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台風4号が九州に上陸し、7月としては珍しく温帯低気圧化へ 線状降水帯の情報も発表

饒村曜気象予報士
台風4号の中心部より大きな東側に広がる雨雲(7月4日18時)

台風4号が九州上陸へ

 東シナ海を北上中の台風4号は、進路を東よりに変え、6月5日6時前に、長崎県佐世保市付近に着いた上陸しました。

 その後、西日本や東日本太平洋側を東へ進み、6日には四国付近で温帯低気圧に変わる見込みです(図1)。

図1 台風4号の進路予報と海面水温、気象衛星画像(7月5日3時)
図1 台風4号の進路予報と海面水温、気象衛星画像(7月5日3時)

 台風4号に関する情報は最新のものをお使いください

 台風4号の北側には発達した積乱雲がないなど、発達した台風ではありませんが、東側には、中心付近より広い雨雲を伴っています。

 しかも、動きが遅い台風ですので、降雨時間が長くなり、関東南部から東海、紀伊半島では、200ミリ以上の大雨の可能性があります(図2)。

図2 36時間予想降水量(7月5日0時から6日12時までの36時間予想)
図2 36時間予想降水量(7月5日0時から6日12時までの36時間予想)

 また、気象庁では、7月5日0時39分に高知県に対し、次のような線状降水帯に関する情報を発表しています。

顕著な大雨に関する全般気象情報 第1号

2022年7月5日0時39分 気象庁発表

高知県では、線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いています。命に危険が及ぶ土砂災害や洪水による災害発生の危険度が急激に高まっています。

 各地で土の中の水分量が増え、土砂災害が発生しやすくなりますので、雨の降り方に注意し警戒してください。

【追記(7月5日10時)】

 台風4号は、7月5日6時前に長崎県佐世保市付近に上陸し、九州横断中の9時に温帯低気圧になりましたので、記事の一部を書き換えました。

 しかし、雨より大きな災害が起きる恐れは変わりがありません。

台風の一生と温帯低気圧化

 台風の生涯は、その規模や性質、発生の時期、寿命などによって異なりますが、一生を大別すると次の4つの段階に分けることができます

(1)発生期:低緯度地方で弱い大気の循環として発生してから台風に発達するまでの期間。

(2)発達期:台風に発達してから中心気圧が最低まで下がり、勢力が最も強くなるまでの期間。

(3)最盛期:中心付近の最大風速は徐々に弱まる傾向に入るが、暴風の範囲はかえって広がる期間。

(4)衰弱期:衰弱して消滅するか、温帯低気圧に変わる期間。

 このうち、台風の衰弱期は、中心気圧が高くなり、中心付近の最大風速も次第に弱まるのが普通ですが、温帯低気圧に変わったものの中には、寒気の影響をうけて再発達するものもあります。

 昔から、気象台の当番者の間で「台風は腐っても鯛」という戒めの言葉があるように、衰弱期でも大雨等により大きな災害をもたらすことがあり、引き続き注意が必要です。

 今回の、令和4年(2022年)の台風4号も、大きな災害をもたらす懸念のある台風です。

 よく、「台風が温帯低気圧に衰えた」と言う人がいますが、気象庁で発表する情報等では、必ず、「温帯低気圧に変わった」という表現をしています。

 いつも衰えるとは限らないからです。

台風の衰弱期の調査

 少し古い資料ですが、筆者が昔調べた台風の衰弱期の調査では、台風が衰弱して熱帯低気圧になるのは、全体の66パーセントです。

 また、台風から直接温帯低気圧に変わった台風は全体の32パーセント、台風のまま、東経180度以東の気象庁担当域外に出るのが2パーセントです(図3)。

図3 台風の発生数(A)と温帯低気圧に変わった台風数(B)
図3 台風の発生数(A)と温帯低気圧に変わった台風数(B)

 つまり、温帯低気圧に変わる台風は全体の約3割しかありません。

 しかし、日本に上陸した台風についてのみを考えると話は逆となり、71パーセント(調査期間に日本に上陸した17個の台風のうち12個)が温帯低気圧に変わっています。

 温帯低気圧に変わった台風数を月別に見ると、一番多いのが10月、次いで9月です(図4)。

図4 直接温帯低気圧に変わった台風数の月別分布
図4 直接温帯低気圧に変わった台風数の月別分布

 また、温帯低気圧に変わった緯度を平均すると、4月から7月の平均が北緯32度、8月が北緯42度と一番高緯度で、季節が進むにつれて緯度が下がってきます(平均では北緯38度)。

 台風発生数は8月、9月、7月の順であることなどから、10月は台風が温帯低気圧に変わりやすく、7月は逆にほとんど温帯低気圧にはならないということができます。

 今回の台風4号が、7月に温帯低気圧に変わるということは珍しいことです。

 令和4年(2020年)は、例年とは違う季節変化をしていますので、最新の気象情報の入手に努め、警戒してください。

タイトル画像、図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3、図4の出典:饒村曜(平成5年(1993年))、続・台風物語、日本気象協会。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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