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今週は平年より気温が低く、週末の雨を挟んで来週は気温が高い、共に「さつきばれ」ではなく「ごがつばれ」

饒村曜気象予報士
大陸から高気圧が張り出している地上天気図と対応する雲(5月8日15時)

大型連休明けの天気

 令和5年(2023年)の大型連休は、4月29日(土)の昭和の日からですが、南岸低気圧の通過で、西日本から雨で始まりました。

 当初は、連休期間中は低気圧が短い周期で通過するため、雨の日が多いという予報でした。

 しかし、低気圧が日本列島の真上を通過しなかったことなどから、5月5日(金)のこどもの日までは晴れた日が多く、気温が高めに経過しました(図1)。

図1 夏日と冬日の観測地点数の推移(令和5年3月1日~5月8日)
図1 夏日と冬日の観測地点数の推移(令和5年3月1日~5月8日)

 ただ、5月5日に夏日を観測した地点数は371地点(気温を観測している全国914地点の約41パーセント)と、4月20日の374地点(約41パーセント)にはわずかに及びませんでした。

 大型連休最後の日である5月7日(日)は、日本付近をほぼ東西にのびる前線が停滞し、その前線上を低気圧が通過しため、西日本を中心に総雨量が400ミリ以上の大雨となっています(図2)。

図2 南岸低気圧による48時間降水量(5月6日15時から8日15時までの48時間)
図2 南岸低気圧による48時間降水量(5月6日15時から8日15時までの48時間)

 5月5日(金)14時42分に石川県能登地方を震源とするマグニチュード6.5の地震があり、石川県珠洲市で震度6強の揺れを観測しました。

 石川県能登町で震度5強、輪島でも震度5弱を観測した地震により、気象庁では地震に伴って地盤が緩んでいることなどを考え、石川県能登地方の大雨警報や注意報、土砂災害警戒情報の発表基準が7~8割に引き下げられています。この能登半島でも100ミリ以上の雨が降りました。

 大型連休最終日に大雨をもたらした低気圧は、大型連休明けの5月8日(月)には、三陸沖で発達し、寒気を北日本に南下させています(タイトル画像参照)。

 このため、北海道東部や青森県の標高の高い所では雪が降っています。

 当初、関東地方の5月8日の雨は、雨脚が強まるのが通勤・通学の時間帯とみられていましたが、その時間帯より早い未明から早朝であったため、大きな混乱はありませんでした。

 気象庁が7日夕方に発表した5月8日の東京の気温予報では、朝の最低気温が16度、日中の最高気温が21度でした。

 しかし、7日午後からの予想以上の急激な寒気の南下と、雨が止んでも雲が多くて日照がなかった影響から気温はあがらず、朝の最低気温は10.3度と予想より約6度低く、最高気温も16.6度と予想より約4度低くなっています(図3)。

図3 東京の気温変化(5月6日~8日は実況、9日以降は予報)
図3 東京の気温変化(5月6日~8日は実況、9日以降は予報)

 それだけ難しい天気予報でした。

今後の天気

 5月9日(火)は、低気圧の影響が残る北海道で雨の降る所がありますが、その他の地方では高気圧におおわれ、概ね晴れる見込みです。

 そして、ウェザーマップが発表した10日間予報では、今週は高気圧に覆われて晴れの日が続く予報となっています(図4)。

図4 各地の10日間予報(数字は最高気温)
図4 各地の10日間予報(数字は最高気温)

 週末は低気圧の通過によって西日本から東日本で雨が降りますが、来週の週明けからは再び全国的に晴れの日が続く予報となっています。

 最高気温を見ると、同じ晴れでも、今週より来週の方が高くなっています。

 東京の最高気温と最低気温の推移をみると、5月8日の最高気温は3月下旬なみ、最低気温は4月中旬なみと低かったのですが、最高気温・最低気温ともに今週は平年より若干低く、来週は平年より高い日が続く予報となっています(図5)。

図5 東京の最高気温と最低気温の推移(令和5年(2023年)3月1日~5月24日)
図5 東京の最高気温と最低気温の推移(令和5年(2023年)3月1日~5月24日)

 今年の東京は、最高気温が25度以上という夏日は、これまで7回観測していますが、来週は連日夏日になりそうです。

 東京の16日先までの天気予報をみると、ほとんどの日で、お日様マーク(晴れ)と白雲マーク(雨の可能性がほとんどない曇り)の予報です(図6)。

図6 東京の16日先までの天気予報(ウェザーマップによる)
図6 東京の16日先までの天気予報(ウェザーマップによる)

 黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)や傘マーク(雨)の日が少ないという予報です。

 降水の有無の信頼度が5段階表示で一番低いEや、二番目に低いDが含まれている予報ですが、五月晴れ(ごがつばれ)の日が多い予報ということができるでしょう。

「五月晴れ(ごがつばれ)」と「五月晴れ(さつきばれ)」

 「五月晴れ(さつきばれ)」という言葉は、今では5月の乾いた晴天を指すことが多いのですが、もともとは旧暦5月(新暦では6月頃)の梅雨の晴れ間(貴重な晴れ間)を指す言葉です。

 このため、5月の乾いた晴天は、厳密にいえば「五月晴れ(ごがつばれ)」ということになります。

 気象庁では、天気予報や注意報・警報などの情報が、誰にでも正確に伝わるよう、「明確さ」「平易さ」「聞き取りやすさ」「時代への適用」の4つの観点から「予報用語」を定め、その定義を決めています。

 そして、注意深く、解説を付け加えて用いる「解説用語」と、「使用を控える用語」を定め、公表しています。

 ここでは、「さつきばれ」は、「予報用語」ではなく解説用語となっています。

 同様の言葉に「五月雨(さみだれ)」があります。

 「五月雨(さみだれ)」は6月の梅雨の雨をさし、「五月雨をあつめて早し最上川(芭蕉)」は梅雨時の歌です

 ちなみに、「五月雨(さみだれ)」は、「使用を控える用語」となっています。

タイトル画像、図2、図4、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図3、図5の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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