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春は一日の気温差が大きいというのは一般的な話で、9年前の知床半島・宇登呂では日較差0.2度

饒村曜気象予報士
午前午後の寒暖差・気温差・体調不良説明(提供:イメージマート)

一日の寒暖差の小さい記録

 春は一日の寒暖差(日較差)が大きいとよく言われます。

 朝晩は冷え込むものの、強まってきた日差しによって日中は汗ばむような気温になるからですが、日較差が小さい記録は春にでています。

 気象庁の公式統計ではなく、個人的に調べたものですが、日較差が一番小さいのは、平成25年(2013年)4月28日の北海道知床半島にある斜里町・宇登呂で、日較差0.2度です(表)。

表 北海道・宇登呂の平成25年(2013年)4月28日の1時間ごとの気温
表 北海道・宇登呂の平成25年(2013年)4月28日の1時間ごとの気温

 最低気温は、24時に観測した氷点下4.0度、最高気温は17時23分に観測した氷点下0.2度でした。

 北海道の東海上で低気圧が猛烈に発達し、ほとんど停滞したため、北日本では西高東低の冬型の気圧配置となっています(図1)。

図1 地上天気図(平成25年(2013年)4月28日9時)
図1 地上天気図(平成25年(2013年)4月28日9時)

 このため、低気圧に近い北海道東部では暴風雪となっています。

 日較差0.2度だった宇登呂でも、ほぼ一日中降雪があり、日降雪量が29センチに達しています。

 また、東京でも平成24年(2012年)1月21日に最高気温が3.7度(16時45分)、最低気温2.7度(19時13分)で、日較差1.0度を観測しています。

 前日は、南岸低気圧の通過によって東京や横浜では遅い初雪が降り、この日も北高型の気圧配置で、一日中北寄りの風が吹いて雨やみぞれが降っています。

 早春に、冬のような天気となって一日中雨や雪が降っている日には、記録的に小さな日較差を観測しそうです。

非常に大きな日較差

 大きな日較差の記録は、平成19年(2007年)2月5日の平長野県上田市・菅平の31.5度と思われます(図2)。

図2 平成19年(2007年)2月5日の長野県上田市・菅平の気温変化
図2 平成19年(2007年)2月5日の長野県上田市・菅平の気温変化

 日較差が30度以上という非常に大きな記録は、冬から春にかけて大きな高気圧に覆われた北海道や長野県の内陸部で観測されます(図3)。

図3 地上天気図(平成19年(2007年)2月5日9時)
図3 地上天気図(平成19年(2007年)2月5日9時)

 放射冷却で地表面の熱が逃げ、極端に冷えた後に、日中の日射による気温上昇によるものです。

冬日と真夏日を同日に記録

 日最低気温が氷点下の日を冬日、日最高気温が25度以上の日を夏日、日最高気温が30度以上の日を真夏日といいます。

 同じ日に冬日と夏日が観測されれば、自動的に日較差は25度をこえますが、過去には何回か観測されています。

 しかし、同じ日に冬日と真夏日が観測されれば、自動的に日較差は30度をこえますが、今のところありません。

あと少しで冬日と真夏日を同日に記録

昭和60年(1985年)5月24日 北海道・川湯

   最低気温1.1度、最高気温31.6度(真夏日)

平成21年(2009年)4月30日 北海道・中徹別 

   最低気温-2.7度(冬日)、最高気温27.3度(夏日)

令和4年(2022年)4月11日 岩手県・久慈

   最低気温4.3度、最高気温30.0度(真夏日)

 令和4年(2022年)4月11日に、宮古・釜石・久慈など岩手県の6地点で真夏日を観測しています。

 今年、全国初の真夏日が初めて岩手県で観測されたのですが、この時、真夏日となった6地点とも冬日にはなっていません。

早い天気変化

 4月28日は低気圧がオホーツク海で発達し、北海道では次第に風が強まり日本海側を中心に暴風が吹き、北海道周辺の海上では波が高くなっています。

 北海道・知床半島沖で観光船が乗客乗員26人と共に遭難した4月23日の事故で、地元の漁業関係者らの船が、斜里町のウトロ港から捜索に出発していますが、この大荒れで難渋しています。

 一刻も早い天気の回復が望まれます(図4)。

図4 予想天気図(4月28日9時の予想)
図4 予想天気図(4月28日9時の予想)

 一方、東~西日本の南岸は前線が停滞する見込みです。

 このため、4月28日は、西~北日本では晴れる所が多い見込みですが、九州南部では夜ににわか雨があるでしょう。

 南西諸島もくもりや雨となり、雷を伴う所もある予想です。

 4月28日の日較差は、内陸部では10度から15度の所もありますが、極端に大きな値ではありません。

 しかし、冬から春にかけては、日較差が極端な日、非常に大きな日も、非常に小さな日も現れますので、外出時の洋服選びに苦労する季節です。

 また、天気の変化が早くなっており、大型連休前半もこうした傾向が続きます。

 さらに、4月29日(金・祝)は広く天気が崩れ、太平洋側を中心に大雨のおそれがあります。

 最新の気象情報に注意してください。

表1、図1、図3、図4の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:気象庁ホームページに筆者加筆。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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