台風3号の発生

 令和4年(2022年)6月30日9時に南シナ海で台風3号が発生しました(表)。

表 令和4年(2022年)の台風
表 令和4年(2022年)の台風

 4月に2個の台風が発生し、このうち1号が小笠原諸島に接近したあと、2か月ほど熱帯域では雲が少ない状態が続いていたため、台風が発生しませんでした。

 最近になって雲が増えてきましたことから、南シナ海で台風3号が発生し、フィリピンの東海上でも熱帯低気圧が発生する見込みです(図1)。

図1 予想天気図(7月1日9時の予想)
図1 予想天気図(7月1日9時の予想)

 この熱帯低気圧が台風4号に発達するかどうかは不明ですが、続けて台風発生となると、台風の発生数は、ほぼ平年並みになります。

 台風が発達する目安となる海面水温は27度といわれていますが、台風3号はこの値を大きく上回る、海面水温が30度以上の海域を北上する予報です。

 このため、発達して2日21時に半径300キロの暴風警戒域を持つまで発達する見込みです(図2)。

図2 台風3号の進路予報と海面水温(令和4年(2022年)6月30日21時)
図2 台風3号の進路予報と海面水温(令和4年(2022年)6月30日21時)

 台風3号の進路予報は、最新のものをお使い下さい

 統計的に、7月の台風は、南シナ海で発生したものは北西へ進んで華南に上陸し、フィリピンの東海上で発生したものは、北上して南西諸島に接近し、東シナ海をさらに北上するものが多くなっています(図3)。

図3 台風の7月の平均経路図
図3 台風の7月の平均経路図

 台風3号は、この統計通りの進路ですし、仮に台風4号が発生した場合は、南西諸島や西日本は注意が必要と思います。

【追記(7月1日12時)】

 気象庁は、7月1日9時に、フィリピンの東海上の熱帯低気圧が台風4号になったと発表しました。台風4号の進路予報は、統計通りの進路で、南西諸島に接近したあと、東シナ海を北上するとなっています。

 なお、台風4号発生に伴い、タイトルを少し変更しました。

日本は3分割の天気

 現時点の日本の天気は、北日本、西日本から東日本、南西諸島の3つに分かれており、各々で違った警戒が必要になっています(図4)。

図4 三分割の天気(7月1日昼間の予報)
図4 三分割の天気(7月1日昼間の予報)

 7月1日は、前線が停滞する北日本は雲が広がりやすく、東北北部を中心に雨が降るでしょう。これまで長期間にわたって雨が降っていますので、土の中の水分量が多く、土砂災害が発生し易くなっていますので、雨の降り方に注意してください。

 一方、東日本~西日本は太平洋高気圧に覆われ、暖かい空気が流れ込んでいるため、日差しが強く各地で猛暑日が続出する見込みです。近畿や東海、関東では体温を超える暑さとなる所があり、40度近くまで上がる所もあるでしょう。適切にエアコンを利用し、外ではこまめに休憩を入れてください。

 また、南西諸島は上空に停滞している寒気の影響で不安定な天気となっていましたが、ここにフィリピンの東海上で発生した熱帯低気圧が接近してくることから雨が降りやすく、雷を伴う所もあります。

 沖縄の南に進んでくる熱帯低気圧が、台風4号になれば南西諸島や西日本に大きな影響が出てきますし、台風にならなくても、大雨をもたらす可能性がありますので、油断できません。

 最新の台風情報の入手に努め、警戒してください。

 その台風情報で使われている予報円や暴風警戒域ができる過程において、大きなできごとの一つに、37年前に気象庁が行った国民に対する意向調査があります。

台風に関する意向調査

 相次いでいた台風災害を少しでも軽減するため、戦後すぐに始まった、いわゆる扇形表示方式は、台風の進行方向に関する誤差のみを表し、進行速度についての誤差は直接的には表現していないものでした。

 このため、昭和57年(1982年)6月1日から、予報円方式に変更しましたが、昭和60年(1985年)は、台風6号、13号、14号と三つの台風が上陸するなどして、大きな被害が発生しました。

 特に台風13号の際には、有明海に出漁していた漁船14隻が遭難し、大きな社会問題となりました。

 この時の台風進路予報はおおむね適切でしたが、気象庁の発表した情報が利用者の一部に正しく理解されていなかったり、また台風に関する情報が末端の利用者へ確実に伝達されなかったりした例もあるという指摘がありました。

 このため、気象庁は台風情報改善検討委員会を設置し、台風の進路予報の内容が利用者に理解されるような表示方式広く利用者の意見を求めるため意向調査(世論調査)を行っています。

 意向調査の結果は、気象審議会で審議を依頼し、最終的な結論をだすこととしました。

 つまり、この段階では、始まったばかりの予報円方式にこだわらず、新しい表示を模索していました。

 意向調査は、公的統計として、統計報告調査法(統計法ができたため、平成19年(2007年)に廃止)に基づき、総務庁統計局長の承認をうけて実施されました(総務庁承認番号15531号)。

 意向調査期間は、昭和61年(1986年)3月から4月にかけてで、関係公共機関、伝達機関、台風の影響を強く受ける業種の団体・専業者並びに一般利用者の合計1316団体・個人を対象として行われました。

 この調査数は、統計上有意な結果が得られる最小の数です。

 調査方法は、意向調査票を郵送し、進路予想図の6つの案を示し、良い表示方法だと思われる順位と進路予想図全般についての意見を記入し返送するように求めるものでした(図5)。

図5 意向調査票における6つの案
図5 意向調査票における6つの案

 短い時間の調査にもかかわらず、70パーセント以上という高い回答率となったのは、この問題の防災上の重要性や一般国民の関心の高さを示すものと考えられています。

 意向調査で支持を一番集めた第1案をもとに採用された表示方式が、現在使われている予報円と暴風警戒域を使った表示方式の元となっています。

 この意向調査では、気象庁が想定していた以上に多数の詳しい提言や要望が記載されていました。

 このうち、回答者が記入してきた進路表示案の一部が図6です。

図6 回答者からの進路表示案(抜粋)
図6 回答者からの進路表示案(抜粋)

 そして、このときの詳しい提言や要望は、その後の台風情報改善のために使われています。

タイトル画像、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

図4の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図5、図6の出典:気象庁予報部業務課・予報課(昭和61年(1986年))、台風進路予想図の意向調査、測候時報、気象庁。