Yahoo!ニュース

今冬最多の真冬日と冬日を観測 日本列島は冷凍庫の中

饒村曜気象予報士
八丈島(図の円内)に流れ込む雪雲(1月25日9時)

冬型の気圧配置

 千島近海で低気圧が猛烈に発達し、日本付近は西高東低の冬型の気圧配置となり、今冬一番の非常に強い寒気が南下しました。

 シベリア高気圧の寒気が強い北風となって南下し、日本海に入りますが、日本海の水温はシベリアの寒気にとっては熱いお湯に相当していますので、湯気を上げて日本海を吹き渡ります。

 そして日本海から熱と水分を吸収して下層から暖まると、不安定となって次々に積乱雲を形成し、筋状に並びます。

 この積乱雲は、脊梁山脈で妨げられ、日本海側の地方に多量の雪を降らせますが、1月24日(火)から25日(水)も、北日本の日本海側や北陸~山陰では大雪が降りました(図1)。

図1 24時間降雪量(1月24日15時から25日15時までの24時間)
図1 24時間降雪量(1月24日15時から25日15時までの24時間)

 岡山県では、24日14時から20時までの6時間に津山で31センチ、美作市今岡で28センチ、真庭市上長田でも13時から19時までの6時間に41センチという短時間に強い雪が降り、気象庁では「顕著な大雪に関する気象情報」を発表しました。

 日本海側に大雪を降らせたシベリアの寒気は、乾燥した強い風となって太平洋側の地方に吹きおりてきます。

 しかし、シベリアからの寒気が非常に強い場合は、脊梁山脈を乗り越えて太平洋に達した段階でも冷たい空気で、太平洋の暖かい海によって下層から熱と水分を吸収して温まって雲の列ができます(図2)。

図2 八丈島の雪の説明図
図2 八丈島の雪の説明図

 気象衛星でみると、日本海には寒気の南下に伴う筋状の雲が見えますが、これが脊梁山脈にあたって日本海側の地方に大雪をもたらしました。

 そして、太平洋側に達したシベリアからの寒気は、太平洋上の広い範囲で再び筋状の雲を作っています。

 このうち、若狭湾から伊勢湾に抜けたシベリアからの寒気は、黒潮によって下層から温まって雲を作り、八丈島にかかっています(タイトル画像参照)。

 このため、普段は冬でも温暖な八丈島で雪が降り、地面が白くなっています。

 また、非常に強い寒気が南下し、積乱雲が発達して背が高くなると、脊梁山脈を乗りこえたり、山脈の低いところをすり抜けたりして太平洋側に入ってきます。

 風向によって太平洋側で雪の降る場所が大きく異なりますが、1月24日15時から25日15時までの24時間では、鹿児島4センチ、和歌山6センチ、滋賀県・彦根25センチ、三重県・津11センチ、水戸6センチ、仙台10センチなど太平洋側の地方でもまとまった雪が降っています。

 また、24日の19時過ぎには静岡市で、20時過ぎには千葉県銚子で、20時30分頃には東京都心で平年より遅い初雪を観測しました

厳しい冷え込み

 令和5年(2023年)は、年始から寒気が周期的に南下していましたが、1月13日は北日本を通過した低気圧に向かって暖気が北上し、4月並みの気温という季節外れの暖かさになりました。

 鹿児島県名瀬市で26.4度を観測するなど、最高気温が25度以上という夏日を観測したのが21地点(全国で気温を観測している914地点の約2パーセント)もありました。

 最高気温が氷点下という真冬日を観測した地点数は0となり、最低気温が氷点下という冬日を観測した地点数も急減しています(図3)。

図3 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年1月25日)
図3 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年1月25日)

 今冬、冬日を観測した地点数が一番多かったのは、1月22日の743地点(約81パーセント)でしたが、1月24日は859地点(約94パーセント)、1月25日は869地点(約95パーセント)と連日更新しました。

 南西諸島以外は全ての観測地点で冬日でした。

 また、真冬日の観測地点数は、先月12月19日には297地点(約32パーセント)でしたが、1月25日は502地点(約55パーセント)と、大幅に更新しました。

 全国の半数以上の地点で、気温が一日中氷点下という、冷凍庫の中の状態でした。

今冬の冬型の気圧配置

 今冬の特徴として、冬型の気圧配置は強さの割には長続きしないということがあげられます。

 今回の非常に強い寒気の南下に伴う西高東低の気圧配置も、1月26日(木)には移動性高気圧の接近で西日本から次第に崩れ、九州ではにわか雨が降る見込みです(図4)。

図4 地上天気図(1月25日9時)と予想天気図(1月26日9時の予想)
図4 地上天気図(1月25日9時)と予想天気図(1月26日9時の予想)

 移動性高気圧の西側にあたる東シナ海で低気圧が発生し、1月27日(金)には本州南岸を低気圧が通過する見込みです(図5)。

図5 専門家向け予想天気図(左は1月27日21時の予想、右は28日21時の予想でハッチは降水域)
図5 専門家向け予想天気図(左は1月27日21時の予想、右は28日21時の予想でハッチは降水域)

 気温が低い状態での南岸低気圧ですので、西日本~東日本の太平洋側の地方でも雪の可能性があります(図6)。

図6 全国の1月27日の天気予報(数字は左側が最高気温、右側が最低気温)
図6 全国の1月27日の天気予報(数字は左側が最高気温、右側が最低気温)

 北日本は西高東低の冬型の気圧配置が続き、東日本や西日本も南岸低気圧の通過後の週末は、全国的に西高東低の冬型の気圧配置が強まり、再度強い寒気が南下してくる見込みです。

寒い日が続くときは水道管凍結に注意

 少し気温が高くなる日があっても、しばらくは、ほとんどの日で厳しい寒さとなる予報です。

 水道管は気温が氷点下になったからといって直ちに凍るわけではありませんが、最低気温が氷点下の日が続くと、どんどん水道管が凍りやすくなります。

 氷点下4度以下の日が3日以上続くと、水道管は凍結する恐れがあるといわれていますので、最低気温が前日より高い場合でも油断できません。

 水道管が凍らなかった今日の最低気温より、明日の最低気温のほうが高いので安心ということにはならないのです。

 最新の気象情報を入手し、体調管理に努めるとともに、水道管凍結のおそれがある地方では十分警戒してください。

タイトル画像、図1、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:筆者作成。

図3、図5の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図4の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事