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三連休の初日は南岸低気圧の通過で全国的に雲が多くなり関東では初雪か

饒村曜気象予報士
衛星画像から見た寒気の南下(左は1月2日15時、右は5日15時)

ゆるむ冬型の気圧配置

 昨年、令和4年(2022年)は記録的に暑い秋となりましたが、12月に入ると西高東低の冬型の気圧配置となることが多く、周期的に強い寒気が南下してきました。

 11月には時々観測していた最高気温が25度以上の夏日はほとんどなくなり、日最低気温が氷点下の冬日を観測した地点数が全国の40パーセントを超すようになっています。

 そして、日最高気温が氷点下という真冬日も増えています(図1)。

図1 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年1月5日)
図1 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年1月5日)

 気象庁では全国の915地点で気温を観測していますが、12月19日は真冬日を297地点(全国の約32パーセント)で、冬日を728地点(全国の約80パーセント)で観測し、ともに、現時点での今冬の最多です。

 その後、年末から年始には強い寒波が南下し、真冬日の観測地点数は増えていますが、西日本から東日本の太平洋側の地方では、概ね晴れの天気が続き、気温は平年並みであったことから、昨年12月19日の真冬日や冬日の観測地点数は超していません。

 逆に、それほど12月中旬の寒波は強かったのです。

 12月中旬の寒波には及ばなかったとはいえ、年末年始の寒波は強いものでしたが、ここへきて弱まってきました。

 寒気に伴って発生する日本海の筋状の雲は、南下する寒気が非常に強いと大陸のすぐそばから発生しますが、南下する寒気が非常に強くなければ大陸から離れた海上で発生します。

 タイトル画像では、左側が寒気の南下が非常に強かった1月2日、右側が寒気の南下が弱まってきた1月5日の気象衛星画像です。

 1月5日の日本海の筋状の雲は、大陸からかなり離れて発生しており、正月よりは寒気南下が弱まったことを示しています。

移動性高気圧通過

 昨年末から続いていた冬型の気圧配置はゆるむ1月6日の金曜日は、移動性高気圧が通過する見込みです(図2)。

図2 予想天気図(1月6日9時の予想)
図2 予想天気図(1月6日9時の予想)

 このため、6日は日本海側の雪や雨は止む所が多くなりますが、夜には南西諸島や関東近海で低気圧が発生するでしょう。

 太平洋側の地方は、昼間は晴れる所が多いのですが、夕方以降は南西諸島や九州で雨が降りやすくなります。

 天気予報を難しくしているのは、関東近海で発生する低気圧です。

 小さな低気圧ですが、南西諸島で発生する低気圧の影響よりも先に、関東南部に影響するのか、しないのかの判断が非常に難しいからです。

三連休最初の土曜日の天気

 成人の日を含む三連休が始まる1月7日の土曜日は、南西諸島で発生した低気圧が本州の南岸を東進する見込みです(図3)。

図3 予想天気図(1月7日9時の予想)
図3 予想天気図(1月7日9時の予想)

 また、黄海付近で発生した低気圧が日本海を東進する見込みです。

 この2つの低気圧により、6日の遅い時間から7日は、ほぼ全国的に雨となり、西日本から東日本の標高の高い所では雪となる見込みです。

 静岡県から関東南部でも初雪になるかもしれません。

今冬の初雪

 初雪は、気象官署がある地点において、「8月1日から翌年の7月31日までに初めて降る雪(みぞれを含む)」のことです。

 令和4~5年(2022~2023年)の初雪は、北海道最北の稚内で11月3日に平年より14日遅く始まりました。

 その後、北海道各地で平年より遅い初雪を観測しました。

 12月2日に佐賀で平年より9日早く、12月6日に宇都宮で平年より10日早く初雪を観測しましたが、ほとんどの地点では平年より遅い初雪でした(図4)。

図4 各地の初雪の平年との比較
図4 各地の初雪の平年との比較

 12月中旬の非常に強い寒波によって福岡や鹿児島、大阪などで平年より早い初雪を観測しましたが、これまで初雪を観測した49地点のうち、平年より早かったのは9地点しかありません。

 平年と同じ日の初雪が3地点、平年より遅い初雪が37地点ですので、今冬は冬の訪れが遅いということができるでしょう。

 現時点において、まだ初雪を観測していないのは、雪がほとんど降らない南西諸島を除くと、静岡から関東南部ですが、すでに平年より遅いことが確定しています。

初雪の平年値

千葉(12月10日)、横浜(12月15日)、東京(1月3日)

銚子(1月5日)、静岡(1月6日)

雨雪判別

 本州南岸を東進する低気圧は、太平洋側の地方に雪を降らせて交通機関が大混乱することがある社会生活への影響の大きい低気圧です。

 しかも、予想が難しく、気象予報士泣かせの低気圧です。

 真冬の強い寒気が南下している時は、本州の南岸を通過することがなくなりますので、本州の南岸を通過する低気圧による雪を「春をよぶ雪」と呼ぶことがあります。

 この南岸低気圧が通過する時は気温が上がらず、雪か冷たい雨が降りますが、そのあとの気温上昇が春を感じさせるからです。

 1月7日の土曜日は、低気圧の通過によって西日本は雨の見込みですが、東海から関東南部は、雪が混じる可能性があります(図5)。

図5 関東と静岡の天気予報(1月7日の予報)
図5 関東と静岡の天気予報(1月7日の予報)

 低気圧が少し陸地から離れて通過する場合は、雪も雨も降らない可能性がありますが、いずれにしても、南岸低気圧通過後の来週は、平年より気温が高くなる地方が多いなど、春近しを思わせるかもしれません。

 東京の気温の予想を見ると、今週末の南岸低気圧の通過までは、ほぼ平年並みの寒さですが、来週は、最高気温、最低気温ともに平年よりかなり高くなる見込みです(図6)。

図6 東京の最高気温と最低気温の推移(1月6日~13日は気象庁、1月14日以降はウェザーマップの予報)
図6 東京の最高気温と最低気温の推移(1月6日~13日は気象庁、1月14日以降はウェザーマップの予報)

 北国の春はまだまだですが、西日本や東日本の太平洋側では春がすぐそこまできています。

タイトル画像、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図4の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

図6の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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