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大荒れの11月末から強い寒気南下の12月へ 長かった残暑に短めの秋そして平年通りの冬

饒村曜気象予報士
収穫が済んだ晩秋の畑、霧の早朝(写真:イメージマート)

11月最終週の天気

 令和4年(2022年)11月の最終週は、大きな移動性高気圧の通過で晴れる所が多く、日中は日差しが暖かく感じられて始まりそうです(図1)。

図1 予想天気図(左は11月28日9時、右は11月29日9時の予想)
図1 予想天気図(左は11月28日9時、右は11月29日9時の予想)

 ただ、関東は雲の多い空模様となり、夜になると東海や四国や九州、北海道を中心に雨雲が広がる見込みです。

 しかし、黄海や東シナ海で前線を伴った低気圧が発達し、火曜日は全国的に雨雲が広がって、風も強まって荒れた天気になりそうです(図2)。

図2 各地の11月29日(火)の天気予報
図2 各地の11月29日(火)の天気予報

 低気圧に向かって南から暖気が入ってきますので、全国的に気温が高くなり、北海道でも雪ではなく雨の予想です。

 ただ、これらの低気圧が通過後の11月30日(水)は、西高東低の冬型の気圧配置となって寒気が南下してきます。

令和4年(2022年)の冬日

 令和4~5年(2022~23年)の冬は、10月25~27日の寒気南下で始まったといえます。最低気温が氷点下となる冬日が、全国の約20パーセントで観測されました(図3)。

図3 夏日と冬日の観測地点数の推移(10月16日~11月27日)
図3 夏日と冬日の観測地点数の推移(10月16日~11月27日)

 数日前には、最高気温が25度以上の夏日が、全国の20パーセント以上で観測されていますので、10月下旬の寒さは、実際の温度以上に寒く感じた人が多かったのではないでしょうか。

 その後、しばらくは冷え込まなかったのですが、立冬の少し前から冬日の観測地点数が増えています。

 順調に冬に向かうと見られていた日本列島ですが、その後、冬への歩みが止まっています。

 しかし、11月30日以降は、再び冬に向かいそうです。

 東京では「木枯らし1号」が吹くかもしれません。

 12月に入ると、日本上空約5500メートルには、平地でも雪となる目安の、氷点下30度という寒気が東北地方まで南下してくる見込みです(図4)。

図4 上空約5500メートルの気温分布(12月2日夜)
図4 上空約5500メートルの気温分布(12月2日夜)

 12月に入ると、東北地方では平地でも雪が降ると思われます。

 また、日本上空約5500メートルで氷点下36度という気温は、大雪の目安となっていますので、北海道は大雪の懸念もあります。

 令和4年(2022年)は、長かった残暑に短めの秋、そして平年通りの冬がやってきました。

「木枯らし1号」になる最後のタイミング

 木枯らしは、晩秋から初冬の間に吹く風で、冬の季節風の走りの現象です。

 名称の由来は、諸説ありますが、吹くたびに紅葉を吹きとばし林を枯れ木立にしていくので、木枯らしと呼ばれているとされます。

 七十二候では、11月27日からは、北風が木の葉を払いのけるとされる「朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)」ですので、今が木枯らしの季節です。

 気象庁では、東京地方と近畿地方(2府4県をまとめて)について、木枯らしが最初に吹く日(木枯らし1号)の情報を発表しています

 これは、気象庁は、天気に関する問い合わせが多い東京と大阪に天気相談所を設置しており、そこで調査をしたという経緯と関係があります。

 東京地方の「木枯らし1号」の定義は、「10月半ばから11月末において、西高東低の気圧配置で、東京都心の風向が西北西から北、風速が毎秒8メートル以上のとき」です

 東京で木枯らしが最初に吹く日(木枯らし1号)の平年日は、朔風払葉より約20日前の立冬の頃です。

 つまり、11月30日に「木枯らし1号」が吹かないと、12月を迎えますので、「東京で木枯らし1号が吹かなかった年」ということになります。

 なお、近畿地方の「木枯らし1号」の定義は、「霜降(10月23日頃)から冬至(12月22日頃)において、西高東低の気圧配置で、総合判断で、近畿地方で風向が北よりの風、風速が毎秒8メートル以上のとき」で、11月13日の

夜に吹いています。

東京の気温変化

 東京の最高気温の推移をみると、日々の変動はありますが、階段状に下がっています(図5)。

図5 東京の最高気温と最低気温の推移(11月28日~12月4日は気象庁、12月5日~13日はウェザーマップの予報)
図5 東京の最高気温と最低気温の推移(11月28日~12月4日は気象庁、12月5日~13日はウェザーマップの予報)

 9月は最高気温が30度前後の日が多く、厳しい残暑が続いていましたが、10月に入ると最高気温が25度に届かなくなり、現在は、20度位で推移しています。

 そして、週後半の12月になると、最高気温が15度に届かないという予報です。

 服装はカーディガンの目安となる20度から、トレンチコートの目安となる15度に下がる見込みです(図6)。

図6 服装と気温の目安
図6 服装と気温の目安

 カーディガンができたのは、19世紀中ごろのロシアとトルコ・イギリス・フランス・サルデーニャ連合軍との間で起きたクリミア戦争時といわれています。

 クリミア戦争の中で最も激しかったといわれるバルクラヴァの戦いで、イギリスの貴族・カーディガン伯爵が、厳しい寒さの中で負傷した兵士にセーターをかぶせるのは至難の業であることから作ったのが、「前開き可能なセーター」です。

 また、トレンチコートは、第一次世界大戦のイギリス軍が、寒冷な欧州での戦いに対応するための防水型の軍用コートで、「トレンチ(塹壕)」が名称の由来で、イギリスのバーバリーとアクアスキュータムの2社の製品が元祖と言われています。

 ともに起源は戦争ですが、平和の時代に役立っているファッションです。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2、図3、図4、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図5の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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