対策は喫緊の課題となっています。

 このため、令和12年まで待つことなく、完成した技術を用いた情報の発表を計画しており、その第1弾が、令和3年6月17日より始まった「顕著な大雨に関する情報」です。

 非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている状況を、「線状降水帯」というキーワードを使って解説する情報です。

 また、第2弾が、令和4年から始まった「線状降水帯の半日前予報」で、当面は、国内を11の地方に分けての発表です。

 今回の奄美地方の線状降水帯に関しては、「顕著な大雨に関する情報」が発表されましたが、九州南部に対する「線状降水帯の半日前予報」は発表とはなりませんでした。

 線状降水帯に関する情報は、まだまだ荒い情報で、精度が高くありませんが、現在の技術でも線状降水帯に関する情報が発表となったときはほとんどの場合で大雨が降っています。

 令和12年を待つことなく、線状降水帯の情報が発表となったときは、十分な警戒が必要です。

梅雨の中休み

 6月20日は、梅雨前線に近い沖縄本島~奄美地方では雨が降りやすく、所により雷を伴って激しく降る見込みです。

 奄美地方では土砂災害に厳重に警戒してください。

 同じ南西諸島でも先島諸島は晴れる見込みです。

 九州は午前中は晴れますが、午後は西から次第に雨が降るでしょう。

 中国・四国~北海道は、沿海州から日本海に進んできた高気圧に覆われるため、概ね晴れて梅雨の中休みとなっている所が多い見込みです(図3)。

図3 予想天気図(6月20日9時の予想:図中の黒丸は6月19日9時の位置、黒四角は21日9時の予想位置)
図3 予想天気図(6月20日9時の予想:図中の黒丸は6月19日9時の位置、黒四角は21日9時の予想位置)

 前日の19日と同様に、西日本を中心に強い日射で気温が高くなりそうです。

6月20日の最高気温の予想: 

34度 大分県日田

33度 福岡県久留米

32度 兵庫県豊岡、鳥取、福岡、佐賀、熊本 など

沖縄・奄美地方の梅雨明け

 那覇の16日先までの天気予報をみると、6月23日までは黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)が続き、22日は傘マーク(雨)がありますが、6月24日以降は、お日様マーク(晴れ)と白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)の日が続く予報となっています(図4)。

図4 那覇の16日先までの天気予報
図4 那覇の16日先までの天気予報

 しかも、降水の有無の信頼度は5段階で一番高いAが続いている予報です(降水の有無の信頼度が一番低いEや、二番めに低いDはありません)。

 6月23日には黒雲マークで雨の可能性はあるのですが、お日様マークもついており、6月24日ではなく、23日に梅雨明けの可能性もあります。

 沖縄地方の梅雨明けの平年は6月21日ですので、6月23日に梅雨明けした場合は、平年より遅い梅雨明けとなります。

 また、鹿児島県奄美地方では、前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となることから、6月23日までは黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)が続き、20日~22日は傘マーク(雨)です(図5)。

図5 奄美大島の名瀬の16日先までの天気予報
図5 奄美大島の名瀬の16日先までの天気予報

 局地的に雷を伴った激しい雨が降り大雨となるおそれがある3日間になりそうですが、那覇と同様に、6月24日以降は、お日様マーク(晴れ)と白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)の日が続く予報となっています。

 しかも、降水の有無の信頼度は、5段階で一番高いAがほとんどの予報です。

 奄美地方の梅雨明けの平年は6月29日ですので、6月23日に梅雨明けすることになれば、平年より早い梅雨明けになります。

 沖縄・奄美地方が梅雨明けしたと思われる来週は、東京など西日本から東日本・東北の広い範囲で梅雨の戻りになると思われます。

 西日本から東日本・東北では、暑さへの警戒から、雨と暑さの両方への警戒へと変わります。

タイトル画像、図2、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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