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移動性高気圧の動きが遅く、「こどもの日」も東日本や北日本では引き続き行楽日和

饒村曜気象予報士
倉敷市にある誓願寺の鯉のぼり

気温が上昇し行楽日和

 ゴールデンウィークの中盤、5月4日のみどりの日は、移動性高気圧の圏内にあり、中国・四国地方から北日本にかけて南から暖気が入り、晴れて日射があったことから気温が平年より高くなっています(図1)。

図1 移動性高気圧による東日本を中心とした晴天(5月4日15時)
図1 移動性高気圧による東日本を中心とした晴天(5月4日15時)

 沖縄県の西表島では日最高気温が30.5度を観測し、みどりの日で唯一、最高気温が30度以上の真夏日となっていますが、6月中旬並みの暑さです。

 札幌の日最高気温は24.1度と、最高気温が25度以上の夏日にはなっていませんが、7月上旬並みの暑さです。

 つまり、みどりの日の暑さは、北海道ほど記録的な暑さとなったのです。

 みどりの日に夏日を観測したのは、気温を観測している全国の914地点のうち、290地点(約32パーセント)でした(図2)。

図2 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和5年1月1日~5月4日)
図2 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和5年1月1日~5月4日)

 ただ、4月20日の374地点(約41パーセント)には及びませんでした。

 中国・四国~北日本にかけて行楽日和をもたらしている移動性高気圧は、動きが遅いことから、5月5日のこどもの日も東日本や北日本では晴れて気温がさらに上昇し、引き続き行楽日和となる所が多い見込みです(図3)。

図3 予想天気図(5月5日9時の予想)
図3 予想天気図(5月5日9時の予想)

こどもの日の最高気温の予想

30度 福島

29度 若松 長野 金沢 那覇 宮古島 与那国島 石垣島

28度 宮古 山形 前橋 富山 奈良 など

27度 水戸 宇都宮 東京 甲府 京都 など

26度 静岡 福井 大阪 鳥取 名瀬 など

 ただ、暖湿空気が流入している南西諸島〜西日本では雲が広がり、所々で雨が降る見込みです。近畿は夜に雨の降る可能性がありますが、日中はお天気が持ちそうです。

 また、前線が接近する北日本は、北海道を中心に夜から雲が広がり始め、雨の所もある見込みです。

 ということで、こどもの日の夏日の観測地点数は、4月20日を超えない可能性もありますが、これで平年並みです。

 これまでの気温が高すぎただけです。

こどもの日と端午の節句

 5月5日のこどもの日は、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する国民の祝日」として、昭和23年(1948年)に制定されました。

 もともとは、毎年5月5日に、男の子の誕生を祝うとともに、その健やかな成長を祈る「端午の節句」という行事を行う日でした。

 令和5年(2023年)は卯年というように、十二支(じゅうにし:子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)は、年や月、時刻、方角などに使われてきました。

 冬至の日を起点とすると、旧暦12月が丑月、旧暦1月が寅月、旧暦2月が卯月となり、旧暦5月が午月になります。そして、午月の最初(端)の午の日が「端午」です。

 ただ、古代中国では月と日に同じ奇数が重なる日を忌み嫌い、その日には邪気を祓う様々な行事があり、その影響を受けた日本でも、5月5日に端午の節句を行うようになったといわれています。

 端午の節句というと、五月人形(武者人形)を飾り、鯉のぼりをあげるということが行われています(タイトル写真参照)。

 鯉のぼりは、一番上に邪気を祓うための矢車や吹き流しを配置し、その下に大きな真鯉(黒い鯉)、中くらいの緋鯉(赤い鯉)、小さな子鯉(青い鯉)は取り付けられています。

 鯉のぼりがあげられているのは、こどもの日(端午の節句)の頃だけですが、似たものが、年中あげられているところがあります。

 それは全国の空港です。

 国土交通省令で、全国の空港に鯉のぼりのような風向指示器(繊維性で口の直径が1メートル、長さが3.5メートル)の設置が義務付けられているからです。

 写真は空港の風向指示器とは多少違いますが、このようなものが設置されているのです。

写真 たなびく吹き流し
写真 たなびく吹き流し写真:イメージマート

 航空機が、トラブルによって飛行場の観測データが全く入手できなくなっても、上空から鯉のぼりのような胴体の方向で風の向きを、尻尾のたれ具合で風の強さを推定することができます。

 鯉のぼりが勢いよく泳いでいる時は風が強いとか、鯉のぼりの口が風が吹いてくる方向を示していることはよく経験しますが、飛行機の安全運航のための二重三重の安全策の上に、さらなる安全策として、鯉のぼりに似たものが空港に設置されているのです。

今週末の大雨

 今週末は、低気圧や前線が通過するため、全国的に雨となる見込みです(図4)。

図4 予想天気図(5月6日9時の予想)
図4 予想天気図(5月6日9時の予想)

 気象庁では早期注意情報を発表し、5日先までに警報を発表する可能性について「高」「中」の2段階で示しています。

 これによると、大雨警報を発表する可能性は、5月6日の秋田県、中国地方から九州北部で「中」、5月7日の中国から九州で「中」、5月8日の九州と東海地方で「中」となっています(図5)。

図5 大雨に関する早期注意情報(左上は5月6日、右上は5月7日、下は5月8日)
図5 大雨に関する早期注意情報(左上は5月6日、右上は5月7日、下は5月8日)

 今週末は、単なる雨ではなく、災害をもたらす大雨の可能性もありますので、最新の気象情報に注意してください。

 これだけに、こどもの日の晴天は貴重です。

 晴れた日の行楽を予定している場合は早めに済ませると良さそうです。

タイトルの写真の出典:筆者撮影。

本文中の写真の出典:イメージマート。

図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図5の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3、図4の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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