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台風になりかかった熱帯低気圧の雲も取り込んで発達した台風11号が東シナ海を北上して西日本接近

饒村曜気象予報士
台風11号に取り込まれようとする熱帯低気圧(8月31日18時)

沖縄県先島諸島

 大型で強い台風第11号は、先島諸島を通過して東シナ海に入りました(図1)。

 台風進路予報は変わりますので、台風進路予報は最新のものをお使いください

図1 台風11号の進路予報と海面水温(9月4日3時)
図1 台風11号の進路予報と海面水温(9月4日3時)

 沖縄県先島諸島では猛烈な風が吹いて、猛烈にしけている所があります。

 沖縄地方では、暴風やうねりを伴った高波、高潮に厳重に警戒してください。また、沖縄地方や西日本から東日本では、土砂災害に厳重に警戒し、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒してください。

 なお、沖縄地方では4日午前中にかけて、線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があります。

 台風11号の暴風域に入る確率は、石垣島では4日昼前まで50パーセント以上という高い値ですので、しばらくは暴風に厳重警戒が必要です(図2)。

図2 沖縄県石垣市と長崎県下五島、上対馬が暴風域に入る確率
図2 沖縄県石垣市と長崎県下五島、上対馬が暴風域に入る確率

 また、台風11号の暴風域に入る確率は、長崎県五島列島では9月6日明け方(3~6時)、対馬では6日朝(6~9時)に最接近の見込みですので、最新の暴風域に入る確率を入手し、早めの防災対策をお願いします。

 台風11号が進む東シナ海は、海面水温が台風が発達する目安となる27度以上と高く、急速には衰えずに対馬海峡に向かって進む見込みです。

 なお、台風の南側に海面水温が28度以下となっている海域がありますが、これは台風11号がこの場所で停滞して海の水をかきまぜたための水温低下の名残です。

台風の強さと大きさの推移

 台風の発達期は、最大風速が次第に強くなり、強風域の半径も次第に大きくなって最盛期を迎えます(図3)。

図3 台風の強さと大きさの推移(台風11号とモデル台風)
図3 台風の強さと大きさの推移(台風11号とモデル台風)

 最盛期を過ぎると、最大風速は弱まるものの、強風域の大きさはあまり変化せず、逆に大きくなる台風もあります。

 台風11号は、強風域の範囲が広がらず、最大風速だけがどんどん増加し、猛烈な台風まで発達していますが、最大風速が小さくなるにつれ、強風域の範囲は広がっています。

 このような台風の強さと大きさの変化は、一般的な台風と少し違っていますが、珍しくはありません。

 台風11号の北上とともに強い風の範囲が広がることに注意してください。

大雨に警戒

 台風の北側の活発な雨雲の範囲は狭いのですが、台風の東側から南側には発達した雲の塊が広がっています。

 これは、台風11号が南から北上してきた熱帯低気圧を取り込んだためで、台風11号が通過した後も、発達した雲の塊によって大雨の可能性がありますので油断できません(タイトル画像参照)。

 大雨の可能性として心配なのは、台風の東側から南側の発達した雲の塊だけではありません。

 日本海にある秋雨前線に向かって台風周辺の暖かくて湿った空気が北上し、大気が非常に不安定となっています(図4)。

図4 予想天気図(9月4日21時の予想)
図4 予想天気図(9月4日21時の予想)

 台風から離れていても、急激な天気の変化に注意してください。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図4の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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