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北日本は前線停滞で大雨・西~東日本は猛烈残暑、加えて日本の南で台風8号発生し東日本へ

饒村曜気象予報士
北日本の停滞前線の雲と日本の南海上の発達する熱帯低気圧の雲(8月10日15時)

北日本で大雨

 東北北部に前線が停滞し、前線に向て暖かくて湿った空気の流入が流れこみ、大気が非常に不安定となり、東北北部から北海道では大雨が続いています(図1)。

図1 予想天気図(8月11日9時の予想)
図1 予想天気図(8月11日9時の予想)

 東北北部では記録的な大雨となっている所があり、北日本は12日(金)にかけて、雷を伴った非常に激しい雨が降り、これに加えて200ミリを超える大雨となる所がある見込みです(図2)。

図2 48時間降水量(8月10日22時まで)
図2 48時間降水量(8月10日22時まで)

 前線の活動は14日(日)ごろに一時的に弱まる見込みですが、15日(月)ごろから再び活発となるおそれがあります。

 北日本はこのさき一週間ほど前線が停滞し、大雨が続くため、被害の出る範囲が広がるおそれがあります(図3)。

図3 北日本を中心とした週間天気予報
図3 北日本を中心とした週間天気予報

 立秋をすぎたため、梅雨とはなりませんが、東北北部から北海道南部は梅雨のような天気となっています。西日本で時折発生する梅雨末期豪雨が北日本で発生しているかのようです。

 気象庁が発表している記録的短時間大雨情報の発表基準は、10年前に比べて14都道県で10~20ミリ引き上げられています。少し前まではめったに降らないと考えられていた量の雨が、時々降る時代になってきました。

 先入観をもたずに最新の気象情報の入手に努め、引き続き土砂災害や河川の増水・氾濫などに厳重に警戒をして下さい警戒をしてください。

西~東日本は猛烈残暑

 令和4年(2022年)は、西日本から東北南部まで梅雨明けした6月末から7月の初めは、強まった太平洋高気圧の縁辺をまわるように暖かくて湿った空気が流入し、晴れて強い日射によって記録的な暑さが続きました。

 夏日(最高気温が25度以上の日)、真夏日(最高気温が30度以上の日)、猛暑日(最高気温が35度以上の日)を観測した地点数が急増しています。

 群馬県の伊勢崎では、6月29日に最高気温が40.0度となり、今年6月25日に観測した40.2度に次ぐ、2回目の40.0度超えとなりました。

 6月に40.0度を超したのは初めてのことです。

 しかし、7月に入ると下層に暖湿気が流入し、大気が非常に不安定な状態が続きました。

 ときおり、上空に強い寒気が南下し、局地的に猛烈な雨が降り、「記録的短時間大雨情報」が頻繁に発表となっています。

記録的短時間大雨情報は、例年、7月は全国で20回程度の発表ですので、令和4年(2022年)は、例年の2.5倍もの発表でした。

 そして、九州から東北南部は梅雨のような天気(戻り梅雨)となりましたので、夏日と真夏日、猛暑日の観測地点数は減っています。

 東北北部が「梅雨明け」をし、九州から東北南部が「戻り梅雨明け」をした、7月29日以降、夏日と真夏日、猛暑日の観測が増えています(図4)。

図4 全国の夏日と真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(令和4年(2022年)6月~8月)
図4 全国の夏日と真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(令和4年(2022年)6月~8月)

 7月31日は、全国で気温を観測している914地点のうち907地点(約99パーセント)が夏日、725地点が真夏日(約79パーセント)を観測し、いずれも今年最多となっています。

 今週には、夏日や真夏日が今年最多になるかもしれません。

 ただ、猛暑日についていえば、7月1日の235地点(約26パーセント)が今年最多で、7月末から8月頭の猛暑では、これを超えることができまず、今週も超えることができないかもしれません。

 というより、令和4年(2022年)の6月末から7月の初めの暑さが異常で、この記録的な暑さを除けば、平年並みの猛暑で推移していました。

 その後、立秋(8月7日)が過ぎましたが、西~東日本は晴れて気温が上昇し、猛烈残暑が続いています。

 東京では、令和4年(2022年)のに最高気温が35度以上の猛暑日が、8月3日で13回目と、明治8年(1875年)の統計開始以来の最多記録である平成7年(1995年)と平成22年(2010年)に並びました。

 8月9日の最高気温35.7度で14回目と新記録になり、歴代最多日数を更新し、8月10日の35.3度で15回目とさらに記録を更新しています。

 そして、これからも猛暑日が続きそうで、更なる記録更新となりそうです(図5)。

図5 東京の最高気温と最低気温の推移(8月11~17日は気象庁、8月18~26日はウェザーマップの予報)
図5 東京の最高気温と最低気温の推移(8月11~17日は気象庁、8月18~26日はウェザーマップの予報)

 こまめな水分補給を心掛けるなど、熱中症対策に心掛けてください。

日本の南で台風8号発生

 北日本の大雨、西~東日本の猛烈残暑に加えて、8月10日(水)9時に小笠原近海で発生した熱帯低気圧は、今後発達して日本の南海上で台風8号になりそうです。

 この海域の海面水温は、台風が発達する目安とされる27度を大きく上回る、29度以上もあります。

 そして、この台風8号は、この先緩やかに発達しながら北上し、12日(金)夜から13日(土)にかけて紀伊半島から関東地方に接近する可能性があります(図6)。

図6 熱帯低気圧の進路予報(8月11日0時)
図6 熱帯低気圧の進路予報(8月11日0時)

 ただ、この熱帯低気圧は進路や接近のタイミングが現時点で不確実性が非常に大きくなっており、進路については四国に向かう可能性もあります。

 関東地方に近づくとしても、台風として接近するか、台風としての勢力を維持できず熱帯低気圧として接近する可能性もあります。

 お盆で移動される方も多いと思いますが、現時点においては、不確実性が高い台風ですので、最新の台風情報の入手に努め、警戒してください。

 各地とも、今後の気象情報に注意してください。 

タイトル画像、図2、図3、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図4の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図5の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。 

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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